円高苦境、薄日は?

グラフで見る4~9月期決算

 上場企業の2016年4~9月期決算は、歴史的な円高進行を受けて4年ぶりの減益に落ち込んだ。自動車や機械など輸出製造業で苦しい決算が相次ぐ中、内需や消費の一角では好調を維持した企業も目立つ。ただ、米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利し、企業の収益環境を取り巻く不透明感も高まっている。データは11月11日時点。

円高進行は
「ロシア危機」以来

 円相場の4~9月期中の平均値は1ドル=105.2円となり、前年同期に対する円高進行幅は16.7円に達した。ロシア財政危機の影響を受けた1999年4~9月期(20.8円)以来の歴史的な逆風だ。

「円高圧力」が足元で強まる

(注)円相場は東京市場。各半期の平均値を前年同期と比べた

4~6月は苦境 、
下期回復にらむ

 急激な円高進行が企業業績に影を落とし、四半期の推移を見ると、2016年4~6月期は前年同期比で2割減益となった。ただ、7~9月期は前年と同水準まで回復しており増益への浮上が目前だ。トランプ大統領の誕生など収益環境の先行きは予断を許さないが、円相場の動向次第で下期(16年10月~17年3月期)から回復トレンドが強まる公算が大きい。

 【四半期ベース】
直近7~9月期は前年水準に回復

【半期ベース】足元の4~9月期はなお減益

【通期ベース】
17年3月期は2年ぶり増益見込む

製造業は相次ぎ「減収減益」

 4~9月期決算は円高で製造業が17.1%減益と大きく落ち込んだが、非製造業は2.7%減と小幅の減益にとどまり、業種間の収益格差が広がった。業種別の増減率について縦軸に売上高、横軸に純利益をとったバブルチャートで収益力をみると、主力製造業は左下の「減収減益」に集中しており、日本企業全体の収益悪化につながっている。

バブルチャートで見た収益力
(4~9月期)

(注)2016年4~9月期の上場企業の業績を業種ごとに集計。円の大きさは各業種の時価総額を示す

反転予想でも読めないトランプ新政権

 下期(16年10月~17年3月期)にかけて、日本企業全体としては回復の足取りを早めそうだが、業種別にみると明暗もある。前期(16年3月期)に巨額損失を計上した商社はV字回復。増益率を算出できずグラフに反映していないが、石油も黒字転換する見通しだ。一方で自動車・部品や精密機器では減益基調がなお続きそうだ。また、米大統領選で勝利したドナルド・トランプ氏の経済政策が明確でないこともあり、米国の動向が企業業績にどのような影響を与えるのか、読めない部分もある。

製造業、非鉄金属などで回復見込む

      

(注)赤字などを除く

非製造業、商社のV字回復が際立つ

      

(注)赤字などを除く

制作
三木朋和、岩崎航、久能弘嗣

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