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揺れるスマホ経済圏 
データで探る「主役」

AP

 成長を続けてきたスマートフォン(スマホ)市場が、大きな転換点を迎えている。端末の成長が一巡しつつある中、関連サービスやソフトが拡大期に入る。「金融の産業革命」とされるフィンテックや、あらゆるモノがネットでつながるIoTの興隆も今後の市場の立役者だ。ハードに依存してきた日本企業にとっては、事業モデルを見直す契機になる。データを基に、スマホ経済圏の新たな稼ぎ頭を探る。

日本のスマホ部品
「最強の黒子」は
過去のもの?

 〝iPhoneマジック〟の喪失――。足元で国内電子部品産業の経済指標が振るわない。これまで米アップルのスマホ「iPhone」の新製品発売を前後して上昇してきた電子部品の鉱工業生産指数や輸出額。しかし、最新の「iPhone7」の発売を受けた直近の状況は、基準の2010年の100を下回ったままだ。アップルへの供給が多い日東電工は4~6月期の純利益が前年同期比で63%減り、通期の業績予想も弱含みだ。円高の影響もあるが、スマホの「最強の黒子」といわれた日本の電子部品産業の先行きに暗雲が垂れこめる。

日本の電子部品の生産と貿易 
足元は「100割れ」続く

(出所)経済産業省鉱工業生産指数、財務省貿易統計

「低価格スマホ」向け
 中国・台湾が攻勢

 日本の電子部品産業を尻目に、台湾・中国勢の好調さが目立つ。台湾の主要IT19社の月次業績は昨年末から低迷が続いていたが、足元では前年実績を上回り、回復基調に入った。中国も半導体関連で堅調な伸びを続け、今年に入ってからは2ケタ成長が続いている。背景にあるのは中国メーカーによる中・低価格スマホの世界的な台頭だ。割安なスマホ向けのICチップを得意とする台湾の聯発科技(メディアテック)は足元の9月業績で4割近い増収となった。中台勢も加わる混戦模様は、収益の先細りを暗示する。

中国と台湾の電子産業の
業績が上向いている

(出所)台湾企業の売上高は日本経済新聞社集計、中国の生産量は中国国家統計局

ハード頼みは限界、
スマホ決済で伸びるEC

 スマホの端末自体の市場規模は中・低価格モデルの普及が続いて台数ベースでは伸びるものの、平均単価の下落によって金額ベースでは20年に3379億ドルと15年から2.7%下がる。一方、普及が進んだことで、スマホは個人とネットワークをつなぐ重要なインフラになった。スマホでの決済が広がり、金融とITをつなぐフィンテックが広がれば、電子商取引(EC)は端末以上の市場規模になる。米ウーバーテクノロジーズに代表されるシェアエコノミーも、民泊、カーシェアリング、人材のクラウドソーシングなどスマホとは切り離せない有望な成長分野だ。ソフトバンクグループがサウジアラビアの政府系ファンドと設立を決めたファンドも、主な対象はIoT分野で、規模は最大10兆円。関連産業の裾野は急速に広がるだろう。

端末の市場規模以上に
スマホ周辺産業が成長する

(出所)端末はIHSマークイット、アプリはApp Annie、電子商取引はゴールドマン・サックス、シェアエコノミーはPwC

コンテンツの主役、
広告や動画にシフト

 ソフト面でも構造的な変化が起こりそうだ。世界のスマホ向けコンテンツの市場動向を見た場合、今後も右肩上がりの成長が見込まれる。ただ、その主役の座はこれまでのゲームから、広告売り上げや動画アプリにシフトするもようだ。動画配信大手の米ネットフリックスの7~9月期の売上高は22億9000万ドルと前年同期比32%増。利用者は年内に9000万人を超える見通しという。ゲームを強みとしてきた日本勢が収益機会を広げるには、ソフト面でも方向転換を迫られることになる。

世界のスマホ向け
コンテンツ市場

(出所) PwC Global Entertainment and Media Outlook: 2016-2020

スマホビジネスの新陳代謝、
活力欠く日本

 米グーグルが05年以降に手掛けたM&A(合併・買収)は100件を超える。携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」もそうであり、大胆に業態を広げて成長を続けている。一方、スマホ経済圏で新たな市場が次々と生まれる中で、日本のスマホ産業の新陳代謝は活力を欠く。IHSマークイットの調査では、15年のスマホ産業におけるM&Aや資金調達の件数で日本は欧米勢に比べ、圧倒的に劣っていることがわかる。リスクマネーのダイナミックな動きがなければ、拡大するスマホ経済圏で日本勢が存在感を発揮するのは難しい。

スマホ産業のM&Aと
資金調達の国・地域別件数
(2015年)

(出所)IHSマークイット

制作
北爪匡、久能弘嗣

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