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地価回復 コロナの爪痕なお

都心商業地↓大阪・梅田↓
名古屋↑軽井沢↑

新型コロナウイルス禍の影響が徐々に和らぎ、地価は回復に転じた。3月22日に発表された2022年1月1日時点の公示地価は全国平均が2年ぶりに上昇した。テレワークの広がりなど暮らしの変化が郊外の住宅地の上昇に表れた。東京都心の商業地は下落が続き、コロナの爪痕も残る。

Section 1
3大都市圏、
まだらもようの上昇
3大都市圏、
まだらもようの上昇

東京・丸の内(丸の内ビルディング)

3大都市圏の地価はコロナ危機からの日本経済の持ち直しの動きを映し出した。住宅地や商業地などを合わせた全用途平均は0.7%上がり、プラス幅は全国平均の0.6%を上回った。回復は一様ではなく、商業地は東京圏と名古屋圏が上昇に転じたのに対し、大阪圏は横ばいにとどまった。訪日客需要に依存していた繁華街や観光地はにぎわいが戻っていない。






東京 都心3区の商業地、2年連続で下落 都心3区の商業地、
2年連続で下落


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2021年と2022年の比較

千代田区丸の内2−4−1

※価格は1㎡あたり

東京23区の商業地は0.7%上昇した。中野など20区がプラスになった一方、千代田・中央・港の都心3区は前年に続いて下落した。千代田区の中心部、東京駅前の丸の内ビルディングも1.3%のマイナスだった。なおコロナの影響が尾を引き、飲食や観光の客足が戻りきっていない。テレワークの普及などでオフィス需要も勢いに欠ける。空室率が高止まりし、賃料も低迷が続いている。





大阪府 府内最高値の土地、2年連続の下落 府内最高値の土地、
2年連続の下落


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2020年と2022年の比較

大阪市北区大深町4−20

※価格は1㎡あたり

大阪府の商業地は0.2%の下落だった。大阪市北区の梅田地区にある「グランフロント大阪南館」は2年連続で府内最高値だったが、3.5%のマイナスで2年連続の下落となった。一等地のオフィス需要は比較的堅調で下落率は前年の8.4%から縮小したものの、新型コロナの影響で店舗やホテルの収益性が低下したことが地価の下落に響いた。





名古屋市 商業地は全16区で下落から上昇へ 商業地は全16区で
下落から上昇へ


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2021年と2022年の比較

名古屋市中区新栄町2丁目13番

※価格は1㎡あたり

名古屋市は商業地の上昇率が3.2%と2年ぶりにプラスに転換した。全16区で下落から上昇に転じ、回復基調が鮮明化している。上昇率トップは建て替えが計画されている「栄第一生命ビルディング」の地点と活発な再開発が地価を押し上げている。住宅地では、名古屋市中心部の中区に隣接する東区の一角で15.8%上昇した。高級マンションの建設が相次ぎ、投資需要が高まっているという。

Section 2
新交通路線、
再開発がけん引役
新交通路線、
再開発がけん引役

宇都宮市

新たな交通路線や再開発が地価を押し上げる地方都市がある。宇都宮駅の東側地域は公共交通網が西側に比べ乏しかったが、2023年春の開業をめざして次世代型路面電車(LRT)の建設が進む。期待の高さから地価上昇が続いている。同じく23年春の開業予定で、プロ野球・日本ハムが本拠地とする新球場の建設が進む北海道北広島市では商業地、住宅地ともに上昇率全国1位の地点が誕生した。





宇都宮市 来春に新線開通、値上がり加速 来春に新線開通、
値上がり加速


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2020年と2022年の比較

宇都宮市ゆいの杜4-21-7

※価格は1㎡あたり

栃木県では宇都宮市内のLRT開通が2023年春に予定される地域で商業地、住宅地とも地価が上昇した。鉄道などがなかった場所へのLRT新設は全国で初めてだ。不動産鑑定士の永井正義氏は「開発が進むJR宇都宮駅周辺のポテンシャルも上がっている」とみる。コロナ禍で在宅時間が増え「より住み心地のよい場所に住宅を購入する動きが増えている」という。





