即席麺1000億食の攻防

日清食品の創業者、故・安藤百福氏がチキンラーメンを生み出して60年。いまや即席麺は世界で年間1000億食ほどの胃袋を満たすまでに成長した。食文化に麺が定着しているアジアはもちろん、欧米やアフリカなどでも地域性にあった味わいの即席麺が浸透した。世界の即席麺市場をけん引する企業が集まる日本で、どのように即席麺が成長し、変化を遂げていったのか見てみよう。

1

ロングセラーは10年周期

1958

日清食品の安藤百福氏が味付き袋麺「チキンラーメン」を開発

故・安藤百福氏が即席麺の開発に心血を注いだ研究小屋を再現した

1962

明星食品や東洋水産などスープ別添えタイプを発売

1965

即席麺の生産食数25億食に。参入相次ぎ360社(推定)が競争

1966

サンヨー食品が「サッポロ一番しょうゆ味」発売

サッポロ一番ブランドは袋麺で確固たる地位を占める

1968

日清食品が「出前一丁」発売

出前一丁も50周年を迎える定番商品の一つ


熱風で乾燥させる「ノンフライ麺」登場

1971

日清食品がカップ麺「カップヌードル」を投入

カップヌードルは国内カップ麺市場をけん引する存在だ

1973

オイルショックで即席麺の値上げ相次ぐ

1978

東洋水産が「赤いきつね」を商品化

赤いきつねと緑のたぬきは東洋水産の看板ブランドの一つ

1988

エースコックが「スーパーカップ」を投入

スーパーカップはボリューム感で若者層の支持を得た

1989

カップ麺の生産量が袋麺を上回る


生タイプ即席麺が登場

1997

第1回世界ラーメンサミット開催

2005

日清食品と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同開発した「スペース・ラム」、宇宙で実食

故・安藤百福氏は宇宙で食べられる即席麺開発にも取り組んだ

2012

世界販売量が初めて1000億食を突破(世界ラーメン協会推計)

日本即席食品工業協会や即席麺各社などの資料をもとに作成

チキンラーメン以外にも今年、50周年や40周年を迎える商品は多い。1968年には日清食品の「出前一丁」や、袋麺3強の一角「サッポロ一番みそラーメン」が登場。78年には「マルちゃん」で知られる東洋水産の「赤いきつね」、88年にはボリュームで支持を得たエースコックの「スーパーカップ」。10年おきにロングセラー品が生まれ、競争の中で商品が磨かれていった。

2

激戦 袋麺三つどもえ

金額シェア
(袋5食、日経POS情報調べ)

  • サンヨー サッポロ一番 塩らーめん
  • サンヨー サッポロ一番 みそラーメン
  • 日清食品 チキンラーメン

競争の激しい袋麺の売上高シェアで上位を争うのが、日清食品のチキンラーメンと、サンヨー食品のサッポロ一番の塩らーめん、みそラーメンだ。純粋なしょうゆ味は「ライバルが多く味の好みも地域差がある」(サンヨー食品)ため、各商品に人気が分散している。チキンラーメンは2003年、味付き乾燥麺の真ん中に卵を落とすためのくぼみ「たまごポケット」をつけた。この工夫により、03年に一時的にシェアがはね上がっている。

3

小麦、震災…世相映す実売価格

平均価格
(袋5食、日経POS情報調べ)

  • 東洋水産 マルちゃん 塩ラーメン
  • サンヨー サッポロ一番 みそラーメン
  • 日清食品 チキンラーメン

即席麺は価格の変動が比較的小さく、1991年と現在の実売価格の平均をみるとほとんど変化がない。だが価格が大きく動くこともある。2008年には米国の作付面積減少と欧州・豪州の不作が重なり、原料となる小麦が高騰。即席麺各社も値上げを余儀なくされた。11年の東日本大震災では、備蓄食としての即席麺需要が高まった。現在は物流費高騰という変動要因も出てきている。

4

カップ優勢、袋の巻き返しは?

千人当たり金額
(日経POS情報調べ)

  • 即席カップ中華そば
  • 即席袋中華そば

即席麺の流れを大きく変えたのがカップ麺の登場だ。代表格のカップヌードルが誕生したのが1971年。お湯を注いで数分待つだけで食べられる簡便性は、個食化が進む社会変化も追い風となり、日経POS情報のデータでも99年以降は完全に袋麺を凌駕(りょうが)した。ただ袋麺も一手間を加えて「器で食べるスープ代わり」といった食べ方を提案し、共働き世帯やシニア層を取り込み巻き返しを狙う。

5

定番の強さ際立つ

全商品ランキング
2018年7月

袋麺
1

サンヨー

サッポロ一番 塩らーめん(5食)

サッポロ一番 塩らーめん

100g 5食

千人当り金額

252.8

2

日清食品

チキンラーメン(5食)

