G7と世界 変わるパワーバランス

主要7カ国(G7)は19日から広島で首脳会議(サミット)を開く。経済・軍事で力を強める中国やウクライナに侵攻したロシアへの対処で結束を示す場となる。世界に占めるG7の力がかつてに比べ小さくなった状況で新興・途上国との協力を探る。経済規模や安全保障、人口などのデータから世界におけるG7の姿をみた。

TOPIC 1

貿易相手、
G7から中国主軸へ

世界経済に占める中国の存在が大きくなっている。世界各国・地域の輸出入の相手をみると中国が貿易額で上位に入っている国・地域が21世紀に入って増加し、G7諸国を上回る存在になった。G7各国にとっても対中貿易が重みをもつようになった。

貿易額は経済の結びつきの太さを映す。2022年の世界各国・地域の輸入相手をみると中国は152カ国・地域で上位3位に入り、主要7カ国(G7)全ての延べ数(168カ国・地域)に迫った。輸出相手としても中国は68カ国・地域で上位3位に入り、米国の82カ国・地域には及ばないものの他のG7各国を上回った。

1980

1980年の時点で中国が輸入相手で上位3位に入っている国・地域はわずか3だった。米国(71カ国・地域)や日本(53カ国・地域)と比べてもごく限られていた。輸出先としても中国が上位3位に入っているのは3カ国・地域のみだった。

2000

20世紀末の2000年の段階で中国はまだ各国の貿易相手としてG7諸国ほどの存在とはいえなかった。中国が輸入相手の上位3位に入っている国・地域の数は19、輸出相手では16だった。

2022

21世紀に入ってからの20年あまりで中国は貿易相手として一気に台頭した。中国が輸入相手の3位以内に入っている国・地域の数はG7で最も多い米国の倍を超す水準にまでなった。

G7各国の中国依存も深まる

G7各国の輸入・輸出額に占める中国のシェアをヒートマップで示した。赤が濃くなるほど、中国の割合が高い。G7のなかでも特に日本は中国との経済の結びつきが強いことが浮かぶ。

G7各国の貿易額に占める中国のシェア

国際通貨基金(IMF)のデータから作成、ドイツは旧東ドイツを含まない

輸入で中国首位は3カ国
日本は輸出先でもトップ

2022年の輸入相手で中国が首位なのは日本、米国、英国の3カ国だった。ドイツやカナダ、イタリアでも中国は2位に入った。 日本は輸出先としても中国が最大の相手だ。地理的に近く「建設的かつ安定的な関係」の構築を掲げる。英国、ドイツ、カナダでは米国が1位だった。

G7の輸入相手上位10カ国・地域(2022年)

  • G7
  • 中国
  • その他
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
カナダ

国際通貨基金(IMF)のデータから作成、総額に占める割合

G7の輸出相手上位10カ国・地域(2022年)

  • G7
  • 中国
  • その他
日本
米国
英国
ドイツ
フランス
イタリア
カナダ

国際通貨基金(IMF)のデータから作成、総額に占める割合

TOPIC 2

エネルギー、独伊で目立ったロシア依存
日本は自給率1割

ドイツとイタリアはウクライナ侵攻前、ロシアへのエネルギー依存度が高かった。ドイツは石油と天然ガス、石炭のいずれの輸入相手もロシアが首位で30~40%台を占めていた。日本はロシアの割合は限られるものの自給率はもっとも低い。

G7各国のエネルギー自給率とロシアへの依存度

経済産業省・資源エネルギー庁まとめ(データは2020年、日本のロシア依存度は21年)

ウクライナ支援、「G7+EU」が87%

ウクライナへの支援はG7と欧州連合(EU)で総額の87%に達する。分野別にみると財政で9割、人道で7割、軍事で8割を占める。G7が主導している状況が浮かぶ。

ウクライナ支援額に占めるG7とEUの割合

キール世界経済研究所のデータから作成、2022年1月24日~23年2月24日

軍事支援、米国がけん引

ウクライナへの軍事支援は防空システムや戦車などの供与を決めた米国が60%を担っている。日本は財政支援が中心で支援総額は米国や英国、ドイツに次いで多い。

各国のウクライナ支援額
  • 財政
  • 人道
  • 軍事

キール世界経済研究所のデータから作成、2022年1月24日~23年2月24日

TOPIC 3

世界シェアで読むG7

国内総生産(GDP)

国際通貨基金(IMF)のデータから作成、破線は将来の予測

スクロール

日中逆転の2010年に5割割れ、足元4割

世界のGDPに占めるG7の割合は2010年に5割を切った。この年に中国が日本を抜いて世界2位になった。G7のシェアは足元で4割台前半に減っている。

中国GDP増、コロナ前は米中逆転の勢い

国際通貨基金(IMF)のデータから作成

中国のGDPはこの40年間で50倍ほどに増えた。新型コロナウイルスの感染拡大前は米中が20年代にも逆転するとの民間予測があった。日本経済研究センターは中国の経済失速で米中は逆転しないとみる。

G7の軍事支出、サミット発足時から6割増

G7の軍事支出はサミットが始まった1975年と比べ、6割ほど増えた。冷戦終結後に減少したが、足元では再び上昇傾向にある。

シェアは冷戦終結時から1割減

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の3月末時点のデータから作成。2021年のドルベース実質値

世界の軍事支出に占めるG7の割合は5割だ。冷戦終結時の6割と比べ1割減った。

G7、世界シェア10%割れ

世界の人口に占めるG7の割合はサミット発足当初の14%から減り、2019年に10%を切った。

日本・ドイツ・イタリアは人口減少局面に

国連のデータから作成、破線は将来の予測。ドイツは現ドイツの枠組みで計算

日本は2009年、イタリアは14年、ドイツは21年をピークに人口減少に転じた。世界の1位・2位を争うインドや中国と比べると、G7の合計人口はその5割ほどにとどまる。

TOPIC 4

多様になる国際枠組み

G7以外にも国際社会には中国やロシアなどを含むG20や軍事同盟など様々な枠組みがある。それぞれの参加国や目的、経済や人口の規模を比べた。

人口は国連、GDPは国際通貨基金(IMF)、軍事支出はストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の3月末時点のデータから作成。人口とGDPは2023年の推計値、軍事支出は21年のドルベース実質値。SCOのGDPはパキスタン、軍事支出はウズベキスタンを除く合計値で算出

人口
GDP
軍事支出