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エレキギター復権長野でよみがえる
USビンテージ
1930年代ごろに登場したエレキギターが今、復権の兆しを見せている。新型コロナウイルス下の巣ごもり需要に加え、ガールズバンドを題材にしたアニメ人気も追い風だ。6月30日、東京に世界初の旗艦店を開業したのはギター大手の米フェンダー。同社は1960年代のビンテージ仕様の「Stratocaster(ストラトキャスター)」を日本の工場でよみがえらせている。半世紀以上の時を超えた音色は、どのように再現されるのだろうか。
訪れたのは、日本でフェンダーブランドのギターを製造する長野県茅野市の工場。工程を取材したのは「Made in Japan Heritage 60s Stratocaster」という1960年代のビンテージ仕様のモデルだ。米国のフェンダー本社から送られる設計や品質管理データを忠実に守り、木材の乾燥から切り出し、研磨、塗装、組み込みといった工程が職人の手によって進んでいく。
巣ごもり需要とアニメが追い風
国内のギター・電気ギターの販売金額は2022年に約75億円と、新型コロナウイルスの感染拡大前の19年と比べて2割以上増えている。フェンダーの日本法人、フェンダーミュージック(東京・渋谷)のエドワード・コール社長によると「コロナ下で米国だけで1600万人以上、世界では推定3000万人がギターを始めた」という。
コロナ感染拡大による巣ごもり需要は一服しつつあるが、一方でアニメ人気がエレキギター需要を押し上げている。ギターを愛する少女がバンド活動を通じて成長する姿を描く漫画「ぼっち・ざ・ろっく!」のアニメ放送が始まったのが22年10月。アニメではギブソンのエレキギターのレスポール・カスタム、ヤマハのPACIFICA(パシフィカ)シリーズが登場する。アニメ登場後から約2カ月間で、ヤマハの同シリーズ全体で前年比3~4倍の売り上げを記録した。
銀座・大阪・名古屋のヤマハの店舗でアニメとのコラボイベントを実施した際は約1カ月間で累計1万人が来店。楽器に興味があっても、難しそうだと諦める人が少なくないなか「『ぼっち・ざ・ろっく!』にはそれを乗り越える魅力や親しみやすさがあったと感じている」(ヤマハミュージックジャパンLM営業部マーケティング課の中世景三氏)。
ギター習熟に壁
ファッションも取り込む
フェンダーの21年の調査によると、コロナ下でギターを習い始めた人のうち「4人に1人の割合で上達が停滞している」といい、ギター離れの予備軍も存在する。ギターに長く親しんでもらおうと、米フェンダーが東京・原宿で開業した世界初の旗艦店では、ギターの品ぞろえだけでなく、大音量でギターを試せる防音ルームやカフェを設けた。アパレルブランド「F IS FOR FENDER(エフ・イズ・フォー・フェンダー)」も立ち上げ、消費者との接点を増やしている。「今、音楽の歴史の中で、スマートフォンなどでこんなにも音楽が身近になった時代はないといわれ、音楽はよりライフスタイルの一部になっている」と、カフェやファッションブランド事業に携わるZENSE代表取締役の高橋一平氏は話している。
音源 : Fender Musical Instruments Corporation
音源 : Fender Musical Instruments Corporation