世界の民主化 足踏み

データが示す ベルリンの壁崩壊 30年

写真:ロイター

1989年11月9日、第2次世界大戦後の東西冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」が崩壊した。人、モノ、カネが東西を隔てた鉄のカーテンを越え、グローバル化が進んだ。旧ソ連をリーダーとする社会主義国陣営に属していた東欧諸国が資本主義や民主主義に移行するきっかけとなった。ただ、最近では強権的な権威主義の国も目立ち、民主化が後退したり足踏みしたりする動きも出ている。30年の変化をデータで振り返る。

  • 日本
  • 米国
  • 中国
  • ロシア
  • ドイツ
  • ポーランド
  • インド
  • インドネシア
  • 韓国
  • 香港
データ選択
1989年の民主化指数
日本
米国
中国
ロシア
ドイツ
ポーランド
インド
インドネシア
韓国
香港

1 民主化指数

広がる強権政治で
低下も

  • 米国
  • 中国
  • ロシア
  • ドイツ
  • ポーランド
  • インドネシア

英エコノミスト誌は政府の機能や政治への参加などを基に政治の民主化指数を発表している。ポーランドやロシアなど旧東側諸国は冷戦崩壊で政治の自由化が進んだ。しかし2015年にポーランドで独裁的な政権が誕生。ロシアでも市民への統制が強まった。米国やドイツも近年は民主化指数が下がり気味だ。米国は大統領選で企業からの高額献金が横行していることや、黒人への警察当局の強圧的な対応が民主化指数を下げている。ドイツも国内で強まる排外主義的な政党が台頭し、欧米にポピュリズムの波が及んでいる。

2 経済自由化
指数

米、リーマン危機後に
落ち込み

  • 米国
  • 中国
  • ドイツ
  • ポーランド
  • 香港

米ヘリテージ財団がまとめているのが「経済自由化指数」だ。財産権の保護や財政の健全性、貿易・投資の自由度などを総合的に評価して数値化している。ポーランドなど旧東側諸国は1990年代に上昇し、自由化が進んだ。米国は2008年のリーマン・ショック後にやや下落傾向になった。リーマン・ショックを受け、自国の産業支援や雇用確保を目的に保護主義に傾く国が出た。米国は17年に「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領が就任し、国内産業を守る保護主義が強まる。経済の自由化は頭打ちになっている。

3 貿易自由度

グローバル化に
保護主義の試練

  • 米国
  • 中国
  • ポーランド
  • インド

ヘリテージ財団がまとめた経済自由化指数の中で、貿易の自由化に限った指数を見てみよう。中国は2001年に将来の市場開放を約束することで世界貿易機関(WTO)への加盟を果たし、上昇傾向が続いた。インドはアジア経済の発展に伴い輸入規制の緩和などに乗りだし貿易の自由化政策を進めた。ポーランドなど旧東側諸国と旧西側諸国の経済が融合して世界の貿易は拡大した。ただ最近の傾向を見ると、対中貿易赤字に不満を募らせたトランプ米政権が中国製品への制裁関税を発動。米国はわずかに下がっている。グローバル化は保護主義の試練にさらされている。

4 直接投資額

投資拡大に
保護主義の壁

  • 米国
  • 中国
  • ドイツ
  • ポーランド

世界銀行がまとめた国別の直接投資のデータを見ると、ほかのグラフと比べて上げ下げが大きい。1990年代は冷戦崩壊によるグローバル化の恩恵を受けて米国やドイツを中心に直接投資が増加した。2000年はいったん頭打ちになり、世界の景気動向にも左右され、2008年のリーマン・ショック後に落ち込んだ。米国は2015年にピークを迎えて落ち込んでいる。とりわけトランプ米政権が保護主義を取り、世界の直接投資拡大は壁に直面している。中国も13年をピークに落ち込みを見せる。欧米で中国企業による自国企業の買収を制限する動きが出ていることなどが背景にある。

5 軍事費

幻想に終わった
「平和の配当」

  • 日本
  • 米国
  • 中国
  • ロシア

冷戦が終わると、米議会などに「平和の配当」論が出た。軍事費に回すお金が減り、経済に充てることができるとの考えだった。だが現実には地域紛争が増えた。2001年に米同時テロが起きると米国は「テロとの戦い」のために軍事費を増やした。中国も軍備増強に動いて軍拡競争の様相を呈し「平和の配当」論は幻想に終わった。ストックホルム国際平和研究所のデータでは軍事費の規模は米国が突出している。伸び率が大きいのは中国で、2005年には日本を抜いて世界2位になった。かつて世界3位だったロシアは欧米からの制裁を受け、経済に負担がかかり軍事費を削減したこともある。

6 GDP

中国
日本抜いて米に迫る

  • 日本
  • 米国
  • 中国
  • ドイツ
  • インド

国際通貨基金(IMF)のデータでは、世界の国内総生産(GDP)は1990年の約24兆ドルから2018年に約85兆ドルと3倍以上の規模になった。人、モノ、カネがボーダーレスに動き、世界経済は全体としては大きな富を生み出した。中国は2010年に日本を抜いて、米国に次ぐ2位になった。20年代にも米国を追い越すとの予測も出ている。中国の台頭に危機感を抱くトランプ米政権は対決姿勢を強め、米中が「新冷戦」に入ったとの見方もある。アジアの新興・途上国は30年間の伸びが顕著だが、足元では中印をはじめとして減速しつつある。

7 人口

インドが
首位の中国追う

  • 日本
  • 米国
  • 中国
  • インド
  • インドネシア

国連の最新の報告によると、1989年に約52億人だった世界の人口は2019年に約77億人になり、47%増えた。国別に見ると、中国が1位、インドが2位、米国が3位を維持し、中印が人口大国である構図は変わっていない。中国は11億人から今は14億人に迫る。インドは8億人から13億人超となり、伸びが目立つ。国連は2027年ごろにインドが中国を上回ると予測する。一方で日本などは少子高齢化で人口が減っている。世界で2050年までに人口が1%以上減る国は50カ国・地域を超えると見込まれる。

取材・制作
加藤彰介、森本学、佐藤賢
デザイン・マークアップ
安田翔平
プログラム
加藤皓也

ビジュアルデータ 一覧へ戻る

この記事は有料会員限定です

今なら2カ月無料で有料会員登録できます

有料会員にて表示される方は こちら を経由してご覧ください