友好・対立・協調…
揺れた日中の40年

日本と中国の平和友好条約が発効したのが1978年10月23日。安倍晋三首相は40周年を記念して25〜27日に訪中し、習近平国家主席と会談した。友好、摩擦、対立、協調……。中国は急速に経済力を伸ばし、日中関係の構図も変わった。揺れた日中関係の40年を振り返る。(写真は全て共同)

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松下幸之助氏の案内で松下電器茨木工場を見学する鄧小平中国副首相(1978年10月)

日中の名目GDP

友好関係:

  • 良好
  • 波風少ない
  • 悪く

日本
兆ドル

中国
兆ドル

(出所)国連、IMF。2017年以降はIMFの予測値。1978年と79年は国連

日中関係をめぐる主な動き
(肩書は当時)

1978年
10月
友好関係: 良好
友好
平和友好条約が発効し、日本は中国支援
日本GDP
中国GDP

日中両国は1972年の国交正常化から6年を経て78年8月に平和友好条約を結んだ。10月23日、東京での批准書の交換式には鄧小平副首相が出席し、福田赳夫首相と乾杯した。鄧氏は新日本製鉄、日産自動車、松下電器産業の工場を見学し、新幹線にも乗った。日本は政府開発援助(ODA)で中国を支援し、友好ムードが続いた。

1984年
3月
友好関係: 良好
交流
中曽根首相が訪中し第2次円借款を決定
日本GDP
中国GDP

1979年に大平正芳首相が第1次円借款プロジェクトを発表し、1980年代は経済面を中心に交流が活発になった。84年3月に訪中した中曽根康弘首相は約4700億円の第2次円借款の供与を決めた。82年に教科書問題が起きたり、85年に中曽根首相が靖国神社を参拝したりと波風も立ったが、交流は地方自治体や文化面にも広がった。

1992年
10月
友好関係: 良好
和解
天皇訪中「多大の苦難与えた」
日本GDP
中国GDP

1992年10月、天皇、皇后両陛下が中国を訪問された。天皇陛下は晩さん会で「わが国が中国国民に対し多大の苦難を与えた不幸な一時期がありました。これは私の深く悲しみとするところであります」と述べられた。和解を象徴する節目となった。中国には89年の天安門事件で国際社会から孤立していた状況を打破したい思惑があった。

1998年
11月
友好関係: 波風少ない
摩擦
江沢民主席が来日、歴史教育を批判
日本GDP
中国GDP

1998年11月、平和友好条約20周年を記念し、江沢民国家主席が中国の国家元首として初めて来日した。天皇陛下主催の晩さん会で日本の歴史教育を批判した。中国は1990年代から反日教育を強めた。江沢民来日は外交では珍しく「失敗」と位置付けられる。日中の間で、歴史認識や台湾、安全保障を巡る摩擦が強まっていった。

2001年
8月
友好関係: 悪く
対立
小泉首相の靖国参拝で「政冷経熱」
日本GDP
中国GDP

2001年8月、小泉純一郎首相は靖国神社を参拝した。中国はA級戦犯をまつる靖国神社への参拝は「侵略戦争を正当化する行為だ」として反発した。小泉首相は毎年、靖国神社を参拝し、06年は終戦記念日に訪れた。05年には中国で反日デモが起きた。日中関係は政治が冷え込む一方、経済は活況を呈し「政冷経熱」と呼ばれた。

2006年
10月
友好関係: 良好
改善
安倍首相が訪中、戦略的互恵関係に
日本GDP
中国GDP

胡錦濤国家主席は日本との関係改善を探っていた。小泉純一郎首相が2006年9月に退任し、後任に安倍晋三首相が就いたのを好機とみた。安倍首相は10月に中国を訪問し、胡主席との会談で「戦略的互恵関係」の構築で合意した。「友好」を超え、未来志向で利益を探る新たな外交関係で、安倍訪中は「氷を砕く旅」と評された。

2008年
5月
友好関係: 良好
互恵
胡錦濤来日で「第4の政治文書」
日本GDP
中国GDP

2008年5月、胡錦濤国家主席が来日し「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明に福田康夫首相と署名した。1972年の共同声明、78年の平和友好条約、98年の共同宣言に続く「第4の政治文書」と呼ばれる。歴史と台湾への言及は最小限にとどめ、中国が日本の戦後の平和路線を評価する文言も盛り込んだ。

2010年
9月
友好関係: 悪く
逆転
GDP上回り、尖閣問題など強硬
日本GDP
中国GDP

2010年9月、沖縄県の尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船と衝突した。漁船の船長らが逮捕されると、尖閣諸島の領有権を主張する中国はレアアース(希土類)の対日輸出を規制するなど強硬姿勢で対抗した。中国は10年に国内総生産(GDP)で日本を逆転し、世界2位の経済大国となり、自信を強めた背景もあった。

2012年
9月
友好関係: 悪く
最悪
尖閣国有化に中国「主権侵す」
日本GDP
中国GDP

野田政権は2012年9月に沖縄県・尖閣諸島を国有化した。中国外務省は「中国の主権を侵し、国民感情を著しく傷つけた。日中関係の大局を守ることに反する行為だ」との声明を発表。中国各地で反日デモが起こり、一部は暴徒化し、山東省青島では日系スーパーが襲撃された。「国交正常化以来、最悪」と言われるほど険悪になった。

2014年
11月
友好関係: 波風少ない
握手
安倍・習氏の初会談は表情硬く
日本GDP
中国GDP

2012年11月に共産党総書記に就いた習近平(シー・ジンピン)国家主席は日本への厳しい立場を取った。尖閣や歴史問題の対立で約3年間も首脳が会談できない状態になった。14年に北京で開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を機にようやく首脳会談が実現。握手はしたが、表情は硬く、習氏は仏頂面を貫いた。

2018年
9月
友好関係: 良好
協調
日中関係は「正常な軌道」に
日本GDP
中国GDP

安倍首相は中国との関係改善に動いた。「競争から協調」を呼びかけ、18年9月にはロシア極東ウラジオストクで習氏と会談し「正常な軌道」に戻った日中関係を印象づけた。中国が対日改善に前向きなのは、トランプ米政権とは貿易戦争の中、日本と連携したい思惑もある。領土や歴史問題、安全保障など対立の火種は消えていない。

取材・制作
佐藤賢、藤川衛、久能弘嗣、加藤皓也、鈴木輝良、矢後衛

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