初めてもらった給与明細みたら、厚生年金保険料の天引き額が多くて、驚きました。
このお金は国が私の将来のために貯めてくれているのですか?
初めてもらった給与明細みたら、厚生年金保険料の天引き額が多くて、驚きました。
このお金は国が私の将来のために貯めてくれているのですか?
現在、年金を受け取っている高齢者に支給されています。
現在、年金を受け取っている高齢者に支給されています。
日本の年金制度は賦課方式といって現役世代が「仕送り」する仕組みです。
賦課方式
公的年金で集まる保険料は総額36兆円。これに税金などを加えて53.5兆円の収入があります。給付は総額51.6兆円です。
年金の収入と支出
あなたが支払っている厚生年金保険料は計算式で出せます。多いと感じるか少ないと感じるかはこれから説明することを聞いてよく考えてみましょう。
会社員の厚生年金保険料
高齢者はいま、どれくらいの年金をもらっているかというと、夫婦2人のモデル世帯で月22万1504円です。国民年金は満額のケースで1人あたり6万5008円です。
高齢者がもらっている年金額
厚生年金とは別なんですか?
厚生年金とは別なんですか?
公的年金は「2階建て」とよくいわれます。国民年金は20歳以上の人全てが対象で、「基礎年金」と呼ばれます。国民年金保険料を納めるのは20歳から60歳までです。もともと自営業者や農家の人たち向けに制度ができました。会社員には厚生年金が上乗せされます。基礎年金が「1階」、厚生年金が「2階」です。
専業主婦で、夫が会社員や公務員の場合は原則60歳まで保険料を払わずに基礎年金を65歳から受け取れます。「第3号被保険者」と呼ばれています。パートで働いている場合、年収106万円までなら厚生年金に加入せずにすむため、働き過ぎないよう調整する主婦もいます。
公的年金の構造
企業や個人がお金を出して、自ら運用するのが私的年金です。種類は2つあり、企業が利回りを事前に決めて運用するのが確定給付企業年金です。運用手段を個人で選ぶのが確定拠出年金です。運用がうまくいけば将来もらえる年金額は増えますが、株価が下がるなど運用がうまくいかないと年金額は減ります。
確定給付企業年金と
確定拠出年金
しかし、前倒しで60歳からもらったり、先送りで70歳からもらったりも出来ます。
しかし、前倒しで60歳からもらったり、先送りで70歳からもらったりも出来ます。
原則は65歳で、前倒しで60歳からもらえますが、月当たりの年金額が最大3割減ります。先送りも可能で、70歳で受け取り始めると月当たりの年金額は42%増えます。生涯でもらえる年金の総額が受け取りを始めた時期で変わらないようにするためです。
給付開始年齢の
繰り上げ・繰り下げ
ただ、政府は医療の発達による平均寿命の伸びなどを考慮し、70歳を超えても年金を受け取り始められるよう制度を見直す予定です。
ですが、保険料に対してもらえる年金額が減っていく見通しです。
ですが、保険料に対してもらえる年金額が減っていく見通しです。
保険料と給付額
厚労省の試算では、1945年生まれで厚生年金に加入していた人は保険料負担1000万円に対し、もらえる年金額が5200万円で保険料の5.2倍です。一方、1990年生まれの人は3200万円の保険料に対し、年金額は7400万円。保険料の2.3倍にとどまります。
つまり、現在の受給者と将来の受給者の間の格差が広がっているのです。
公的年金だけで老後の生活費を全て賄えるわけではありません。人生100年時代といわれるなか、貯蓄などで備えておく必要があります。
公的年金だけで老後の生活費を全て賄えるわけではありません。人生100年時代といわれるなか、貯蓄などで備えておく必要があります。
資産形成
話題になっている金融庁の報告書によると、95歳まで生きる場合、公的年金に頼った生活設計では2千万円が不足すると指摘しています。
この報告書は国民の不安をあおったとして事実上の撤回に追い込まれました。単純な試算が誤解を招き、年金不信問題にも発展しています。ただ、報告書が訴えたかった内容までは否定できません。老後も安心して暮らすには年金だけに頼らず、若いうちから計画的に資産をつくるというメッセージは重要です。
平均寿命の推移予想
将来の年金支給額が大幅に減ることが確実な場合は支給額の大幅な減額、支給年齢や保険料の引き上げなどが避けられなくなります。こうした大幅な見直しが必要かどうか、厚生労働省が5年に1回実施する年金財政の「健康診断」で判断します。
「健康診断」
財政検証で知っておきたいキーワードは2つあります。
はじめに所得代替率とは、夫婦2人の年金額がそのときの現役世代の手取り収入に対して、どの程度かを示します。財政検証の結果、5年以内に50%を下回ると見込まれる場合、給付減額や保険料率の引き上げが避けられなくなります。19年時点では61.7%でした。経済が成長して女性らの労働参加が進んでも、所得代替率は下がっていきます。最も楽観的な場合でも46年度に所得代替率は51.8%になります。
所得代替率
次にマクロ経済スライドとは、年金の給付を抑える仕組みです。現役世代の減少や平均余命の伸びに合わせ、給付額を自動で調整します。将来世代の年金額が大きく減らないようにする狙いがあります。2004年の制度改正で導入しましたが、物価や賃金が上がる局面でしか機能せず、2回しか発動されていません。
マクロ経済スライド
- 取材
- 奥田宏二
- デザイン・マークアップ
- 森田優里