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2020年4月の入園に向けた保活もいよいよ本番です。10月には多くの自治体で認可保育の申込み受け付けが始まります。自治体は子育て環境の整備に力を注ぎますが、SNS(交流サイト)では「保育園落ちた」の声も依然として目立ちます。日本経済新聞は首都圏の135自治体を調査し、保育園に入りやすく、定員の拡充が進んでいる街を調べました。待機児童問題の今も一緒に解説します。

Topic.1
待機児童は減ってる?

待機児童数と隠れ待機児童数

  • 待機児童
  • 隠れ待機児童
万人

厚生労働省によると、2019年4月の待機児童は全国で1万6772人で、2年連続で減少しました。子育て環境の整備に向けた自治体の取り組みが効果を発揮。認可保育に落ちた児童の受け皿として、企業主導型保育の存在感も増しています。
しかし、厚労省が定義する「待機児童」は氷山の一角との指摘もあります。「兄弟で同じ施設に通うために特定の施設を希望した」、「落選後に育休期間を延長した」などの事情から、認可保育に落ちても待機児童にカウントしないケースがあるためです。こうした「隠れ待機児童」は7万3927人。待機児童との合計では前年から3%増えて9万人を超えています。待機児童ゼロでも、実は多くの隠れ待機児童が残る自治体もあります。隠れ待機児童を増やし、厚労省定義の待機児童を減らしていれば本末転倒です。保育園を考える親の会の普光院亜紀代表は「待機児童ゼロが数合わせになっている」と警告します。

東京都の待機児童数

隠れ待機児童を含めた推移の方が、保活に励む保護者の実感に近いかもしれません。東京都の小池百合子知事は2016年の選挙戦で「待機児童ゼロ」を公約に掲げました。2019年4月の待機児童は3690人と選挙前の半分以下ですが、隠れ待機児童を含めると2万1724人で約2割の減少にとどまります。都市部の人口流入や共働き世帯の増加で保育需要が高まっています。

保育施設の定員数

  • 認可保育所など
  • 認可外保育所
万人

認可保育施設(認可保育所、認定こども園、地域型保育)の2019年4月の定員数は前年比8万7580人増の288万8159人でした。認可外保育の定員も企業主導型保育の急増により、2万5000人近く増えました。

保育の無償化(認可保育所、認定こども園の場合)

10月には保育無償化が始まりました。認可保育施設に通う場合、子どもが0~2歳児なら住民税非課税世帯を対象に、子どもが3~5歳児ならすべての児童を対象に利用料が無料になります。認可外保育や幼稚園に通う場合も条件に応じて利用料負担が軽減されます。

Topic.2
保育園に入れる?

新規入園率の色分け MAP

  • 回答なし
入園率 →
TOP10
千葉県我孫子市 95.0%
東京都福生市 94.4%
東京都八王子市 93.6%
埼玉県日高市 92.7%
東京都羽村市 92.5%
千葉県千葉市 90.9%
埼玉県狭山市 90.6%
埼玉県行田市 88.8%
神奈川県大和市 87.6%
神奈川県厚木市 87.2%

新規入園率は認可保育施設の入りやすさの目安です。既存児童の継続利用を除いた新規申込数のうち、実際に何人が入園できたかを示します。東京近傍の主な自治体135カ所に聞き取り調査し、119自治体について2019年4月の入園率を算出しました。最高は千葉県我孫子市の95.0%で待機児童もゼロを達成しています。千葉市や東京都八王子市、埼玉県日高市など7市が90%超でした。
119自治体全体の新規入園率は75.1%でした。4人に1人が落ちる計算ですが、事情は少し複雑です。例えば、50%台の東京都港区や中央区。大型マンションの建設で局地的に保育需要が高まったり、認可外保育の利用料助成を得る条件を満たすため認可保育に落選前提で申し込んだりする事情が入園率を押し下げている可能性があります。
入園率だけで保育環境の充実度は判断できません。また、自治体で児童数の集計方法に違いがあり、同じ自治体でも地域や子どもの年齢で事情は異なります。自治体間の数%の数値差で優劣はつけられません。数値の裏側にある自治体ごとの事情を知る必要があります。自治体が発信する情報はもちろん、保育環境を自治体別に独自調査している保育園を考える親の会などのデータを参考にしてもよいでしょう。

定員は増えてる?