チキンラーメン

85g 5食

230.2

3

サンヨー

サッポロ一番 みそラーメン(5食)

サッポロ一番 みそラーメン

100g 5食

220.8

4

東洋水産

マルちゃん 正麺 醤油味(5食)

マルちゃん 正麺 醤油味

105g 5食

104.2

5

ハウス

うまかっちゃん 九州の味(5食)

うまかっちゃん 九州の味

94g 5食

96.8

6

日清食品

出前一丁 5食パック

出前一丁 5食パック

510g

79.8

7

日清食品

ラ王 醤油 5食パック

ラ王 醤油 5食パック

510g

76.3

8

明星

チャルメラ しょうゆラーメン(5食)

チャルメラ しょうゆラーメン

97g 5食

72.0

9

日清食品

チキンラーメン アクマのキムラー 具付き 3食パック

チキンラーメン アクマのキムラー 具付き 3食パック

264g

64.4

10

農心

辛ラーメン(3食)

辛ラーメン

120g 3食

61.9

カップ麺
1

日清食品

カップヌードル

カップヌードル

77g

千人当り金額

419.3

2

日清食品

カップヌードル シーフードヌードル

カップヌードル シーフードヌードル

75g

334.8

3

日清食品

カップヌードル カレー

カップヌードル カレー

87g

219.2

4

日清食品

カップヌードル レッドシーフードヌードル

カップヌードル レッドシーフードヌードル

75g

149.0

5

日清食品

麺職人 しょうゆ

麺職人 しょうゆ

89g

109.0

6

東洋水産

マルちゃん 麺づくり 鶏ガラ醤油

マルちゃん 麺づくり 鶏ガラ醤油

97g

108.0

7

日清食品

カップヌードル シーフードヌードル ガーリックシュリンプ味

カップヌードル シーフードヌードル ガーリックシュリンプ味

72g

89.8

8

日清食品

チキンラーメン

チキンラーメン

85g

80.8

9

日清食品

カップヌードル チリトマトヌードル

カップヌードル チリトマトヌードル

76g

77.3

10

サンヨー

サッポロ一番 カップスター しょうゆ

サッポロ一番 カップスター しょうゆ

72g

74.4

出典は日経POS情報。商品名は日経商品マスターを参考にした。正式な商品名と一部表記が異なることがある

即席麺の7月のランキングをみると、ロングセラー商品の強さが浮き彫りになる。袋麺で3強に続くのが、競合商品の多いしょうゆ味でトップにたつ東洋水産の「マルちゃん 正麺 醤油味」だ。カップ麺はトップ10の6商品を占めるカップヌードルブランドが際立つ。

6

一工夫が価格力の支え

全商品ランキング(特売比率)
2018年7月

袋麺
1

三菱食品

S&V おやつラーメン チキン味(12食)

S&V おやつラーメン チキン味

12食

特売比率

25.0%

2

日清食品

マグヌードル コンソメしょうゆ味2食・シーフード味2食

マグヌードル コンソメしょうゆ味2食・シーフード味2食

96g

38.5%

3

サンヨー

サッポロ一番 塩とんこつらーめん(5食)

サッポロ一番 塩とんこつらーめん

97g 5食

38.6%

4

サンヨー

サッポロ一番 みそラーメン 旨辛(5食)

サッポロ一番 みそラーメン 旨辛

100g 5食

42.7%

5

日清食品

チキンラーメン

チキンラーメン

85g

46.6%

6

日清食品

お椀で食べるチキンラーメン 3食パック

お椀で食べるチキンラーメン 3食パック

93g

47.1%

7

農心

辛ラーメン

辛ラーメン

120g

47.9%

8

日清食品

お椀で食べるカップヌードル 3食パック

お椀で食べるカップヌードル 3食パック

96g

49.1%

9

日清食品

ラーメン屋さん 札幌みそ味(5食)

ラーメン屋さん 札幌みそ味

88g 5食

51.0%

10

日清食品

チキンラーメン ミニ 3食

チキンラーメン ミニ 3食

20g 3食

51.8%

カップ麺
1

サンヨー

サッポロ一番 創味シャンタン かに玉風醤油ラーメン

サッポロ一番 創味シャンタン かに玉風醤油ラーメン

85g

特売比率

21.7%

2

サンヨー

サッポロ一番 創味シャンタン 八宝菜風塩ラーメン

サッポロ一番 創味シャンタン 八宝菜風塩ラーメン

83g

22.3%

3

日清食品

カップヌードル シーフードヌードル ガーリックシュリンプ味

カップヌードル シーフードヌードル ガーリックシュリンプ味

72g

28.7%

4

日清食品

カップヌードル 60周年記念

カップヌードル 60周年記念

77g

40.1%

5

日清食品

ラ王 背脂コク醤油

ラ王 背脂コク醤油

115g

43.1%

6

日清食品

カップヌードル シーフードヌードル 60周年記念

カップヌードル シーフードヌードル 60周年記念

75g

45.0%

7

日清食品

カップヌードル トムヤムクンヌードル

カップヌードル トムヤムクンヌードル

75g

46.5%

8

サンヨー

サッポロ一番 ポケモンヌードル しょうゆ味 シール1枚付(栄養機能食品)

