ポスト安倍は
どう決まる?
総裁選のしくみと過去の戦い
安倍晋三首相の後継を選ぶ自民党総裁選が8日告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏が立候補した。「ポスト安倍」はどう決まるのか。総裁選のしくみや過去の戦いを見てみる。
総裁選の日程は?

総裁選は8日告示され、3候補は党所属国会議員20人の推薦人名簿など立候補に必要な書類を届け出た。候補者同士の論戦を経て、14日に投開票を迎える。総裁選に勝った候補が総裁に選出される。新総裁は16日に国会で新首相に選出され、新内閣が発足する。
総裁選の仕組みは?
両院議員総会で選出、
党員投票見送り

選び方は2通りある。通常は党所属の国会議員と、全国にいる党員・党友による投票になる。ただし、任期途中の退陣など「緊急」の時は党大会に代わる両院議員総会で後任を決めることができる。今回は緊急のためこのやり方となる。
両院議員総会の場合、党所属の国会議員394人(衆参両院の議長を除く)と47都道府県連の代表各3人が投票をする。国会議員票394票と地方票141票の合わせて535票で争われる。両院総会方式で総裁を選んだ例としては1998年の小渕恵三氏や2001年の小泉純一郎氏、07年の福田康夫氏や08年の麻生太郎氏などがある。


投票で有効投票の過半数を得れば総裁に選ばれる。どの候補も過半数に達しない場合、上位2人の決選投票になる。1956年の総裁選は1回目投票で2位の石橋湛山氏が3位の石井光次郎氏と組む「2位・3位連合」で、1位の岸信介氏を決選投票で制した。
党大会なら地方票の比重は増えた

今回は両院議員総会で選ぶ方式となったが、党大会を開いて決めるやり方もある。任期満了に伴う総裁選で、党所属の国会議員と全国の党員・党友が投票する。国会議員票と党員・党友による地方票の比率は同じとする。自民党の党員数は2019年時点で約109万人いる。この方式を採った場合は国会議員票が394で、党員・党友票も394に換算して合計788票を争うので、地方票の比重は増えたことになる。中堅・若手議員からこの方式を望む声が出たが、執行部は速やかな新型コロナウイルス対応を理由に両院議員総会の方式に決めた。
過去の総裁選は?
2020年の自民党総裁選は令和になって初めての総裁選となる。約8年ぶりの総裁交代で自民党政治は節目を迎える。権力闘争を映す総裁選の歴史を振り返る。(表は敬称略)
2018年総裁選
安倍首相が3選、石破氏は善戦

- 安倍晋三
- 553
- 国会議員票 329
- 地方票 224
- 石破茂
- 254
- 国会議員票 73
- 地方票 181
安倍晋三首相(総裁)が石破茂元幹事長を破って3選を果たした。首相の在任最長記録へ布石を打った。総裁選で石破氏は党員・党友による地方票の45%を得て善戦し、党内にくすぶる安倍氏への不満も垣間見えた。
2012年総裁選
安倍氏が返り咲き、政権交代へ

決選投票
- 安倍晋三
- 108
- 石破茂
- 89
第1回投票
- 安倍晋三
- 141
- 国会議員票 54
- 地方票 87
- 石破茂
- 199
- 国会議員票 34
- 地方票 165
- 町村信孝
- 34
- 国会議員票 27
- 地方票 7
- 石原伸晃
- 96
- 国会議員票 58
- 地方票 38
- 林芳正
- 27
- 国会議員票 24
- 地方票 3
安倍晋三首相は12年総裁選で勝ち、約5年ぶりに総裁に返り咲いた。その後の政権交代と首相再登板につながった。だが総裁選の1回目投票は石破茂元幹事長が安倍氏を上回り、決選投票での逆転勝利だった。
2009年総裁選
再建テーマに、谷垣氏が野党党首

- 谷垣禎一
- 300
- 国会議員票 120
- 地方票 180
- 河野太郎
- 144
- 国会議員票 35
- 地方票 109
- 西村康稔
- 54
- 国会議員票 43
- 地方票 11
衆院選の敗北で野党となった自民党。09年総裁選は自民党をどう再建するかがテーマとなった。新総裁に就いた谷垣禎一氏は3年後、野党党首のまま退いた。
2008年総裁選
麻生氏が大勝、直後の衆院解散見送り

- 麻生太郎
- 351
- 国会議員票 217
- 地方票 134
- 与謝野馨
- 66
- 国会議員票 64
- 地方票 2
- 小池百合子
- 46
- 国会議員票 46
- 地方票 0
- 石原伸晃
- 37
- 国会議員票 36
- 地方票 1
- 石破茂
- 25
- 国会議員票 21
- 地方票 4
麻生太郎氏が大勝した。早期に衆院解散・総選挙に踏み切るつもりだったが、タイミングがずれ込み、1年後の衆院選で民主党に政権を渡すことになる。
2007年総裁選
福田氏が勝利、麻生氏も存在感

- 福田康夫
- 330
- 国会議員票 254
- 地方票 76
- 麻生太郎
- 197
- 国会議員票 132
- 地方票 65
勝ったのは福田康夫氏だったが、予想を上回る得票をした麻生太郎氏が存在感を示した。国会の衆参ねじれで厳しい政権運営を強いられ、首相の座から降りた。
2006年総裁選
「麻垣康三」のうち安倍氏が大勝

- 安倍晋三
- 464
- 国会議員票 267
- 地方票 197
- 麻生太郎
- 136
- 国会議員票 69
- 地方票 67
- 谷垣禎一
- 102
- 国会議員票 66
- 地方票 36
ポスト小泉は「麻垣康三」と呼ばれた。麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫、安倍晋三の4氏で、総裁選は福田氏を除く3人の争いとなった。大差で制した安倍氏だが、1年後に持病の悪化で退陣を余儀なくされる。
2003年総裁選
小泉氏が圧勝で再選

- 小泉純一郎
- 399
- 国会議員票 194
- 地方票 205
- 亀井静香
- 139
- 国会議員票 66
- 地方票 73
- 藤井孝男
- 65
- 国会議員票 50
- 地方票 15
- 高村正彦
- 54
- 国会議員票 47
- 地方票 7
小泉純一郎首相に亀井静香氏、藤井孝男氏、高村正彦氏が挑み、小泉氏が圧勝した。橋本派(現竹下派)は衆院と参院で一致結束した行動をめざしながら挫折した。
2001年総裁選
小泉氏が勝利、派閥政治は終焉

- 小泉純一郎
- 298
- 国会議員票 175
- 地方票 123
- 橋本龍太郎
- 155
- 国会議員票 140
- 地方票 15
- 麻生太郎
- 31
- 国会議員票 31
- 地方票 0
- 亀井静香
本選辞退
小泉純一郎氏が「自民党をぶっ壊す」と叫び、国民人気を集めて勝利した。再登板を狙った橋本龍太郎元首相は敗れ、派閥政治の終焉(しゅうえん)につながった。