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日本が挑む
世界の壁

五輪記録の軌跡

 世界のトップアスリートがオリンピックでメダルを争う記録は、どんな軌跡をたどってきたのか。世界と日本のタイム差は?今も記録が伸び続ける種目は? リオ五輪開幕を機に、陸上・競泳の13種目に注目し、1964年の東京五輪以降のメダリストの記録と日本選手の記録をグラフで比べてみた。

男子

女子

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01

100m走

なるか、日本人初の9秒台

不滅の記録は破られるか

02

400mリレー

日本、北京でトラック男子初メダル

米、ロンドンで27年ぶりの世界新

03

マラソン

幻の金メダルはあったが…

メダルが遠ざかった日本勢

04

20km競歩

日本の鈴木が15年に世界新

シドニー五輪から正式種目

05

ハンマー投げ

アテネ金の室伏は第一線退く

五輪初の80メートル超えに期待

06

走り幅跳び

25年破られない世界記録

世界記録も五輪記録も88年

07

棒高跳び

鳥人ブブカを超えたラビレニ

五輪で初の5メートル超えに期待

08

200m自由形

層が厚い米国、豪州が続く

メダルに近づいた千葉すず

09

200m背泳ぎ

技術に比重、入賞圏に絡む日本

日本、シドニーから3大会連続で銅

10

200m平泳ぎ

ニッポンのお家芸、北島は連覇

岩崎、バルセロナで最年少の金

11

200mバタフライ

怪物・フェルプスにどこまで迫るか

ロンドン銅の星、リオも有力

12

400m個人メドレー

世界を追う萩野、ロンドンで銅

苦戦続くもシドニーで田島が銀

13

400mメドレーリレー

日本、直近3大会は銅、銅、銀

日本はシドニー、ロンドンで銅

MEN

WOMEN

MEDAL RECORDS NAME COUNTRY

日本選手の記録

北京五輪の陸上男子100メートルを世界新で制したジャマイカのウサイン・ボルト

ソウル五輪の陸上女子100メートルで圧勝した米国のフローレンス・ジョイナー

 「世界で最も速い男」を決める男子100メートル。世界記録は2009年の世界選手権でジャマイカのウサイン・ボルトが出した9秒58で、世界トップレベルの選手たちは9秒台で勝負を繰り広げている。これまでの日本人最高記録は伊東浩司が出した10秒00。リオ五輪に出場する桐生祥秀は、今年に入って自己タイとなる10秒01を出し、日本人初の9秒台に期待がかかる。

 女子100メートルで勝つには10秒台を出せるかがカギ。現在の世界記録は米国のフローレンス・ジョイナーが1988年のソウル五輪代表選考会で出した10秒49で「不滅の記録」といわれる。日本勢は福島千里が2008年北京五輪に日本選手として56年ぶりに出場したが、予選敗退。12年のロンドン五輪も決勝に進めなかった。福島が持つ日本記録は11秒21。世界の壁は高い。

北京五輪の陸上男子400メートルリレーで3位に入り喜ぶ日本チーム。(左から)朝原宣治、塚原直貴、末続慎吾、高平慎士

米国チームは96年のアトランタ大会(写真)まで4大会連続で400メートルリレーを制した

 五輪のトラック種目で、日本男子が初めてメダルを獲得したのが400メートルリレー。2008年の北京五輪で38秒15をマークし、3位に入った。世界記録はジャマイカチームが12年のロンドン五輪で出した36秒84。世界トップの壁は高いものの、日本は次走者の手のひらに下からバトンを渡すスムーズなアンダーハンドパスに取り組み、チームワークでメダルを目指す。

 女子400メートルリレーは、過去10大会では米国が圧倒的に強い。1996年のアトランタ五輪までの4連覇に続き、ロンドン五輪では40秒82の世界新記録を樹立。85年に東ドイツが出した記録を27年ぶりに塗り替えた。日本勢はロンドン五輪で48年ぶりに出場したものの、予選で敗退。現在の日本チームは五輪出場圏内のタイムが出せず、2大会連続の出場はかなわなかった。

