ランチに500円、電車賃に300円……。私たちが毎日使うお金は積もり積もって生涯2億円以上にもなります。長い人生のなかで、何にいくらかかるのか? お金を切り口に人生を「見える化」してみると、ぼんやりした未来の輪郭がちょっぴりハッキリしてきます。さあ、人生とお金を巡る旅に出発しましょう。
TOPIC 1
日常生活にも
お金はこんなにかかる
毎日の生活にかかる費用を「消費支出」といい、中でも代表的なコストが食費や光熱・水道費、交通・通信などの「10大費目」です。お金のかけ方には年齢層ごとに違いがみられ、時代によっても変化してきました。1カ月の支出を30年前と比べてみると――。
日本の平均的家計(2人以上の勤労者世帯)の消費支出はおよそ月30万円。その4分の1程度を占める最も大きな塊が食料です。食料÷消費支出ではじく「エンゲル係数」という言葉を聞いたこともあるでしょう。所得が少ないほど数値は高くなり「食べるのに精いっぱいで他の支出に回す余裕がない」状態を表します。日本のエンゲル係数は戦後の60%台から2000年代にかけ20%台前半まで低下した後、最近は再び上昇傾向です。所得の伸び悩みに加え、単価の高い中食などへの出費増や円安による輸入コスト増が原因です。
過去30年間での最も大きな変化といえば、交通・通信費の増加でしょう。スマートフォンやインターネットの普及を背景に「通信」への支出は倍増しました。割を食った格好なのが、服など身の回り品。「被服及び履物」のオレンジ色の割合が小さくなっていることが分かります。
TOPIC 2
待ち受ける
人生の「三大コスト」
毎日の生活費以外にもお金はかかります。ライフイベント、いわゆる人生の節目に従って中長期で備える必要のある大きな山が立ちはだかります。子供の教育費、住宅費、そして老後資金は人生の「三大コスト」と呼ばれ数千万円単位のお金が必要になります。
教育費、「私立コース」は
「公立コース」の3倍も
国公立 | 私立 | |
---|---|---|
小学校 | 192万円 | 959万円 |
中学校 | 146万円 | 422万円 |
高校 | 137万円 | 290万円 |
大学文系 | 253万円 | 430万円 |
大学理系 | 248万円 | 548万円 |
大学医学部 | 453万円 | 2,986万円 |
教育費は公立か、私立か進路次第で千差万別。全部公立の「エコノミーコース」でも小学校から大学までの学習費は1人700万円以上かかり、全部私立だとその3倍に跳ね上がります。他に日常生活費も1000万円以上かかるので子供1人育て上げるには「ざっくり2000万円」ともいわれます。2019年からは「幼保無償化」が始まり20年からは高等教育への支援も厚くなりますが、その分塾や習い事に回るとの見方もあり家計全体の負担減効果は未知数です。
家は人生最大の買い物
生涯賃金の3分の1~半分とも
住居費は生涯コストの約3分の1を占めるとされます。持ち家は購入時の出費がかさみ、利子分を含めた住宅ローンの返済や固定資産税も家計にのしかかります。ただ、ローンの完済後は負担が軽くなり、長期で見れば賃貸よりも安く済むケースも多くあります。一方、賃貸の魅力はライフステージに合わせた居住地選びです。職場や給料、家族構成に応じて居住地を変えられる身軽さは捨てがたいものです。
老後資金2000万?3000万?
結局いくら必要、老後資金
話題になった「老後2000万円不足問題」。闇雲におびえず、何がどう「足りない」のか分解して考えて初めて対処も可能です。夫65歳、妻60歳の無職世帯の平均的な家計は支出が収入を約5.5万円上回っており、30年分では不足額が2000万円弱になる、という単純計算です。教養・娯楽費やその他支出の削りしろは大きいし、そもそも共働きなら年金はもっと多くなります。常に「自分は?」と引き直して考えることが大事です。
TOPIC 3
備えよ、長く
資産づくりの黄金ルールは「収入ー貯蓄=支出」の先取り貯蓄です。場当たり的な「収入ー支出=貯蓄」ではいつまでたっても増えません。若い時に規則的な資産づくりの仕組みさえ作ってしまえば、あとは若者の味方である「時間」が働いてくれます。
積み立てのコツは給与口座からの自動的な振り替えです。代表例が各金融機関の自動積立定期預金。勤め先によっては国の制度である「財形貯蓄」の枠組みがあるところもあります。長引く低金利で金利メリットは小さいですが、普通預金よりも好条件で一部は利息非課税の優遇もあります。やはり非課税優遇が受けられる「つみたてNISA」や「イデコ」を検討してみてもいいでしょう。値下がりするリスクにも配慮しつつ、20年や30年の長い目で資産づくりと向き合う心構えが大切です。