なでしこ銘柄は買い?女性活躍の取り組みを探る

 働く女性を後押しする女性活躍推進法が4月に施行された。従業員数301人以上の企業には女性活躍に向けた行動計画の策定や取り組み状況の公表が義務付けられるようになった。働き方を改めて従業員の潜在力を引き出すことは、日本経済の成長戦略に通じる重要テーマ。日経バリューサーチのデータを使い、「なでしこ銘柄」を含めた日本企業の取り組み状況を探った。

女性管理職の比率は
徐々に高まってきたが

 企業の女性登用を測るモノサシの一つが女性管理職の比率だ。東証1部上場企業のうち企業の社会的責任(CSR)報告書などからデータ取得可能な企業を2011年から5年分集計した。女性活躍を成長戦略に据える政府の後押しもあり、5年間で開示企業数は大きく増加。女性の管理職比率が5%以上の企業の比率は11年の約2割から、15年には約4割に増え、女性登用が少しずつ進んできた。それでも、大半の企業は女性管理職比率が5%未満にとどまっており、政府が目標とする「2020年に課長級の女性比率15%」の達成は容易ではない。

女性活躍と業績の関係は?

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16年のなでしこ銘柄45社と、日経バリューサーチからデータが取得可能な東証1部上場企業、合計233社について、女性管理職比率と財務や株価の指標を比べた。総資産利益率(ROA)、自己資本利益率(ROE)、配当性向は直近の実績値で、3月期決算企業は2015年3月期。株価騰落率は年間、4月13日終値ベース

 経済産業省と東証は女性の活躍を業績向上につなげている企業を「なでしこ銘柄」として選出している。女性の活躍を推進することで、多様な市場ニーズに対応し成長力が高まり、経営や業績にも好影響を与える――。こうした考え方から女性活躍は金融市場も注目するテーマだが、実際の関係はどうか。

 16年のなでしこ銘柄45社平均の女性管理職比率は12%で、残り188社の平均7%より高い。経営の効率性を示す自己資本利益率(ROE)でみると、なでしこ銘柄は11%と、残りの企業の平均値(5%)の倍の水準だ。

 もっとも、なでしこ銘柄は各業種のROE上位企業が選ばれているので、指標が優れているのは当然。なでしこ銘柄に限れば女性活躍と好業績が両立して見えるが、全体としては女性登用の目安である管理職比率とROEや株価騰落率などの指標との関係は薄い。日興リサーチセンターの寺山恵社会システム研究副所長は「多くの企業にとって女性活躍の取り組みは緒に就いたばかり。今は管理職の比率が低くても、社員の潜在力を引き出して、業績につなげるのはこれからの課題」と話す。

男性の働き方改革にも課題

  • なでしこ銘柄

16年のなでしこ銘柄45社について、男性社員の育児休暇取得率、「なでしこ銘柄」の選出回数、国内の従業員規模を視覚化した

 なでしこ銘柄は女性活躍に焦点をあてた取り組みとして4年間続いているが、16年の選出企業の開示項目に「男性社員の育児休業取得率」の項目が新たに加わった。

 日本企業は海外と比べて女性活躍の取り組みが遅れているが、家庭を顧みずに働く男性中心の長時間労働が根強いことが原因のひとつとされている。男性の働き方改革のバロメーターである育休取得率をみると、なでしこ銘柄の選出企業といえども、政府が20年の目標としている13%に達している企業ばかりではない。過去4回のうち4年連続でなでしこ銘柄に選ばれた日産自動車、東京急行電鉄、KDDIの3社でも、日産の4%からKDDIの84%まで開きが大きい。男性社員の意識改革や育児参加も含めた働き方改革にも課題が残っている。

制作
牛込俊介、清水明、清水正行

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