中国・ファーウェイ

スマホ分解
見えた相互依存

ファーウェイP30 Pro解剖

米国の制裁を受けている中国の華為技術(ファーウェイ)はスマートフォンの世界販売台数でシェア2位。最新機種をみると、米メーカーの部品が16%(金額ベース)を占めている。ファーウェイが米製などのスマホ部品を使えず生産が落ち込んでいくほど、関係する日本や韓国、台湾の企業も影響を受けることになる。 (スマホ関税、日米韓に打撃 ファーウェイ部品の5割 ) (スマホ関税、日米韓に打撃 ファーウェイ部品の5割 )

P30 Proに使われている部品のコスト内訳

合計金額換算
363.83
ドル
合計部品数
1631
米国59.36ドル
16.3%
15部品
0.9%
中国138.61ドル
38.1%
80部品
4.9%
日本83.71ドル
23.0%
869部品
53.2%
韓国28ドル
7.7%
562部品
34.4%
台湾28.85ドル
7.9%
83部品
5.0%

重要部品には中国以外の企業も並ぶ

順位部品メーカーの国・地域や社名金額換算
1位有機ELディスプレー中国・京東方科技集団(BOE)84ドル
2位DRAM米マイクロン・テクノロジー40.96ドル
3位アプリケーション
プロセッサー
中国・海思半導体(ハイシリコン)30ドル
4位NAND型
フラッシュメモリー
韓国・サムスン電子28.16ドル
5位ボディーパネル台湾20ドル
6位リアカメラ日本・ソニー15.15ドル
7位フロントカメラ日本・ソニー12.16ドル
8位ラージIC米国、日本9ドル
9位通信半導体米スカイワークス8ドル
10位リチウムイオン電池香港・アンプレックステクノロジー
(TDK)
8ドル
11位リアカメラ日本・ソニー7.6ドル
12位通信半導体中国・ハイシリコン5.2ドル
13位指紋センサー中国5ドル
14位TOFカメラ日本・ソニー4.76ドル
15位リアカメラ日本・ソニー3.04ドル
16位通信半導体米クォルボ3ドル
17位アンテナスイッチ日本3ドル
18位タッチパネル日本・アルプスアルパイン3ドル
19位ボディーカバー台湾3ドル
20位アンテナ共用器日本・TDK、太陽誘電、京セラ2.75ドル
21位カバーガラス米コーニング2.7ドル
22位タッチパネル
コントローラー
中国・深圳市匯頂科技2.3ドル
23位キャパシタ日本、韓国、台湾2.01ドル
-ワイヤレス給電米IDT(ルネサスエレクトロニクス)-
-オーディオアンプ米シーラス・ロジック-
-MIPIスイッチ米テキサス・インスツルメンツ-
-プリント基板台湾・華通電脳-
-フィルター日本・村田製作所-
-電子コンパス日本・旭化成-
-水晶発振器日本・京セラ-
-水晶振動子日本・エプソン、日本電波工業-
-バッテリー端子日本・ヒロセ電機-

(注)メーカーや金額換算はフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズが推定。国・地域名だけの部品はメーカー名が不明。リアカメラなど名称が同じでも金額換算の異なる複数を使っているものもある。

各部品の機能は?

スマートフォンはグローバルサプライチェーンで生産される製品の象徴といえる。ファーウェイ最新機種の部品は1631点。主要部品の機能を解説する。

有機ELディスプレー

中国・京東方科技集団(BOE)

有機物による発光ダイオードを画素に使ったディスプレー。画素が自ら発光するため、バックライトが不要になり、薄く軽くしやすい。また曲面に使ったり、折り曲げたりする加工にも対応しやすい利点がある。

DRAM

米マイクロン

電子機器で扱うデータを記憶する半導体メモリー。アプリやOS(基本ソフト)などのプログラムを実行する際に情報を一時的に記憶する。データを出し入れする「読み書き速度」に優れ、頻繁にやり取りするデータの一時保存に使う。電源を切るとデータが消えるため、NAND型フラッシュメモリーによる記憶装置と併用する。

アプリケーションプロセッサー
(DRAMの下に積層)

中国・海思半導体(ハイシリコン)