サッポロ一番 ポケモンヌードル しょうゆ味 シール1枚付

38g 栄養機能食品

50.3%

9

ヤマダイ

ニュータッチ 凄麺 京都背脂醤油味

ニュータッチ 凄麺 京都背脂醤油味

124g

51.0%

10

日清食品

カップヌードル 欧風チーズカレー

カップヌードル 欧風チーズカレー

85g

51.2%

出典は日経POS情報。商品名は日経商品マスターを参考にした。正式な商品名と一部表記が異なることがある

特売比率が比較的低い商品では、定番商品に加えて、人気食品やキャラクターとのコラボなど「プラスアルファ」の価値を打ち出す商品もずらり。故・安藤百福氏をパッケージデザインに取り入れたカップヌードルも特売比率が比較的低い。ランキングには韓国の「辛ラーメン」も並んでいる。

7

シニア狙い、健康・少なめ台頭

新商品ランキング
2018年7月

袋麺
1

日清食品

チキンラーメン アクマのキムラー 具付き 3食パック

チキンラーメン アクマのキムラー 具付き 3食パック

264g

千人当り金額

64.4

2

日清食品

お椀で食べるカップヌードル 3食パック

お椀で食べるカップヌードル 3食パック

96g

30.8

3

日清食品

お椀で食べるチキンラーメン 3食パック

お椀で食べるチキンラーメン 3食パック

93g

26.4

4

ハウス

うまかっちゃん 赤辛

うまかっちゃん 赤辛

92g

5.5

5

大黒

もちうま 醤油ラーメン

もちうま 醤油ラーメン

5食

2.3

6

寿がきや

ドゥエイタリアン監修 らぁ麺フロマージュ 2食

ドゥエイタリアン監修 らぁ麺フロマージュ 2食

324g

2.2

7

大黒

もちうま 味噌ラーメン(5食)

もちうま 味噌ラーメン

5食

1.8

7

サンヨー

サッポロ一番 鶏白湯らーめん(5食)

サッポロ一番 鶏白湯らーめん

95g 5食

1.8

9

サンヨー

サッポロ一番 中華そば(5食)

サッポロ一番 中華そば

89g 5食

1.7

10

日清食品

ラ王 醤油(5食)

ラ王 醤油

102g 5食

1.6

カップ麺
1

日清食品

カップヌードル シーフードヌードル ガーリックシュリンプ味

カップヌードル シーフードヌードル ガーリックシュリンプ味

72g

千人当り金額

89.8

2

日清食品

あっさり少なめカップヌードル

あっさり少なめカップヌードル

57g

51.1

3

日清食品

あっさり少なめカップヌードル シーフード

あっさり少なめカップヌードル シーフード

60g

49.9

4

サンヨー

サッポロ一番 創味シャンタン かに玉風醤油ラーメン

サッポロ一番 創味シャンタン かに玉風醤油ラーメン

85g

41.9

5

サンヨー

サッポロ一番 創味シャンタン 八宝菜風塩ラーメン

サッポロ一番 創味シャンタン 八宝菜風塩ラーメン

83g

41.8

6

日清食品

カップヌードル スモーキーチリしょうゆ味

カップヌードル スモーキーチリしょうゆ味

77g

39.0

7

日清食品

カップヌードル 60周年記念

カップヌードル 60周年記念

77g

35.1

8

日清食品

あっさり少なめカップヌードル カレー

あっさり少なめカップヌードル カレー

70g

32.3

9

日清食品

カップヌードル シーフードヌードル 60周年記念

カップヌードル シーフードヌードル 60周年記念

75g

29.5

10

日清食品

カップヌードル 肉食リッチ 贅沢肉盛り担々麺

カップヌードル 肉食リッチ 贅沢肉盛り担々麺

78g

27.7

出典は日経POS情報。商品名は日経商品マスターを参考にした。正式な商品名と一部表記が異なることがある

2018年春以降に発売の新商品のトップに共通するのは広告戦略の巧みさだ。日清食品が人気キャラクター「ひよこちゃん」を大胆に変身させたり、謎肉という言葉で耳目を集めたりと、SNSもフル活用した戦略で若者層を取り込んだ。2位以下で目立つのは「お椀(わん)で食べる」「あっさり少なめ」などシニア層を意識した言葉。主要消費者層が40~50歳台で、食シーンにあわせた商品が必要になっている。

取材・制作
加藤貴行、長縄雄輝、久能弘嗣

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