池江アジア6冠 成長、天井知らず

24日に行われたジャカルタ・アジア大会、競泳最終日。女子50メートル自由形で、18歳の池江璃花子(ルネサンス)が優勝した。池江は同大会で日本人歴代最多となる6冠の偉業を達成。今年に入って、脅威の17回もの日本新記録を樹立しているエースは、抵抗の少ないフォームや、磨き上げてきた瞬発力を武器に天井知らずの成長を続けている。

「初速」で世界と渡り合う

5月、新たに池江のコーチに就任した三木二郎氏は初めて泳ぎを見た時に、ある特徴に気がついた。「短距離の選手にしては浮き上がりが遅い。初速が足りないし、飛び込みの飛距離も短い」。今季はウエイトトレーニングの量を増やし、脚力を強化。スタート台を蹴る力や、飛び込んだ後のドルフィンキックのパワーを養い、出だしから世界の強豪と競り合えるようになった。

水とけんかしない大きなフォーム

写真は共同

身長171センチ、腕のリーチは186センチ。恵まれた体格もさることながら、水の抵抗が少ないフォームが池江の大きな泳ぎを支える。日本代表で池江を指導する鈴木陽二コーチによれば「肩がやわらかく、キャッチ(手の入水)の時に肘が立てられる」。頭がしっかりと下がった状態で腕の回転に合わせてキックを打つことができるため、水とけんかせずに並行な姿勢を保っている。

最高のスタートダッシュ
19日 女子400メートル自由形リレー金

競泳初日、池江の最初のレースは女子400メートルリレー。第1泳者として登場すると、序盤からぐんぐん飛ばして先頭でタッチ。後に続く酒井夏海、青木智美、五十嵐千尋もしっかり泳ぎ切り、3分36秒52の日本新記録で優勝した。「1個金メダルを取らないと何も始まらないと思っていたので、これで自分の中でも良い流れができた」と最高のスタートダッシュを切った。

有言実行の大会記録V
20日 女子50メートルバタフライ金

この日は2種目、4レースにエントリー。最初の50メートルバタフライは「大会記録を目指して優勝したい」と序盤から積極的に飛ばした。ノーブレスを封印し、息継ぎは2回。見事25秒55の大会記録でフィニッシュした。表彰式では直後に100メートル自由形のレースを控えていたが、「リハーサルが行われているのかなと思うくらい、リラックスしていた」とちゃめっ気たっぷりだった。

日本勢32年ぶりの快挙
20日 女子100メートル自由形金

50メートルバタフライの表彰式からわずか数分後、池江はこの日4レース目のスタート台に立った。数日前のパンパシフィック選手権では世界との力の差を思い知った今種目。あらかじめライバルの選手が前を泳ぐことを想定し、「前半抑えめにいって後半を上げる」レースプランを遂行した。自己ベストに0秒24と迫る53秒27の好タイムをたたき出し、日本勢32年ぶりの金メダルを獲得した。

〝勝ち癖〟をつける
21日 女子100メートルバタフライ金

「今までにないくらい疲れがきている」。パンパシでも8種目を泳ぐなど、大車輪の活躍を続けてきた池江はレース前、珍しく弱気な表情を見せた。それでも「勝負の世界なので決勝で勝てばいい」と、前半を飛ばしすぎずに後半に力を振り絞る戦いぶりで、56秒30で初優勝。「勝ち癖をどんどんつけていけたらいい」と表情には自信が漂い始めた。

歴史に肩を並べる5冠
23日 女子400メートルメドレーリレー金

前日の混合400メートルメドレーリレーで2位に終わり、5冠はお預け。残り2種目を残す池江はリレーにいっそう力が入った。酒井夏海、鈴木聡美によるアドバンテージを受けて第3泳者として飛び込んだ池江は、水を得た魚のように跳びはねて後続を大きく突き放し、アンカーの青木智美へとつないだ。パンパシを超える3分54秒73の日本新記録で制し、はち切れんばかりの笑顔を見せた。

アジア最強女王、有終の美
24日 女子50メートル自由形

大会の日本勢最多タイとなる5冠を達成し、目指すは歴史に名を残す史上最多の6冠。「前日に金メダルを取ったことで疲れを吹っ飛ばしてくれた」とラストレースを前に表情も生き生きとしてきた。「実力を最後まで発揮したい」と残る力を振り絞って腕を回し、キックを打ち続ける。見事1位で有終の美。水中から顔を出すと、全てを出し尽くしたように満足げにほほ笑んだ。

取材・制作
堀部遥、鎌田健一郎、久能弘嗣、伊藤岳
写真
石井理恵

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