パソコンの「CPU」に相当するスマホの心臓部。OSやアプリを実行する。大半は英アームが開発した設計情報を利用している。米クアルコムの「スナップドラゴン」や、米アップルの「A12バイオニック」などがこれに当たる。

NAND型フラッシュメモリー

韓国・サムスン電子

通電していなくてもデータを保持できる半導体。このためスマホでは写真を記録したり、アプリを保存したりする場合に使われる。回路がシンプルで集積度を上げやすい。半面DRAMに比べ読み書きの速度が桁違いに遅い。

カメラ

日本・ソニー

広角や望遠など機能の異なる複数個を1台のスマホに配置することが多い。人工知能(AI)技術を利用してさまざまな画像処理を施せるようにしている。例えば一眼レフのようなボケを再現したり、白飛びや黒つぶれしないよう処理したりする。

リチウムイオン電池

香港・アンプレックステクノロジー

+極と-極の間をリチウムイオンが移動することにより、充放電できる電池。継ぎ足し充電をしても充放電の容量が劣化しない、大容量化しやすいなどの理由から普及した。スマホに使われる電池はリチウムポリマー電池とも呼ばれる。

指紋センサー

中国

指紋を読み取るためのセンサー。指紋の凹凸を検知して指紋のパターンを識別する。接触部と非接触部で電気の流れかたが違う点に着目した静電容量センサーや、超音波を使ったセンサー、光学式センサーなどがある。

アンテナ共用器

日本・TDK、太陽誘電、京セラ

一つのアンテナを送信と受信の際に切り替えるために使う。送信周波数と受信周波数の違いに応じて、フィルターで遮断して切り替える。デュプレクサーとも呼ぶ。

電子コンパス

日本・旭化成

磁気を検知するセンサーを使って方位を検知する。単純な磁気の強さだけでなく、スマホ内などの磁気の影響を排除して方位を算出する。

代替先探し、
主要部品の世界シェアは?

米国はファーウェイに対する事実上の輸出禁止措置を取った。このため米国メ-カー製や、米国由来の技術の市場価値が25%以上を占めたりする部品は使えない。ファーウェイは代替先を探す必要がある。

DRAM(出荷額ベース)

出所:英IHSマークイット

NAND型フラッシュメモリー(出荷額ベース)

出所:英IHSマークイット

リチウムイオン電池(携帯用、個数ベース)

出所:テクノ・システム・リサーチ

指紋センサー(個数ベース)

出所:フォーマルハウト

プリント基板(個数ベース)

出所:フォーマルハウト

カメラ用CMOSセンサー
(スマホ以外も含む、出荷額ベース)

出所:英IHSマークイット

有機ELディスプレー(スマホ以外も含む,出荷ベース)

出所:英IHSマークイット

基本ソフト(OS)(出荷台数ベース)

出所:米IDC

原材料生産は中国に存在感

スマホなどの部材には欠かせないレアメタル(希少金属)。特にレアアース(希土類)は中国が世界生産の8割を握る。中でもバイブレーション機能などのモーター磁石に添加する。レアメタルでも、ディスプレーに使われるインジウムの生産の4割以上は中国が占める。リチウムイオン電池の正極材として不可欠なコバルトの生産量世界一はコンゴ民主共和国だが、精錬では中国が世界一。2017年の精錬量は世界の6割を占めるなど、素材面での中国の存在感は際立っている。(以下出所は米地質調査所)

素材:レアアース
順位生産国シェア
1位中国79%
2位豪州15%
3位ロシア2%

ディスプレー(液晶・有機)

品目:透明電極 素材:インジウム
1位中国43%
2位韓国30%
3位日本10%

バッテリー

品目:リチウムイオン電池 素材:リチウム
1位豪州43%
2位チリ33%
3位アルゼンチン13%
品目:リチウムイオン電池正極材 素材:コバルト
1位コンゴ民主共和国58%
2位チリ5%
豪州5%

通信

品目:無線モジュール(RF部品) 素材:ガリウム(新地金)
1位中国92%
2位ロシア・カザフスタン4%
3位日本1%
取材協力
フォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ
編集・制作
緒方竹虎、北郷 達郎、佐藤雅哉、鎌田倫子、深野尚孝
デザイン・マークアップ
伊藤岳、久能弘嗣

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