東京五輪のマラソンで独走し優勝したアベベ・ビキラは五輪マラソン連覇を史上初めて成し遂げた

シドニー五輪の女子マラソンで、両手を上げ1位でゴールインする高橋尚子

 1980年のモスクワ五輪では、当時の瀬古利彦が「出場すれば金メダル間違いなし」と期待されたが、日本が大会をボイコットしたため「幻の金メダル」といわれた。92年のバルセロナ五輪で森下広一が銀メダルを獲得したのが日本勢の最後のメダルだ。世界記録はケニアのデニス・キメットが持つ2時間2分57秒。

 日本勢はバルセロナ、アトランタで2大会連続のメダリストとなった有森裕子に続き、シドニー、アテネでは高橋尚子と野口みずきがそれぞれ金メダルに輝いた。女子マラソンは1984年のロサンゼルス五輪から正式競技になり、当初は欧米勢がメダルを独占してきたが、近年はケニアやエチオピアなどアフリカ勢の存在感が強まっている。

北京五輪の男子20キロ競歩で11位、同50キロ競歩で7位に入った山崎勇喜

北京五輪の女子20キロ競歩に出場し、14位だった川崎真裕美

 両足を同時に地面から離すことなく、いかに速く歩くかを競う競歩。前回のロンドン五輪では中国勢が金・銅メダルを獲得して強さを見せた。故障でリオ五輪代表は逃したものの、男子20キロの世界記録保持者は日本の鈴木雄介。2015年3月に1時間16分36秒の世界新をマークした。リオ五輪出場の高橋英輝ら3選手もメダルを狙える実力がある。

 女子20キロ競歩は2000年シドニー五輪から正式種目に採用された。リオ五輪に出場する岡田久美子の自己記録は1時間29分40秒。10年世界ジュニア選手権1万メートルで銅メダルを獲得した岡田は、15年の世界選手権女子20キロでは25位だった。世界記録は中国の劉虹が15年6月に出した1時間24分38秒。岡田はどこまで迫れるか。

アテネ五輪の男子ハンマー投げで、繰り上がりで金メダルを獲得した室伏広治

ロンドン五輪銀メダルのウォダルチク(ポーランド)。15年に北京で開いた世界陸上では80メートル85を投げ優勝した=共同

 2004年のアテネ五輪では、1位の選手がドーピングで失格となり、室伏広治が繰り上げで金メダルを獲得した。室伏は続く北京五輪で5位入賞、12年のロンドンで銅メダル。室伏は今年6月、体力の限界を理由に第一線を退く意向を表明。リオ五輪に日本人選手は出場しない。ロシアのユーリ・セディフが1986年に出した86.74メートルの世界記録は今も破られていない。

 女子ハンマー投げは2000年シドニー五輪から実施されている。世界記録はアニタ・ウォダルチク(ポーランド)が15年8月に出した81.08メートル。これまでの五輪大会では超えられなかった80メートルを超える記録がリオ五輪で出るのか期待が高まる。日本記録は室伏由佳が04年8月に出した67.77メートルで、世界記録とは開きがある。リオ五輪に日本人選手は出場しない。

バルセロナ五輪の陸上・男子走り幅跳びで優勝し、3連覇を果たしたカール・ルイス

北京五輪の陸上女子走り幅跳びに出場した池田久美子

 米国のカール・ルイスが1984年のロサンゼルスから4大会連続で金メダルを獲得した。世界記録保持者は88年のソウル、92年のバルセロナでルイスに次ぐ銀メダルだった米国のマイク・パウエル。91年の世界陸上で8.95メートルの大ジャンプに成功。以後、破られることはなく、走り幅跳びは記録の進化が止まったかに見える。リオ五輪に日本人選手は出場しない。

 女子走り幅跳びの世界記録は、旧ソ連のガリナ・チスチャコワが持つ7.52メートルで、88年の記録だ。五輪記録も88年のソウル大会で、米国のジャッキー・ジョイナー・カーシーが出した7.40メートル。リオ五輪では日本から甲斐好美が出場する。自己ベストは6.84メートルで、リオでは井村(旧姓池田)久美子が持つ日本記録の6.86メートルの更新に期待がかかる。

