米利上げ、どう進む 過去の局面と比較

 米連邦準備理事会(FRB)は12月16日、9年半ぶりとなる政策金利の引き上げを決めた。リーマン・ショック後の2008年12月に導入したゼロ金利政策を解除し、フェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標は0~0.25%から0.25〜0.50%へと〝離陸〟を果たした。3次にわたる量的金融緩和(QE1~3)にまで踏み込んだ危機対応の局面は終わり、金利正常化に向けた第一歩を踏み出した。金融市場の注目点は今後の利上げペースに移る。過去の利上げ局面を振り返りながら、今後の行方を探る。

1994年2月以降の利上げ局面から、リーマン・ショック後のゼロ金利、量的金融緩和(QE)政策下までのFF金利と失業率、物価上昇率(食品とエネルギーを除く個人消費支出(PCE)デフレーター)の変化をたどれる。縦の線を左右に動かすと、月ごとの各数値をグラフ上に表示する。

 FRBは金融政策を通じ「雇用の最大化」と「物価の安定」を実現するのが使命だ。FF金利とは、民間銀行が中央銀行であるFRBに預ける資金を確保するため、銀行間で短期の資金を貸し借りする際に適用される金利のこと。FRBがこの金利を上げ下げすることで、預金や住宅ローン、企業の借り入れなど様々な金利に影響を与える。

 これまで7年間もゼロ金利状態だったのは、個人や企業の借入コストを抑え、金融危機後の経済を支えるためだ。失業率は危機後に一時10%にまで悪化したが、15年11月には5%と危機前の水準を回復。雇用面からはゼロ金利政策を解除する環境が整っていた。

過去の利上げと比べた経済回復度合いは

 FRBが利上げに踏み出したのは、経済情勢が金融危機後の状況から回復したと判断したためだ。ただ過去の利上げ開始時点と指標を比較してみると、ダウ工業株30種平均や新車販売台数はいまの水準が高い半面、経済成長率や住宅着工件数は低く、経済の強さには課題も残る。

今回(2015年12月=赤)と過去3回の利上げ(1994年2月=黄、99年6月=緑、2004年6月=青)を色分けし、6つの指標を比較できる。丸印を選ぶと利上げ局面の時期を表示する。ダウ平均株価は利上げ前日の値。物価上昇率と失業率、住宅着工件数、新車販売台数は過去3回は利上げ開始前月の値。経済成長率は利上げ前の四半期の値。

今回の利上げ、ペース・天井は抑えめ

過去3回の利上げがどんなペースで実施されたか、開始時からの幅と天井がどの程度だったかをボタンで切り替えて確認できる。点線はFOMCメンバーが示した中心予想を示す。

 利上げの第一歩を踏み出したFRBだが、市場の関心は今後の利上げの進め方にある。FOMCメンバーが示した中心予想によると2016年末には1.375%、17年末には2.375%、18年末には3.250%と想定されている。1回の利上げ幅が0.25%であれば、16 年の利上げ回数は4回となる。過去3回の利上げ局面と比較しても、最も緩やかなペースで進む見通しだ。

 また過去3回は利上げ完了後のFF金利はいずれも5%超の水準に達したが、今回FOMCメンバーが示した長期予想は3.5%。米経済の潜在成長率が低下するなか、利上げの天井も低い。中国をはじめとする新興国経済の減速が深刻化し、米経済に波及すれば利上げペースが想定以上に遅れる可能性もある。

取材・制作牛込俊介、清水明

データ出典米商務省、米労働省

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