台湾、

台湾の新トップを決める4年に1度の総統選が13日に投票日を迎える。統一圧力を強める中国にどう向き合うかが大きな焦点となる。中台関係のポイントとなるパワーバランスの変化を、外交・軍事・経済の各分野でみていく。

01

台湾外交関係国、
7年で4割減

台湾が正式な外交関係を持つ国は、中南米や太平洋島しょ国など13カ国にとどまる。中国は台湾の孤立を狙い、台湾の友好国に対し、経済支援などと引き換えに断交を働きかけてきた。台湾は蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が就任した2016年以降、9カ国(約4割)との外交関係を相次ぎ失った。

台湾の外交関係国・地域
カ国
任期中の
増減
台湾総統
中国共産党総書記

(注)台湾外交部の発表などを基に作成

李登輝政権(1988~2000年)は中南米やアフリカ諸国などと外交関係の樹立を進めた。国際社会で台湾の存在感を高める狙いがあった。
台湾独立志向をとった民進党の陳水扁政権(00~08年)の時期に中国は各国への働きかけを強め、台湾と断交する国が相次いだ。
親中路線をとった国民党の馬英九政権(08~16年)は中国との「外交休戦」をかかげた。中国の動きも下火となった。
中国と距離を置く民進党の蔡英文政権(16年~)が発足すると、中国は再び外交攻勢を強めた。

台湾と断交した国

中国は近年、米国の影響力が強いとされる中南米諸国の切り崩しを進めている。18年にドミニカ共和国とエルサルバドル、21年にニカラグアがそれぞれ台湾と断交した。

直近では中米ホンジュラスが23年3月、80年以上続いた台湾との外交関係を打ち切り、中国と国交を結んだ。蔡総統が約4年ぶりの外遊で米国を訪れる直前のことで、米台の連携にくさびを打ち込む形となった。

外交関係を断絶した
国・地域
台湾
総統
中国
共産党
総書記
1988ウルグアイ李登輝趙紫陽
1990サウジアラビア江沢民
1992大韓民国
1994レソト
ラトビア
1996ニジェール
1997バハマ
セントルシア
1998 南アフリカ共和国
中央アフリカ共和国
ギニアビサウ
トンガ
1999パプアニューギニア
2001北マケドニア陳水扁
2002ナウル
2003リベリア胡錦濤
2004ドミニカ国
バヌアツ
2005グレナダ
セネガル
※ナウルの国交が復活
2006チャド
2007コスタリカ
※セントルシアの国交が復活
2008マラウイ
2013ガンビア馬英九習近平
2016サントメプリンシペ蔡英文
2017パナマ
2018ドミニカ共和国
ブルキナファソ
エルサルバドル
2019ソロモン諸島
キリバス
2021ニカラグア
2023ホンジュラス
太平洋島しょ国、支援合戦の舞台に
オーストラリア40%、中国9%、日本9%、ニュージーランド9%、米国8%、世界銀行5%、アジア開発銀行5%、EU機関4%、台湾1%、その他
(出所)ローウィ国際政策研究所(Lowy Institute「Pacific Aid Map」)

米国と中国の間にある太平洋島しょ国は特に中台のせめぎ合いの舞台になってきた。14カ国のうち10カ国が中国、4カ国が台湾と外交関係がある。19年にはソロモン諸島とキリバスが相次ぎ台湾と断交し、中国と国交を結んだ。

中国の援助攻勢も目立ち、ローウィ国際政策研究所によると2008~21年の実績でオーストラリアに次ぐ2番目の支援国・組織になっている。日本、米国、ニュージーランドなども交えて影響力を巡るせめぎ合いが続く。

02

東アジアの
軍事バランス、
中国に傾く

東アジアの米中の軍事バランスは年を追うごとに中国有利に傾いている。軍拡を加速する中国に米国の備えが追いつかなくなりつつある。米国は台湾や日本、豪州、フィリピンなどと連携して力による現状変更を試みる中国に抑止力を効かせる必要に迫られている。

