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コロナ禍 全国の地価揺らす

新型コロナウイルス感染症が地価を押し下げている。3月23日に発表された2021年1月1日時点の公示地価は全用途の全国平均が6年ぶりに下がった。訪日客の増加や緩やかな景気の回復で上昇傾向にあったコロナ前と様相は一変。外出自粛や時短営業で商業地を直撃した。

Section 1
3大都市圏
0.7%の下落
8年ぶり減
3大都市圏、0.7%の下落 8年ぶり減

東京・銀座(山野楽器前)

新型コロナウイルスは密度の高い3大都市圏に大きな影響を与えた。全体では0.7%のマイナスと8年ぶりの下落で、商業地だけに限ると1.3%の下落だった。最高価格の東京・銀座の山野楽器銀座本店は7.1%の下落に転じ、20年に商業地トップを記録した大阪圏は、1.8%の下落と三大都市圏の中で下落率が最大だった。21年に入ってからもコロナの影響は払拭できておらず、先行きは見通しにくい。






東京都心 最高地点の銀座、値下がりに転じる 最高地点の銀座、 値下がりに転じる


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2020年と2021年の比較

中央区銀座4−5−6

※価格は1㎡あたり

21年の公示地価で最高額となった東京都中央区銀座4丁目の山野楽器銀座本店。伸び率は前年の0.9%から一転、7.1%の下落に転じた。銀座周辺の賃料もこれまで増加傾向だったが、都心の繁華街は外出自粛で客足が遠のいた。足元では店舗の撤退も相次ぐ。訪日客需要で上昇を続けていた都心商業地の地価に新型コロナの逆風が吹き付けている。





大阪 商業地の下落率、都道府県で最大 商業地の下落率、 都道府県で最大


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2020年と2021年の比較

大阪市中央区道頓堀1−6−10

※価格は1㎡あたり

大阪府の商業地は2.1%の下落となった。全都道府県中、最大の下落率だ。とりわけ訪日客の増加で地価の上昇が続いていたミナミ(難波・心斎橋エリア)は下落が鮮明。1920年創業の老舗ふぐ料理店「づぼらや」は20年9月に100年の歴史に幕を閉じたが、同店のある大阪市中央区道頓堀1丁目は20年の24%上昇から、今年は28%の下落に転じた。





名古屋 駅前の再開発が減速、地価に波及 駅前の再開発が減速、 地価に波及


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2020年と2021年の比較

名古屋市中区栄4−13−15

※価格は1㎡あたり

名古屋では商業地を中心に下落が目立つ。愛知県では人口調査を始めた1956年以来、初めて減少に転じ、経済縮小の影響が地価にも波及している。名駅周辺の高層ビル建設計画を予定していた名古屋鉄道は今後の需要の変化を見極めるため、計画を見直すと表明した。住宅地はマンション需要の高い中区など一部で地価上昇の動きがある。

Section 2
観光客消えた
地方都市
観光客消えた地方都市

金沢市(金沢駅前)

地方の観光都市は新型コロナウイルスの感染拡大で訪日外国人らが激減し、街なかのにぎわいも薄れた。リゾート投資が続くニセコは地価上昇が続くものの、ペースは大幅に減速。那覇市も商業地、住宅地ともに伸び率が鈍化した。北陸新幹線の開通効果もあって観光客を伸ばしてきた金沢市は値下がりに転じた。





金沢市 金沢駅前、10年ぶり値下がり 金沢駅前、 10年ぶり値下がり


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2020年と2021年の比較

金沢市本町2−16−16

※価格は1㎡あたり

北陸新幹線開業で多くの観光客を集めた金沢市も新型コロナ禍の影響を受けている。北信越5県の最高価格地点である金沢駅前の変動率は前年比6.4%減で、2011年以来10年ぶりに下落に転じた。繁華街の中心地として知られる片町2丁目は10%近く下がり、石川県内では下落幅が最も大きかった。主要観光地の近江町市場や金沢城公園の周辺も落ち込んだ。





