正念場のニッポン株式会社、
浮き沈みの構図
ニッポン株式会社の「稼ぐ力」は踊り場から脱出できるのか。3月期決算企業(金融、電力などを除く)の連結経常利益は2016年3月期に前の期比1.3%減となり、4年ぶりの減益に沈んだ。17年3月期には商社など非製造業の業績が回復するものの、全体では2.7%増にとどまりそうだ。自動車など製造業の収益見通しに、円高の進行が影を落とす。為替相場や世界景気などの不安定要因に翻弄されるニッポン株式会社の実情を、決算データから読み解く。
「波乱」と連動、円相場も利益水準を左右
- 全産業
- 製造
- 非製造
経常利益の増減率
- 120
- 100
- 80
- 60
- 40
- 20
- 0
- -20
- -40
- -60
- -80
- -100
- 97
- 98
- 99
- 00
- 01
- 02
- 03
- 04
- 05
- 06
- 07
- 08
- 09
- 10
- 11
- 12
- 13
- 14
- 15
- 16
- 17(予)
- 123.97
- 133.39
- 119.99
- 105.29
- 125.27
- 132.71
- 119.02
- 103.95
- 106.97
- 117.47
- 118.05
- 99.37
- 98.31
- 93.27
- 82.84
- 82.17
- 94.04
- 102.98
- 120.21
- 000.00
- 000.00
(%)
年(3月期)
円の対ドル相場
- 125
- 120
- 115
- 110
- 105
- 100
- 95
- 90
- 85
- 80
(円)
(為替)
円安
円高
連結決算が本格化した2000年代以降、上場企業の経常利益の増減率は「波乱」に左右されてきた。2002年3月期はIT(情報技術)バブルの崩壊で業績が減速。翌年には企業の事業再構築(リストラ)で回復したものの、リーマン・ショックのあった09年3月期には再び業績が急降下した。円相場との連動感も見てとれる。03年3月期の製造業の急回復には円安進行による恩恵があった。一方、リーマン・ショック直後の円高の急進は製造業の落ち込みに拍車をかけた。近年ではアベノミクスのもとで進んだ円安が利益拡大を呼び込んだ。
製造業が失速、内需は堅調
-
食品
-
繊維
-
パルプ・紙
-
化学
-
医薬品
-
石油
-
鉄鋼
-
非鉄金属
-
機械
-
電気機器
-
造船
-
自動車・部品
-
精密機器
-
建設
-
商社
-
小売業
-
不動産
-
鉄道・バス
-
陸運
-
海運
-
通信
-
ガス
-
サービス
2012年12月に安倍晋三政権が発足して以降、円安などのアベノミクス効果は企業業績にどう影響したのか。経常利益の増減率を主要業種別にみると、円安進行が自動車や電機など輸出の多い製造業の業績に大きく影響したことが読み取れる。内需系の非製造業にもインバウンド(訪日外国人)の急増などの恩恵が波及。2015年3月期までは幅広い業種が増益基調で推移した。円安の追い風がやみつつある足元では、非製造業の底堅さに比べて製造業の失速ぶりが際立っている。
前年度は資源安、今年度は円高が懸念
- 合計値
- 増加分
- 減少分
2016年3月期と17年3月期の経常利益の増減を業種別に並べ、3月期決算企業全体の増減にどれほど影響したかをグラフで示した。16年3月期は、資源安の影響を受けた商社の経常利益が大幅に減った。17年3月期の予想では、自動車が経常利益を大きく引き下げる見込み。円高の進行を見越し、一部の企業が為替相場の見通しを105円に想定していることが理由で、業界全体の経常利益にも影響しそうだ。
「1円の円高で営業利益400億円減」
2017年3月期の国内自動車6社の営業利益は、為替相場の変動でどう変わるのか。為替の変動が営業利益に与える影響を表す各社の為替感応度(前期基準、一部は今期)をもとに、1㌦=80円から120円までの想定営業利益を円ドルに限定して試算した。トヨタ自動車では1円の円高が営業利益を400億円押し下げる。
2割超の企業が最高益
大東建託
コーセー
なとり
内需で稼ぐ企業
東京ガス
ANAホールディングス
ハマキョウレックス
資源安の恩恵を受けた企業
太陽ホールディングス
栄研化学
エス・エム・エス
ニッチ分野に強い企業
2016年3月期決算では全体の2割超の企業が経常最高益を更新している。インバウンド消費をとらえた鉄道や、資源安の恩恵が大きいガスなど内需系企業が目立つ。そのほか、ニッチな分野で競争力を持つ「中小型」企業も好調だった。
- 取材・制作
- 板津直快、三木朋和、岩崎航、飯島圭太郎、鎌田健一郎、安田翔平、佐藤健
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