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上昇続く地価 地域格差も鮮明

2020年1月1日時点の公示地価は全国平均で1.4%のプラスとなり、5年連続で上昇した。低金利に下支えされた不動産投資や住宅取得が好調を維持した。訪日客の恩恵が続く有名観光地や再開発が続く都市部で高い伸びを示す一方、マイナス圏から抜け出せない地方も少なくない。地域格差は拡大している。

Section 1 豪雨災害の影響は

ほとんどの部屋の電気が消えた武蔵小杉のタワーマンション㊨(2019年10月、川崎市中原区)

2019年の一連の台風災害は宮城や福島、長野などの各県で堤防の決壊を招き、多くの死者を出した。長野市内では住宅地の地価が10%を超える下落率となった地点もあった。市街地で浸水被害が生じた川崎市の武蔵小杉駅周辺などは持ちこたえた。






武蔵小杉 神奈川県川崎市) タワマン街」持ちこたえる


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2010年と2020年の比較

「住みたい街」として子育て世代の人気を集めていた川崎市中原区にある武蔵小杉駅周辺。2019年の台風災害で一部のタワーマンションで浸水被害が発生し、地価への影響が懸念されたが、好調な伸びを続けた。駅北側にある商業地では10%の伸び幅を示し、価格は200万円を超えている。





長野市 千曲川氾濫、地価に爪あと


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2019年と2020年の比較

長野県は2019年秋の台風による千曲川氾濫で浸水した地域の地価の下落が目立った。住宅地で下落率が最も大きかった地点は長野市豊野町豊野で3万2900円と前年比で13.6%下った。従来は一定程度あった土地の需要も被災後はなくなったという。豊野付近では3地点で災害に伴う地価の下落が見られた。





広島市 18年に被害、周縁部厳しく


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2014年と2020年の比較

再開発を背景に堅調な需要が続く広島市で、他区と比べて下落幅が大きい地点が目立つのは安佐北区。2014年8月の広島土砂災害での土石流や崖崩れに加え、18年7月の西日本豪雨でも甚大な被害を受けたことが背景にある。同区では14年と比べ、地価が2~3割下落している住宅地もある。

Section 2 訪日客効果は鮮明

ホテルや別荘が立ち並ぶ北海道倶知安町

7年連続で過去最高を更新する訪日客の恩恵は続いている。北海道のニセコや京都、大阪の有名観光地は引き続き高い伸びを示した。大分県の別府など韓国人客の比率が大きい地域も特段の影響は見られなかった。今後は新型コロナウイルスの感染拡大による経済の下振れが懸念される。





ニセコ 北海道) 1年で5割増、5年で4倍に


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2015年と2020年の比較

好調な観光が地価上昇をけん引している。ニセコでは1月にハイアットが最上級宿泊施設を開業するなど外国資本の投資が盛んだ。リゾート需要を背景に倶知安町の地点が商業地で前年比57%上昇となった。5年間で約4倍となっている。訪日客の増加でホテル需要などが目立つ札幌市も中心部は高い上昇率だが、新型コロナの影響により今後の地価に影響する可能性がある。





京都市 絶大な人気、地価押し上げ


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2012年と2020年の比較

京都府内で2020年も最高価格地となったみずほ銀行四条支店は京都市中心部に位置する。地価は850万円で、12年と比べて2.6倍に達した。同市の外国人宿泊客数は18年に450万人を突破、強固なインバウンド需要が地価を押し上げてきた。ただ20年の市内商業地の平均変動率はプラス11.2%で、前年より2.2ポイント低下した。急激なホテル開発で供給過剰懸念が浮上しており、土地需給は緩みつつある。





別府市 大分県) 日韓関係悪化でも上昇傾向は維持 日韓関係悪化でも 上昇傾向は維持


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2015年と2020年の比較

年間900万人が訪れる大分県別府市。韓国を中心に海外客の人気が高く、市によると訪日客は2018年までの5年間で約3倍となった。商業地は3年連続の上昇で、星野リゾートが高級旅館を建設中の海沿いの北浜地区は伸び率が10%超、JR別府駅周辺も約8%の上昇だ。昨夏以来の日韓関係悪化で頼みの韓国人客は激減したが、上昇傾向はおおむね維持した。とはいえ新型コロナの影響は甚大で「観光地としての別府のブランド力が陰るのでは」との声も出始めている。

Section 3 再開発、
大都市の上昇に弾み

高輪ゲートウェイ駅(東京都港区)

再開発が続く三大都市圏、地方の中核都市も好調が続いている。低金利環境に支えられた住宅取得や、働き方改革の流れを受けたオフィス需要の高まりもけん引役だ。高輪ゲートウェイ駅の開業で利便性向上が期待される東京・港区や、地方圏でも札幌や福岡は勢いがある。地方の県庁所在地でも伸び幅が拡大する動きが続いているが、今回の上昇局面でも浮上のきっかけをつかめない地域も多い。





東京都心部 やまぬ槌音、地価に勢い


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2003年と2020年の比較

3月14日に開業した「高輪ゲートウェイ駅」に近い調査地点(港区高輪2丁目・商業地)では、新駅設置を前提とした再開発計画が浮上した2003年と比べて公示価格が2.5倍となった。隣の品川駅が27年に開業を予定するリニア中央新幹線の始発駅となるなど、さらなる利便性向上が期待され、マンション需要の高まりから周辺の住宅地でも地価が上昇している。





博多・天神 福岡市) 人呼ぶ力に磨き


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2013年と2020年の比較

九州最大の繁華街、福岡市の天神では商業施設「天神コアビル」の地価が1100万円と、1000万円の大台を超えた。市は容積率とビルの高さ制限を緩和して再開発を促しており、天神コアも隣接する2軒のビルとの一体再開発で西日本最大級のフロア面積を持つオフィスビルになる。地価は高さ制限緩和前の2013年から9割上昇した。市は19年にJR博多駅周辺での再開発促進策も発表。福岡市内の2極で九州の地価上昇をけん引しそうだ。





青森市 にぎわいと地価は戻るか


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2017年と2020年の比較

青森市などが進める中心市街地活性化策が効果を表しつつあるが、地価上昇は限定的だ。青森駅から延びる商店街の調査地点はようやく値上がりに転じたものの1~3%にとどまった。2016年に底値となり17~19年と横ばいが続いていた。18年に市役所の窓口部門などが駅前のビル「アウガ」に移り人通りが増えたことが反転の要因だが、大きく地価を押し上げるには至らない。周辺で再開発は進むが、福岡のような大規模なものではなく、上昇率は明暗を分けている。

新型コロナに懸念
曇る先行き
平均して5年連続の上昇となった地価は、訪日客増加などで潤った2019年の日本経済の姿を映す。地方は多くの県庁所在地で伸びた一方、人口が流出する地点はマイナスが目立つ。
今後は新型コロナウイルスの感染が最大の懸念となる。不動産は株式などに比べれば価格への反映に時間がかかるため、短期間で終息に向かえば影響は限定的だ。しかし想定以上に経済の下振れが深刻となれば無傷では済まされず、地価の先行きは曇る。
編集
小川和広、友山宏済、桑原健、佐藤賢
デザイン
渡辺健太郎
マークアップ
東條晃博

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