「どうして同じ広告ばかり表示されるのか」。インターネットを見ていて疑問に思ったことがあるだろう。実は、過去に見たサイト履歴などからあなたの好みや属性を機械が推測し、興味がありそうな広告を0.1秒以内に配信しているのだ。この作業が膨大に繰り返され、1兆円市場を形作る。知られざる「ターゲティング広告(狙う広告)」の世界に飛び込んでみよう。
2000年ごろまで広告取引はシンプルだった。広告を出したい企業と、出してもらいたいメディアがおり、その取引を広告代理店の営業マンがつないでいた。
ネットが普及して広告枠が大量に増え、人力で埋めるのが難しくなった。そこで2010年ごろ、広告を機械が自動で取引する仕組みが拡大。今では自動取引が全体の8割に達し、2018年には1兆円を超える見通し。
パソコンを立ち上げてサイトを開く。その瞬間、あなたが見たサイト履歴や検索した単語を機械が分析。「引っ越し先を探している」と判断されれば、賃貸物件の広告がサイトの片隅に表示される。これが「狙う広告」だ。
ただ、あなたに広告を出したい会社はたくさんある。そこで、いろいろな会社が手を挙げ、最も高額な広告が表示される。この瞬間の取引は、広告の配信システム(DSP)や広告枠の販売システム(SSP)などが担う。
わずか0.1秒。あなたに広告が届くまで、いろいろな企業・システムが動く。データやお金が複雑に流れる生態系を築いている。
広告を出して商品を売りたい
広告主にとって、ウェブ広告は見せたい消費者を細かく選別しやすい、クリックや購入などの広告効果を測りやすい、といったメリットがある
広告の企画・制作
広告主の狙いを実現するため、最適なウェブ広告の戦略を提案して広告を作る
ネット広告全体の統括
広告主や広告代理店とメディアを仲介する。広告を管理・運用するトレーディングデスクも近い存在
広告効果をチェック
広告を見た利用者のウェブ上の行動を追跡。きちんと広告が表示されたか、サービス購入につながったか、不適切なサイトに載っていないかなどをチェックする
(データマネジメント・プラットフォーム)
ターゲットを絞るデータ分析
ウェブサイトの利用データなどから、消費者の属性や関心を分析。広告主側が見せたい利用者に広告を表示させるためのシステムを提供する
(デマンドサイド・プラットフォーム)
最適な広告枠に自動入札
ある消費者がサイトを訪れた際、利用者の属性に見合った広告の中から、掲載費が高いものを瞬時に選んで入札する
(サプライサイド・プラットフォーム)
一番高い広告を選んですぐ配信
メディア側の利益を最大化するため、複数のDSPの中から、最も高い掲載費を支払う広告を選定し、瞬時に配信させる
自社サイトの広告枠を売りたい
ウェブサイトは無数にあり広告枠は拡大の一途。広告主側の需要も高く、なるべく高い掲載費を払う広告主に提供したい
サイト広告を見る
年代や趣味、居住地など、個人の属性に合った広告が表示される