北広島市 北海道) 新球場が導く全国1位の上昇率 新球場が導く
全国1位の上昇率


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2017年と2022年の比較

北広島市美沢3丁目4番8

※価格は1㎡あたり

北広島市には商業地、住宅地ともに2021年比値上がり率が全国トップの地点がある。それぞれ19.6%、26.0%だった。隣接する札幌市との相対的な価格の安さから戸建て住宅やマンションの需要が伸びているうえ、23年に開業予定の新球場や北広島駅周辺の再開発計画も地価を押し上げた。旺盛な住宅需要を背景に石狩市や江別市など札幌近郊自治体の住宅地は値上がりが顕著で、全国の地価上昇率上位10地点は全て北海道だ。





大野城市 福岡県) 大規模な再開発、2ケタ上昇目立つ 大規模な再開発、
2ケタ上昇目立つ


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2013年と2022年の比較

大野城市瓦田2−11−14

※価格は1㎡あたり

福岡県大野城市は隣の福岡市への通勤利便性に優れ、ベッドタウンとして人気が高い。地価がひときわ高くなっている福岡市と比べ割安感がある。今春に西日本鉄道・下大利駅近くに300戸超のマンションやスーパーの複合開発が完成。今後、同駅周辺の高架化に伴い、高架下空間を活用する広場などが整備される計画で、前年度比との比較で10%前後の値上がりが目立つ。

Section 3
在宅勤務の浸透、
価格上昇地域広げる
在宅勤務の浸透、
価格上昇地域広げる

旧軽井沢銀座

都心に比べ割安な住宅環境に人々が集まるのはコロナ禍であっても変わらない。在宅勤務の浸透により通勤時間を気にせずに住宅を探す流れが強まり、価格上昇の地域が広がっているのが2022年の特徴だ。住宅地の軽井沢は夏の避暑地というイメージが強かったが、移住する人が目立ち始めた。新幹線を使えば軽井沢からでも首都圏への通勤が可能だ。千葉県浦安市、東京・多摩地区も値上がり地点が増えた。





軽井沢町 長野県) あこがれの地が住所に あこがれの地が 住所に


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2017年と2022年の比較

北佐久郡軽井沢町大字軽井沢字上御原308番11外

※価格は1㎡あたり

日本を代表する別荘地の長野県軽井沢町は、住宅地・商業地ともに上昇が続く。高所得層の別荘需要に加え、町外からの子育て世代流入が地価を押し上げている。コロナ禍によるテレワークの浸透や、私立学校の開校による教育環境の充実が背景だ。戸建て価格は3000万~5000万円程度が売れ筋で、首都圏の新築マンションや戸建てに比べて割安となっている。





浦安市 千葉県) 東京圏住宅地の上昇率1位 東京圏住宅地の上昇率1位


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2021年と2022年の比較

浦安市高洲3−19−2

※価格は1㎡あたり

東京圏の住宅地で上昇率トップだったのが浦安市高洲。2021年の0.9%から22年は7.7%と上昇率が大きく高まった。最寄りはJR新浦安駅で都心と近いながらも、東京湾に面し、ヤシの木が一帯に広がるリゾート感ある街づくりが特徴だ。新型コロナ禍が続く中、開けた大通りや近くに海が広がる開放的な空間も魅力となり、家族層の需要が増える。現在も大手デベロッパーが低層マンションなどを建設するなど住宅供給が続く。





稲城市 東京都) 区画整理追い風、9年連続上昇 区画整理追い風、 9年連続上昇


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2021年と2022年の比較

稲城市大字東長沼字四号1283番4

※価格は1㎡あたり

東京都の住宅地は1.0%のプラスとなり、回復に転じた。けん引するのは都心部だ。共働きで世帯年収の高い「パワーカップル」が好立地の高級マンションの購入に殺到する。多摩地区など都心に比べて割安感のあるエリアにも消費者の目が向き、地価上昇の波が郊外にも広がる。土地区画整理が進む稲城市は2.3%上がり、前年より上昇幅も拡大した。

地価回復の動向、
米欧の金融政策も影響
地価が再び上向いた勢いを保てるかは見通せない。コロナ禍からの出口に向かう米国は連邦準備理事会(FRB)が15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で3年ぶりの利上げを決め、欧州中央銀行(ECB)も量的緩和の縮小を急ぐ構えだ。ロシアのウクライナ侵攻で世界経済の回復シナリオが下振れする懸念も拭えない。あふれかえる投資マネーが地価を支える構図そのものが変わってしまう可能性もある。
編集
友山宏済、岡部貴典、舘野真治
デザイン
渡辺健太郎
マークアップ
森田優里
プログラム
清水正行

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