那覇市 沖縄県) 繁華街に空き店舗、下落地点も 繁華街に空き店舗、 下落地点も


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2020年と2021年の比較

那覇市久茂地3−1−1

※価格は1㎡あたり

沖縄県内の商業地は2020年は13.3%上昇と全国トップの伸び率だったが、コロナ禍で観光需要が減退。21年は0.2%上昇とほぼ横ばいにとどまった。那覇市の繁華街の国際通りでは土産店が閉店し、空き店舗のままになっている区画も。那覇市中心部では下落や横ばいの地点も目立ち始めた。





ニセコ 北海道) 続く開発投資、地価下支え 続く開発投資、 地価下支え


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2020年と2021年の比較

虻田郡倶知安町字山田83番29

※価格は1㎡あたり

多くの外国人を集めていた北海道ニセコ地区は新型コロナウイルスの感染拡大で一転、客足が激減。上昇率は昨年に続き全国トップを保ったが、伸び率は鈍化した。それでもコロナ収束後を見据えた開発投資は続いており、地価を下支えしそうだ。札幌市はホテルや飲食店の再開発熱が冷め、繁華街すすきのなどで地価が下落に転じた。

Section 3
脱「一極集中
の兆し
脱「一極集中」の兆し

淡路島西岸(パソナグループの関連施設)

コロナ禍で生活様式や働き方を見直す動きが広がり、地価にも影響が出ている。千葉県木更津市はコロナ下でも人口流入が続き、東京湾アクアライン周辺の住宅地が上昇。パソナの本社機能移転が進む兵庫県淡路島も下げ止まりの期待感が出ている。ネット通販拡大により、東京郊外で物流施設の建設用地を物色する動きも活発だ。





淡路島 兵庫県) パソナ移転で下げ止まり期待感 パソナ移転で 下げ止まり期待感


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2020年と2021年の比較

洲本市本町7−3−43

※価格は1㎡あたり

パソナグループが本社機能を移し始めた兵庫県の淡路島。2024年までに約1200人の社員とその家族らが島に移り住む計画だ。2021年秋から22年にかけて新しい社屋や社宅が完成する見通しで「大移動」は今後、加速する。今のところ地価に目立った動きはないが、社員らの利用を当てにした商業施設の進出が活発になれば、地価の下落に歯止めがかかる可能性もある。





木更津市 千葉県) コロナ禍でも人口増、住宅地上昇 コロナ禍でも人口増、 住宅地上昇


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2015年と2021年の比較

木更津市金田東4丁目19番5

※価格は1㎡あたり

東京湾アクアライン出入り口に近い千葉県の木更津市や袖ケ浦市で住宅地の値上がりが続いている。木更津市金田東は東京圏でトップの上昇率を記録。都内や神奈川県へのアクセスが良い割に地価水準が安く、コロナ禍でも人口流入が続く。米コストコ日本法人の木更津市への本社移転も決まり、人口増に弾みが付きそうだ。





羽村市 ネット通販拡大、物流用地が上昇 ネット通販拡大、 物流用地が上昇


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2020年と2021年の比較

羽村市栄町3丁目5番1外

※価格は1㎡あたり

「巣ごもり消費」によるネット通販拡大で、東京郊外の物流施設需要は一段と伸びている。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)のインターに近く、物流に適した東京都羽村市栄町は7年連続上昇。近隣の工場跡地にも大型物流施設が建つなど開発が進む。千葉県や神奈川県の高速道周辺も引き合いが強く、物流用地の値上がりは続きそうだ。

行き場探す投資マネー
地価回復は
ワクチン普及がカギ
地価回復はワクチン普及がカギ
新型コロナウイルスの感染拡大で経済は世界的に縮小し、投資マネーは行き場を失っている。市場が急速に縮む可能性は小さい。21年に入ってからはワクチン接種も始まり、いかにコロナの感染を抑止できるかが今後の地価動向のカギを握る。
編集
内山千尋、下村恭輝、佐藤賢
デザイン
渡辺健太郎
マークアップ
東條晃博

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