ソウル五輪の棒高跳びで、5メートル90の五輪新で金メダルを獲得したセルゲイ・ブブカ

アテネと北京五輪の棒高跳びで2連覇したロシアのエレーナ・イシンバエワ(写真は2007年の世界陸上大阪大会)

 男子棒高跳びの世界記録は、1994年に「鳥人」セルゲイ・ブブカが出した6.14メートルが長年、破られずにいた。この壁を越えたのがロンドン五輪金メダルのルノー・ラビレニ(フランス)。2014年に6.16メートルを跳び、20年ぶりに世界記録を塗り替えた。日本記録は2005年に沢野大地が出した5.83メートル。日本勢にとって世界の壁は高い。

 女子棒高跳びは2000年シドニー五輪から正式種目に採用されている。世界記録はエレーナ・イシンバエワ(ロシア)が09年8月に出した5.06メートル。前回のロンドン五輪で出なかった5メートルを超える記録がリオ五輪で出るのか期待が高まる。日本記録はロンドン五輪出場の我孫子智美が12年6月に出した4.40メートル。リオ五輪に日本人選手は出場しない。

北京五輪の競泳で8冠を達成し、報道陣に囲まれる米国のマイケル・フェルプス

バルセロナ五輪の競泳女子200メートル自由形で6位、400メートル自由形で8位に入った千葉すず

 五輪メダル獲得数1位のマイケル・フェルプスをはじめ、多くのメダリストを生んだ米国の選手層が厚い。これに、2004年アテネ五輪金メダルのイアン・ソープらを輩出したオーストラリアが続く。世界記録はポール・ビーデルマン(ドイツ)が09年に出した1分42秒00。日本記録はリオ五輪出場の萩野公介が14年に記録した1分45秒23。世界記録と3秒以上の差がある。

 五輪優勝記録は2012年ロンドン五輪までの12大会でおよそ17秒縮まり、高速化が進む。日本勢でいちばんメダルに近づいたのは、1992年バルセロナ五輪に出場した千葉すず。3位とは0秒97差で6位入賞した。世界記録はフェデリカ・ペレグリニ(イタリア)が2009年に出した1分52秒98、日本記録は上田春佳が11年にマークした1分57秒37で、4秒以上の差がある。

ソウル五輪の競泳男子100メートル背泳ぎで優勝した鈴木大地。200メートル背泳ぎは15位だった

北京五輪の競泳女子200メートル背泳ぎで銅メダルを獲得し、観客の声援に応える中村礼子

 技術の占める比重が高い背泳ぎで、日本は入賞圏内に絡むレースを続けている。鈴木大地は200メートルこそ振るわなかったが、1988年ソウル五輪ではバサロ泳法を駆使し、100メートルで金メダルをもぎ取った。2012年ロンドン銀の入江陵介は1分52秒51の日本記録を保持。1分51秒92の世界記録を持つアーロン・ピアソル(米国)らと競り合ってきた。

 世界記録は米国のメリッサ・フランクリンが2012年にロンドン五輪でマークした2分4秒06。日本記録は中村礼子が08年に北京五輪で出した2分7秒13。世界と日本勢の差は近年、縮まりつつあり、2000年のシドニー五輪出場の中尾美樹、04年アテネ、08年北京と出場した中村礼子が3大会連続で銅メダルを獲得した。リオ五輪に出場する酒井夏海は競泳チーム最年少。

アテネ五輪の競泳男子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得しガッツポーズの北島康介

バルセロナ五輪の競泳女子200メートル平泳ぎで優勝した岩崎恭子

 四泳法でもっとも技術が必要とされる平泳ぎは競泳ニッポンのお家芸。山口観弘がこの種目で2012年にマークした2分7秒01は、競泳で日本人が現在持つ唯一の世界記録だ。五輪の舞台にも1956年メルボルン金の古川勝、72年ミュンヘン銅の田口信教ら、世界と戦える選手を輩出。04年アテネと08年北京を連覇した北島康介も一時代を築いた。

