ガザ衛星画像が示す衝突の痕建物6割、農地7割に被害

イスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃してから1年が経過した。イスラエルがハマス殲滅(せんめつ)を掲げ、空爆と地上作戦を続けたパレスチナ自治区ガザでは4万人超が死亡した。衝突の痕を衛星画像と写真で追う。

空爆を受け炎と煙が上がる住居(23年10月7日、ガザ市)=AP

イスラエル軍は当初、北部を中心とした空爆と地上作戦に乗り出した。米ニューヨーク市立大学などによると8月中旬時点で全体の6割もの建物が損壊した。

ガザ保健省によると9月末時点での負傷者数は9万6359人に達した。

犠牲者数は4万1615人にのぼる。

人質の救出とハマスの殲滅を目的にイスラエル軍の作戦は域内全土へ拡大した。学校でも多くの人たちが避難生活を送る。子どもたちが教育を受ける時間は大幅に減った。

薬やベッドは足りず多くのけが人、患者が満足な医療を受けられなくなった。

水処理施設などインフラの多くが損壊し生活は一変した。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によると域内には39万5000トンもの廃棄物が滞留している。土壌汚染は将来の復旧プロセスで大きな障壁となる。

イスラエル軍の侵攻エリアにあわせ、市民は避難先を転々と変えざるを得ない状況が続いた。OCHAによると9月下旬時点で人口の9割にあたる約190万人が避難生活を送る。

心のよりどころであるモスクも破壊された。イスラエル軍はモスクに隣接する施設がハマスの軍事活動に利用されていると主張してきた。

建物の破壊と燃料不足により夜の景色は一変した。経済の活性度合いや市民の暮らしぶりを映す夜間光の広がりと強さは衝突前から8割以上減少したとの調査もある。

衝突前23/9)
衝突後24/9)
米航空宇宙局NASAなどによるデータを米コロラド鉱山大学が整理

明かりが広がるイスラエルとは対照的だ。ガザが苦境に置かれ続ければ市民の憎悪は増し、将来新たな衝突を生む火種になりかねない。