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日経アジア300指数
データが示す成長力
アジア11カ国・地域の有力約300社が対象
日本経済新聞社は2016年12月、日本を除くアジア11カ国・地域の有力上場企業約300社を対象にした新たな株価指数「日経アジア300指数」の算出・公表を始めた。世界の株式市場において存在感を増すアジア企業全体の株価の動きをとらえる。
世界主要株価を上回る水準
日経アジア300指数は2015年12月1日を基準値(=1000)として算出する。参考データとして2005年12月までさかのぼり、日経平均株価、米国のS&P500種株価指数、欧州のSTOXX600と比べた。その結果、日経アジア300指数は世界の主要株価指数を大きく上回る水準で推移していることがわかった。
日経アジア300指数と主要株価指数の比較
- 日経アジア300
- 日経平均株価
- 米国S&P500
- STOXX欧州600
日経アジア300指数が10年間で約2倍の水準まで上昇したのに対し、日経平均とSTOXX600の伸びは小さい。2008年夏のリーマン・ショック後は上昇基調にあったS&P500と比較しても日経アジア300指数の伸びは際立っている。中国の高い国内総生産(GDP)成長率と連動した中国企業の株価上昇に加え、経済統合を進めたASEAN域内企業への成長期待が背景にあったと考えられる。
フィリピンの伸び目立つ
日経新聞は日経アジア300指数を構成する11カ国・地域ごとの指数の日々の終値も算出・公表する。これらの指数の2005年末(ベトナムは08年末)から15年末までの10年間の伸び率と年間国内総生産(名目GDP)の同期間の増加率は棒グラフのようになった。
国・地域別指数の伸びが最も大きかったのはフィリピンで、GDPの2倍の上昇率を記録した。20社で構成する銘柄には小売りや消費関連の企業が多い。かつて他の主要ASEAN諸国に比べ成長の波に乗り遅れたとされた同国だが、15年までの10年間は内需主導で高成長した。韓国や台湾、シンガポールなどの先進国と資源安などの影響を受けたマレーシアを除けば、各国の株価とGDPはほぼ2倍以上に増大。GDPが10年前より減った日本との差は歴然としている。
国・地域別指数とGDPの伸び率
- 日経アジア300
- GDP
- 日経平均株価
時価総額、上位の半数超が中国企業
日経アジア300指数を構成する銘柄の時価総額ランキング(浮動株ベース)をみると、上位30社のうち17社が中国企業だった。2位のネットサービス大手の騰訊控股 (テンセント)はスマートフォン(スマホ)向けアプリサービスなどで購買力が拡大した中間層を取り込んで成長した企業だ。中国企業以外ではスマホ事業の成長に陰りが見える韓国サムスン電子が首位だったほか、シャープを買収して日本でも注目を集めた台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業など東アジアに本拠地がある大手企業が上位を占めた。LINEの親会社である韓国検索最大手のネイバーが30位に入った。
一方、日経新聞が2015年度決算を増益率などの指標で分析した「実力企業ランキング」の上位には技術やブランドで高い競争力を企業が並んだ。売り上げや利益の伸び率、収益性、資本効率などを独自に数値化してランキングにした。
首位のシンガポール通信大手スターハブは携帯電話や有料放送をセットで提供する高収益事業で自己資本利益率(ROE)が突出して高い。10位のインドのタタ・コンサルタンシー・サービシズはIT(情報技術)サービス事業の競争力が強みだ。19位のベトナム・デイリー・プロダクツ(ビナミルク)はベトナム最大の飲料メーカーで海外への輸出にも積極的だ。
時価総額順
企業実力順
SCROLL
- 企業名
- 業種
- 国 / 地域
- 時価総額(億ドル)
データが示すように、日経アジア300指数を構成する企業は全体として過去10年以上にわたって高い成長を遂げてきた。これらの企業群が今後も順調に成長し、アジアが世界経済のけん引役でい続けられるのか。指数の動きから目が離せない。
- 制作・データ分析
- 原田洋、三木朋和、麻植周、河本浩、牛込 俊介、安田 翔平、清水 正行