軍拡に惜しみなく国力を注ぐ中国の習近平指導部

中国と米国(インド太平洋軍)の軍事力
  • 主力戦闘機 …×50機
  • 空母 …×1機
  • 主力戦闘艦艇 …×10機
  • 主力潜水艦 …×10機

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1999

米インド太平洋軍の分析によると、1999年時点で東アジアで米軍は優勢を維持していた。米軍の主力戦闘機175機に対して中国軍は100機しか保有していなかった。中国軍は当時、台湾侵攻に不可欠な強襲揚陸艦を一隻ももっていなかった。1990年代半ばの台湾海峡危機で撤退を余儀なくされた中国軍はこのころから軍事大国化への道を決意し準備を始める。

2020

2020年には米中両軍の実力は拮抗するようになる。中国軍は空母を2隻展開できるようになり、東・南シナ海で力による現状変更の試みを強める。主力戦闘機も1250機と米軍の250機を凌駕(りょうが)するようになる。

2025年 予測

東アジアで米中の軍事バランスは崩れ、中国軍の優勢が強まる見通し。台湾上陸に欠かせない強襲揚陸艦は12隻を運用し、空母も3隻動かせるようになる。主力戦闘機は1950機と米軍(250機)を圧倒する。台湾や日本周辺を射程に収める中短距離ミサイルは2000発と、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システムの2基をしのぐ。

03

難路の台湾、
経済依存深く

台湾経済は中国と密接に結びついている。輸出主導型の台湾にとって、言葉の壁がなく、高い経済成長を遂げてきた中国は市場として欠かせない存在となってきた。

中台はスマートフォンの生産などモノづくりの分野でも強固な協力関係を築いてきた。米アップルのiPhoneは大半が台湾企業の中国拠点で生産されている。中国を拠点にビジネスを展開する台湾人(台商)は80万人規模に達するとされる。

総統選を前に、中国は台湾に認めていた関税優遇を一部停止するなど、台湾に揺さぶりをかけている。政治対立が深まるなか、中国経済への過度な依存が課題となっている。

※データは米ドル

貿易

輸出入ともに中国が最大

台湾の輸出先の割合
  • 中国
  • 米国
  • 日本
  • 韓国
  • ASEAN
  • その他
(出所)台湾の貿易統計、中国に香港含む
台湾の輸入額の割合
  • 中国
  • 米国
  • 日本
  • 韓国
  • ASEAN
  • その他
(出所)台湾の貿易統計、中国に香港含む

台湾は輸出入とも中国が最大の貿易相手だ。対中国比率は輸出で約4割、輸入で約2割に達する。特に巨大市場としての魅力は大きく、ハイテクから農業まで多くの業界が中国を主要な輸出先としている。

蔡英文政権は東南アジアなどとの経済関係を深める「新南向政策」を進めてきた。中国経済の減速もあり、近年は輸出の対中依存度が下がり始めている。

投資

中国への投資シェアは2010年をピークに低下傾向

台湾の対外直接投資額に占める比率
  • 中国
  • その他
(出所)台湾経済部

企業の工場建設や買収を示す「直接投資」は、中国以外へのシフトがすでに鮮明になっている。中国の人件費高騰や米中対立などを背景に、鴻海精密工業などの電機大手が東南アジアやインドなどへの投資を相次ぎ拡大している。

人の交流

台湾への訪問者、中国の割合下がる

国・地域別の台湾訪問者数(居住地ベース)
  • 中国
  • 米国
  • 日本
  • 韓国
  • ASEAN
  • その他
(出所)台湾交通部

中国大陸からの訪台客が全体に占める比率も、14~15年をピークに低下傾向が続いている。新型コロナウイルス禍を経た23年12月時点で、中国は台湾への団体旅行を解禁していない。

04

高い半導体
シェア、
台湾経済
「切り札」

台湾が中国に対して大きく優位に立っているのが、産業競争力や安全保障に欠かせない半導体の分野だ。台湾には先端半導体の量産で世界トップを走る台湾積体電路製造(TSMC)を筆頭に有力メーカーが集積している。半導体は日米欧とサプライチェーン(供給網)の協力を深めるうえでも重要で、台湾の地政学的な「切り札」となっている。

半導体受託生産の世界シェア

(出所)台湾トレンドフォース

台湾企業は半導体の受託生産で世界シェア6割超を占める。TSMCは先端半導体で約9割と圧倒的なシェアを持つ。TSMCは日米欧の誘致に応じて海外工場の新設を進めているが、最先端品の開発・量産は今後も台湾で手掛ける方針だ。