 1936年ベルリン五輪では競泳女子で日本初の金を前畑秀子が獲得。世界の背中は戦後、遠のいたが、84年ロサンゼルスの長崎宏子のころから射程圏内となり、92年バルセロナでは14歳の岩崎恭子が競泳史上最年少で金メダルをさらった。リッケ・ペデルセン(デンマーク)の持つ2分19秒11の世界記録に対し、日本記録も金藤理絵の2分19秒65と近づいてきている。

ロンドン五輪の競泳男子200メートルバタフライで銅メダルを獲得した松田丈志

ロンドン五輪の競泳女子200メートルタフライで銅メダルを獲得し、笑顔の星奈津美

 リオ五輪には、五輪史上最多18個の金メダルを手にしている怪物、マイケル・フェルプス(米国)が5度目の同国代表として出場する。世界記録はこのフェルプスが09年に出した1分51秒51。日本記録は松田丈志が北京五輪銅メダルの時に出した1分52秒97だ。五輪で3大会続けてメダルを獲得している日本勢。リオ五輪は瀬戸大也と坂井聖人が「怪物」に挑む。

 世界記録は北京五輪の金メダリスト、劉子歌(中国)が2009年に出した2分1秒81。中国はロンドン五輪でも焦劉洋が金メダルを獲得している。日本記録はロンドン五輪銅メダルの星奈津美が持つ2分4秒69。リオ五輪には15年の世界選手権を制した星奈津美、高校生スイマー長谷川涼香が日本代表として出場。日本勢として2大会連続のメダル獲得を狙う。

ロンドン五輪の男子400メートル個人メドレーで、3位でゴールした萩野公介

シドニー五輪の競泳女子400メートル個人メドレーで銀メダルを獲得した田島寧子=AP

 一泳法を極めるケースが多い日本人選手は個人メドレーを苦手としてきた。2004年のアテネ五輪に至るまで、日本人選手はメダル圏に5秒以上も及んでいない。12年ロンドン銅の萩野公介ら、万能スイマーの台頭で潮目は変わった。それでもマイケル・フェルプス(米国)による4分3秒84の世界記録に対し、日本記録は萩野の4分7秒61となお水をあけられている。

 世界記録は中国の葉詩文が2012年にロンドン五輪で記録した4分28秒43。日本記録は2016年2月に清水咲子が出した4分35秒04で、世界とはなお開きがある。日本人選手のオリンピックでの成績は、2000年シドニー大会で田島寧子が銀メダルを獲得したものの、その後は予選敗退が続く。リオ五輪には高橋美帆と清水咲子が出場し、世界に挑む。

ロンドン五輪の競泳男子400メートルメドレーリレーで銀メダルを獲得し、喜ぶ北島康介ら日本チーム

ロンドン五輪で銅メダルを獲得した競泳女子400メートルメドレーリレーの第2泳者、鈴木聡美

 日本は2004年のアテネで銅、08年の北京も銅、そして「(北島)康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」と奮起した12年のロンドンで銀メダルを獲得した。圧倒的な強さを誇るのは、ロンドン五輪まで8大会連続で金メダルを取っている米国だ。米チームが09年に出した世界記録は3分27秒28。日本記録は同じ09年の3分30秒74。この差がなかなか埋まらない。

 寺川綾、鈴木聡美、加藤ゆか、上田春佳が泳いだ2012年ロンドン五輪の女子400メートルメドレーリレー。結果は3分55秒73の日本新記録で、この種目では2000年のシドニー五輪に続く2度目の銅メダルを獲得した。現在の世界記録はロンドン五輪金メダルの米国が出した3分52秒05。五輪の金メダル記録はロンドン五輪までの40年で30秒近く縮まっている。

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記録・表記について
各大会の組織委員会による公式記録や国際オリンピック委員会、日本オリンピック委員会のデータ、新聞報道などから作成。世界・日本記録はリオデジャネイロ五輪開幕時点。選手名の表記は各大会当時の新聞報道に原則として準じた(敬称略)。同一人物でも結婚等のため異なる表記が混在する場合がある。

取材・制作
岩崎航、古山和弘、夏目祐介、今村大介、小野啓一、北爪匡、牛込俊介、飯島圭太郎、結城立浩、鎌田健一郎、安田翔平、佐藤健

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