Back Stage Of Gunpla
ガンプラの裏側
All photos by KODAKA AKIRA (NIKKEI)
Editing by NITTA YUJI.
Filming Locations:THE GUNDAM BASE TOKYO,Tokyo,Japan.
BANDAI HOBBY CENTER,Shizuoka,Japan.
アニメ資料を読み込んでガンプラの設計図をつくる。モビルスーツは宇宙を駆け巡り、命をやりとりする兵器。航空力学や機械力学の観点からも違和感のない構造に仕上げる。外部の専門家に意見を求める場合も。妥協のない「リアル」の追求がガンプラのブランドを築き上げてきた。
アニメさながらの躍動感を演出するハンドパーツ。サーベルを差し込む穴が開くだけだったガンダムの手は1つ、2つと関節を増やし、ついに五指が自在に動くまで進化した。最近はランナーから切り離すと関節付きの手が完成する商品もある。異なるプラスチックの溶ける温度や固まるスピードを熟知。金型に流すタイミングを微調整して、成形時に関節部分を作り込んでいる。
1枚のランナーを3段階の成形工程で作り込む技術も。複数のパーツを組み合わせた状態に仕上げ、遊び手の負担を減らせる。設計、金型、そして成形。各セクションのプロたちが知識と情熱を注ぎ込んでアイデアを具現化していく。
繊細なガンプラ作りでは、金型のわずかな変化がプラスチックの目詰まりや仕上がりの悪化につながる。金型職場には不具合のあった金型が次々に届く。立ち向かうのは、アニメに登場する「地球連邦軍」の制服に身を包んだ技術者たちだ。問題箇所を特定し、金型をミクロン単位で削ったり、盛ったり。不具合を解消して成形現場に送り返す。「発売当初は生産が追いつかなくて、夜中までみっちり働いたよ」。栗田明弘さん(62、写真右)は振り返る。1980年に入社してから金型一筋。ガンプラの歴史の生き字引で「40年も売れるなんて想像もしなかった」と目を丸くする。好きなモビルスーツは「やっぱり『ナナハチ』(RX-78)」。
呼吸を整え、顕微鏡をのぞく。一瞬の静寂。金型の内壁にはわせたヤスリの突端だけが小刻みに動いた。「最初は削りすぎや盛りすぎでダメ出しを食らってばかり、ようやく一発で決まるようになってきました」。それでも、一人前にはほど遠いのだとか。「金型を一目見て、必要な作業の道筋を正確に見通せるかが大事。栗田さんはその力がすごい」。技術を極める仕事に終わりはない。
もっと格好良く、
もっと美しく、もっと楽しく。
技術と経験とを注ぎ込み、プラスチックの表現力をひたすらに究める。
その熱意が時代と国境を超え、人々を惹きつける。
ロングセラーには理由がある。