車の自動運転は既に動き出しています。技術的には「完全自動」をレベル5とする5段階のロードマップが描かれており、現在は車間距離や車線の維持などレベル1~2に当たる「運転支援」の段階です。将来は無人の自動運転サービスも視野に入りますが、実現には、信号や道路環境の整備、法改正が必要になってくるでしょう。
2019年5月に成立した改正道路交通法では、緊急時などにドライバーがすぐ運転を引き継ぐことを条件に、スマートフォンの操作やテレビ観賞も限定的に可能になりました。改正法は20年に施行される見通しです。
自動運転というと、ラグジュアリーな快適さが注目されがちですが、最大の目的は事故を減らすこと、事故の被害を最小にすること。新車では衝突被害軽減ブレーキ(AEB)が標準装備になりつつあり、その割合は約85%まで高まっています。10年ほど前は安全装置がオプションでプラス10万円の価格設定だったこともありますが、今はAEBが理由の大幅な値上げの動きはありません。今年の東京モーターショ-でも、メーカー団体の日本自動車工業会(東京・港)が「最も重要な目標は安全性の向上による交通事故ゼロ」と強調しています。
高齢者の免許返納の必要性が指摘されていますが、自動車は過疎地では日常生活の足。自動ブレーキなど安全機能が付いた車両限定の免許を設け、高齢者も安全に運転を継続できるような法改正も検討されています。とはいえ自動運転に必要なのは車の技術開発だけではありません。自動運転をサポートする道路環境の整備なども必要でしょう。
システムの不具合で事故が発生した場合、責任の所在はドライバーかメーカーかの議論も必要です。自動運転の課題を研究するNPO法人「ITS Japan」(東京・港)の天野肇専務理事は「街づくりや多様な人々の働き方と一体になった都市交通の整備など『何のための自動運転か』を皆で考える必要がある」と話しています。