河川氾濫
水位10時間で10m超

データでみる急上昇

台風19号の被害で氾濫エリアが大きかった河川の1つが長野県の千曲川だ。100年に1度とも言われる大量の雨が流れ込み、長野市付近では水位が10時間で10m超も上昇。雨がほぼやんでいた未明に氾濫した。その時何が起きていたのか検証する。


堤防決壊で浸水被害

千曲川浸水地域
千曲川浸水地域
決壊地点の長野市穂保を北側から撮影(13日、小高顕撮影)

千曲川は長野市穂保の堤防が70m決壊した。あふれ出た濁流が住宅や田畑に流れ込み、新幹線の車両センターも浸水した。


観測所の記録は?

決壊地点から約6㎞下流にある中野市立ケ花。国土交通省北陸地方整備局の千曲川河川事務所の観測所では、急激な水位上昇が記録されていた。同地点で氾濫が発生した13日3時台に水位は12.46mに到達。1949年からの観測史上で最高だった。


雨上がり、水位ピークにずれ

千曲川浸水地域
雨量は北信建設観測所

1時間に10mmを超える雨が12時から10時間連続で降り、13~15時には17mmの強い雨が降った。夜に入ると台風上陸にもかかわらず雨脚は弱まったが、上流から雨水を集め続ける千曲川は水位上昇を続けていた。降水量と河川水位のピークには12時間のズレがあった。


1時間で2m上昇も

千曲川浸水地域

立ケ花の水位は日没後の17時以降に急上昇を始め、氾濫が発生した翌3時すぎまでの約10時間で10m超も水かさが増した。22時30分から23時30分の1時間には一気に1.97m上昇していた。千曲川には長野県各地に降り注いだ雨水が流れ込む。長野県の上流域では猛烈な雨が降り、12日だけで佐久市初谷で546mm、北相木村で395mmの雨量を記録。防災科学技術研究所の調査では、千曲川流域の多くの場所で12日の24時間雨量が「100年に1度」の想定量を超えていたという。

立ケ花観測所は23時20分に避難判断水位を超えたため、23時40分に高齢者などに避難を促す水準の「氾濫警戒情報」を発表した。ただ、急激な水位上昇で同時刻にはすでにいつでも氾濫が起きうる氾濫危険水位に到達していた。一方、千曲川右岸側の中野市は上流域の状況から氾濫を予見。21時30分には立ケ花周辺の住民に避難指示を発令した。左岸側の長野市が避難指示を発令したのは13日0時45分だった。


経験のない災害時は、実際の降水量や水位上昇を確認してからでは避難が間に合わない。自治体や当局の担当者は災害対策に力を注ぐが、防災情報の発表が後手に回る場合もあり、受け身では命を守るのは難しくなってもいる。一方、今回の浸水被害はハザードマップの被害想定と重なる部分も多く、日ごろの備えの有効性も示された。岡山大学の前野詩朗教授は「強力な堤防があれば水害が防げるはずという『堤防神話』を見直し、豪雨の時は早めに逃げるという防災意識の徹底が最も重要だ」と強調する。

記事
新田祐司
デザイン・マークアップ
久能弘嗣
プログラム
清水正行

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