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東京五輪の女子ゴルフで日本代表として出場が見込まれる畑岡奈紗。世界ランクは2019年からトップ10をキープ、有力な金メダル候補だ。飛んで曲がらないドライバーショット、切れ切れのアイアンを武器に、日米両ツアーで活躍を続けている。

彼女のスイングの随所に、
世界で戦うための秘訣が隠されている。

Profile

畑岡奈紗
畑岡 奈紗

1999年1月13日、茨城県笠間市生まれ。名前は「世界に羽ばたく子になってほしい」と米航空宇宙局(NASA)にちなみ命名。11歳からゴルフを始め、2016年に世界ジュニアで2連覇。同年10月の日本女子オープンでアマチュアとして史上初の国内メジャー制覇を果たし、同月プロ転向。17年から米ツアー参戦し、18年アーカンソー選手権で日本人最年少の19歳で米ツアー初優勝を飾る。米ツアー通算3勝、国内ツアーは日本女子オープン3勝、日本女子プロ1勝を含め通算5勝。

(注)成績、ランキングはすべて2020年3月時点

豪快なドライバーは毎年飛距離アップ

身長158センチと小柄ながら、ヘッドスピードは46~47メートル毎秒で、19年の米ツアーでの平均飛距離262.65ヤード(44位、日本ツアーなら1位に相当)と豪快なドライバーショットも魅力だ。筋力トレーニングにより、米参戦1年目の17年(251.12ヤード)から10ヤード以上伸びている。

ショットはリズム、テンポが肝心

スイングで一番気をつけているのはテンポ。「イチ、ニのサン」とバックスイングからトップの切り返しでひと呼吸置く。調子が悪くなると速くなり、「イチ、ニ、サン」のリズムで打つと、スイングが8の字にループしたりしてショットが左右に散らばるという。練習場では体が起き上がらないように意識している。

得意のアイアンは9種類の球筋を操る

ドライバーショットの持ち球はドロー。飛距離を伸ばしながら正確性、安定性を増すのが課題だ。フェアウエーキープ率は毎年向上(19年は73.16%)している。ただ「アイアンが私の一番の強み」。19年のパーオン率は72.30%だった。弾道の高さは低中高、球筋はフェード、ドロー、ストレートと計9種類のショットを操る。「一番の得意はミディアム(高さが中程度の)フェード」

最後まであきらめない

畑岡のモットーは「最後まであきらめない」。1ラウンドで7、8アンダーをたびたびマークする爆発力があり、16年日本女子オープンは最終日に首位と4打差の5位から逆転し、ツアー初優勝。18年TOTOジャパンでは4打差の3位から米ツアー2勝目を飾った。「18ホール終わるまで、何が起きるかわからない。トップにいても気を抜かない」

グリップはフックになりすぎないように

自分ではスクエアにしているつもりだがフック。ジュニア時代から、飛ばそうとすると、ボールをつかまえたくて左手のフックの度合いがきつくなりすぎる。クラブを上から強く握りすぎたり、指の間隔が開いて隙間が生じるなど、グリップの感覚は毎日微妙に変わるので、チェックは欠かせない。

アドレスが一番大事

ショットの精度を上げるにはアライメント(方向)、アドレスが重要だ。「グリップとスタンスの向きでショットは8割くらい決まる」。左足は若干オープン。つま先、膝、腰、肩のラインが目標に対し重なり、スクエアになるように注意している。風がアゲンストで強いボールを打とうとしたり、調子が悪くなると右を向きがちになる。ラウンド後は練習場でクラブやトレーニング用のスティック棒を2本、つま先のラインとボールの手前の飛球線ラインに平行に置き、ショット練習して矯正する。

2020年は米ツアーで年間3勝が目標

2020年の米ツアーでは開幕2戦連続2位と順調なスタートを切った。目標はシーズン3勝。17年10月のプロ転向時には「5年以内に海外メジャーで勝ちたい」と抱負を語った。全英女子を制した渋野日向子に先を越されたが、まだ若い。焦らず実力を蓄え、メジャー5大会にターゲットを絞り栄冠を目指す。

思い切り振り抜く

米ツアー参戦1年目の17年は大苦戦。賞金シード獲得には遠く及ばず、最終予選会に再挑戦して18年の米ツアー出場資格を得た。スイングで「トップ位置が低くなりすぎて(ドライバーショットが)不調に」。トップが落ちてこないよう「高く」を意識、スイングアークを大きくし、思い切り振り抜くことで苦境を切り抜けた。

腰の位置ではクラブは地面と平行に

テークバックで腰の位置に手がきたとき、クラブは右つま先(足の付け根)の延長線上で、地面となるべく平行になるよう意識している。スイングリズムが速くなりすぎず、トップではクラブが肩のラインと重なるように。バックスイングとフォロースイングが左右対称になるよう心がけている。調子が今イチだとテークバックのリズムが速くなり、左手のグリップを強く握りすぎてアーリーコックになりやすいので、右手でテークバックを真っすぐ引くようイメージしている。

ハーフショットでライン出し練習も

ショットの調整には、クラブを腰の位置まで90度上げ、ハーフスイングでコントロールショットする練習も効果的だという。練習場ではストレッチ代わりに練習用バットを振り、自宅ではよく、母の博美さんにボールを上げてもらい、トスバッティングを行う。小学校時代の少年野球チームでは二塁手だった。

飛距離アップは筋トレで

ショットにより切れ味が出るよう、20年は上半身のトレーニングを強化している。「今まで100の力でしか飛ばなかった距離を、80の力で飛ばせれば安定感も増す」。下半身のトレーニングではトレーナーに体を押さえてもらい抵抗力を加えたり、低い姿勢で横に跳ぶサイドジャンプも。下半身・体幹強化のため、片足を前に出して着地と同時に腰を落とす「ランジ」も練習メニューの一つ。

攻撃的ゴルフでバーディーを

米ツアーではバーディー合戦となる試合も多い。グリーンの端、「ニアサイド」にピンが切られていても臆せずバーディーを狙いにいく、攻撃的なゴルフがスキだ。目標とするメジャー大会で19年は空回り、3試合で予選落ちした。20年は「ショットのバリエーションも増えているし、思い切り行けたら」。気負わず、ふだん通りのプレーがしたい。

五輪で金メダル、世界ナンバーワン狙う

靴は左足から履くのが験担ぎ。肩の力を抜くため、ショット前にはぴょんぴょん3回ジャンプするのがルーティンだ。米ツアー9勝で元世界ランク1位の宮里藍プロに憧れ、プロ入りするとすぐに米国に渡った。東京五輪では世界ランク1位の高真栄(コ・ジンヨン)ら韓国勢が強敵になるとみているが、地の利を生かし金メダル獲得を狙う。プロの階段を駆け上がってきた「NASA」が、伝統の全米女子オープン制覇、世界ランク1位に上り詰めるのも、そう遠くはないかもしれない。

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写真
三村 幸作、山本 博文
記事
吉良 幸雄
デザイン
森田 優里
ディレクション
清水 明
マークアップ
喜田 俊平(日経編集制作センター)

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