よくわかる国の予算
終わらぬ危機モード106兆円
政府の2021年度予算案は一般会計総額が約106兆6100億円と過去最大を更新しました。20年度第3次補正予算案と合わせた「15カ月予算」として新型コロナウイルスの流行長期化に対応します。財政で経済を支える危機モードが続きます。予算案のポイントを見てみます。
3年連続100兆円超、
税収は落ち込み
一般会計の歳出総額は106兆6097億円と、当初予算ベースで3年続けて100兆円を超えます。国会の議論を経ずに使途を決められる予備費をコロナ対策として5兆円計上し、これにより当初予算の規模が大幅に膨らみました。社会保障や防衛の費用は過去最大を更新します。20年度予算は当初102.7兆円でしたが、コロナ対策などの補正で175.7兆円まで積み上がりました。
税収は20年度当初比で9.5%減の57兆4480億円を見積もります。企業業績の低迷で法人税などが落ち込みます。20年度は当初の63.5兆円から第3次補正後に55.1兆円まで下方修正しています。
「15カ月予算」が定着、
補正は査定甘く
政府は2021年度当初予算案と20年度第3次補正予算案を合わせ「15か月予算」として打ち出しました。コロナ対策のほかデジタル化への対応など中長期の戦略を盛り込みました。21年度当初予算案は1月召集の通常国会で成立を目指す20年度3次補正予算案と一体で編成されるため、「15カ月予算」と呼ばれます。「15カ月予算」は10年連続です。補正予算案は当初予算案と比べて精査が甘く、予算編成の「抜け穴」として利用される形が定着しています。
コロナ、
ワクチン接種体制急ぐ
コロナの拡大防止策
新型コロナウイルス感染症への対応は、2020年度第3次補正予算案を中心に対策費を確保します。感染の拡大防止のためにワクチンの接種体制を整えるほか、逼迫する医療提供体制を強化するなど2年目を迎えるコロナ対策の充実を図ります。
政府は3次補正で接種体制の整備や接種の実施に向けて約5700億円を計上しました。接種費用は国が負担します。厚生労働省は自治体に対して、医療従事者は2月下旬から、3千万~4千万人程度を見込む高齢者は3月下旬をメドに接種体制を整えるよう指示しており、年度内の接種開始に向けた作業を急ぎます。
デジタル庁で遅れ挽回
政府は新型コロナウイルスで浮き彫りになった政府の電子化の遅れを挽回するため、2021年に新設する「デジタル庁」の関連予算を計上しました。省庁別に進めてきたシステム開発・整備を一括管理し運用経費の削減や連携を進めます。自治体システムの統一やマイナンバーカードの普及に使う財源も確保しました。
デジタル庁は21年9月1日に設立します。IT関連のうち、システム分野の予算を段階的にデジタル庁に一元化します。
社会保障関係費、
過去最大の35.8兆円
社会保障関係費
一般会計総額の3割超を占める社会保障関係費は20年度当初に比べ0.3%増の35兆8421億円に達し、過去最大となります。医療や介護などの高齢化に伴う自然増は4800億円と見込みます。薬価改定で1000億円抑制し、実質的な伸びは3500億円にとどめました。介護報酬の改定率を0.7%増とするほか、待機児童の解消に向け保育の受け皿を整備します。
防衛費、 新型ミサイル強化
防衛費
防衛関係費は5兆3422億円と9年連続で増えました。7年連続で過去最大となります。中国や北朝鮮の軍事力向上に対処するため新型ミサイルの開発を強化します。国産の「12式地対艦誘導弾」の射程を伸ばす開発に335億円を充てます。5年間で完成させ、敵の攻撃の圏外から対処できる「スタンド・オフ・ミサイル」として配備します。2035年の配備をめざす次期戦闘機の開発には20年度比5倍の576億円をかけます。
国債費、増発で膨張
一般会計国債費
- 公債利子等
- 公債等償還費
- 借入金償還費・利子、国債事務取扱費等
- 総額
国債の増発に頼った財政出動で膨張するのが国債費です。過去に発行した国債の償還や利払いなどにかかるお金のことで、21年度予算案に23兆7588億円を計上しました。20年度当初予算より4072億円大きく、当初予算ベースで5年ぶりに過去最大を更新します。予算案全体の2割強を占める規模となります。
国債費の膨張は近年の発行残高の増加が主因です。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた3度の補正予算の編成で、20年度の新規国債発行も当初予定の32.6兆円から過去最大の約112.6兆円に膨らみました。21年度末の普通国債発行残高は990兆円を超える見込みです。