東京 23 区定員増加率

目黒区 17.8%
中野区 12.6%
千代田区 12.3%
足立区 12.0%
港区 11.8%
江東区 10.0%
渋谷区 8.9%
大田区 8.8%
台東区 8.4%
杉並区 8.3%
中央区 7.1%
世田谷区 7.1%
豊島区 6.2%
葛飾区 5.6%
文京区 5.3%
江戸川区 5.0%
練馬区 3.9%
北区 3.8%
板橋区 3.3%
墨田区 3.3%
品川区 3.3%
荒川区 3.2%
新宿区 1.5%
目黒区 17.8%
中野区 12.6%
千代田区 12.3%
足立区 12.0%
港区 11.8%
江東区 10.0%
渋谷区 8.9%
大田区 8.8%
台東区 8.4%
杉並区 8.3%
中央区 7.1%
世田谷区 7.1%
豊島区 6.2%
葛飾区 5.6%
文京区 5.3%
江戸川区 5.0%
練馬区 3.9%
北区 3.8%
板橋区 3.3%
墨田区 3.3%
品川区 3.3%
荒川区 3.2%
新宿区 1.5%
※世田谷区は認証保育など一部の認可外保育を含む。
 江東区は計画範囲の中央値で算出。

自治体は待機児童の解消に向けて認可保育施設の定員増加に力を入れています。調査時点(8月末~9月中旬)では135自治体のうち、101自治体が増加を見込んでいます。
東京23区では江東区や足立区、大田区など6区が2019年4月~2020年4月に1000人以上の増加を計画します(世田谷区は認証保育など認可外保育の一部を含む)。東京23区の近隣にある東京都稲城市や埼玉県三郷市、千葉県流山市は増加率が10%を超えます。都市部への人口流入に対応する保育担当者の苦労がうかがえます。
実際には年齢別の受け入れ枠にも気を配る必要があります。多くの自治体で0~1歳児の枠が不足しがちなためです。通いやすさを確保するには施設の立地も重要です。

保育士は足りてる?

保育士の求人倍率

認可保育所

保育の充実には保育士の確保が欠かせません。認可保育所では0歳児の場合、子ども3人につき保育士を1人以上配置しなければいけません。ご多分に漏れず、待機児童対策でも人材不足がボトルネックになっています。

  • 東京都
  • 全国

保育士不足を物語るのが、求職者1人につき何人の求人があるかを示す有効求人倍率です。保育士の有効求人倍率は右肩上がりを続け、2018年度は全国で2.88倍まで上昇。東京都では5.54倍でした。春に向けて採用活動がピークを迎える12月前後は保育士の争奪戦がさらに激化します。東京労働局の調べでは、2018年12月の有効求人倍率は6.96倍まで高騰していました。1人の保育士候補に7人分の仕事が開かれている状態です。

保育士の年収

万円

保育士の担い手を増やしたり、離職を防いだりするために必須なのが処遇改善です。賃金アップに向けた政府の補助金や人事院勧告が続き、内閣府の試算では保育士の年収は2018年に358万円まで上昇しました。2012年と比較すると14%、金額では43万円の上積みです。

独自の待遇改善策で保育士を確保しようとする自治体もあります。さいたま市は月額8万円を上限にした家賃補助を設定。千葉県松戸市は給与に月額4万5000~7万8000円を上積みするだけでなく、無資格者が保育士資格の取得にかかる費用まで助成する「松戸手当」を設けました。「外から呼び込むだけでなく、松戸市民からも保育士を育てていきたい」(松戸市)。専門性が高く、社会を支える重要な職業として保育士の社会的地位もさらに上がっていくでしょう。

待機児童は
社会の関心事に

待機児童は当事者の子育て世代だけでなく、社会全体の関心事になりました。「一億総活躍社会」を掲げる政府にとっても避けては通れない問題で、待機児童対策にまい進しています。子育て世帯を招きたい自治体にとっても「待機児童ゼロ」はアピールポイントになります。

一方、職員による児童虐待が発覚したり、企業主導型保育で補助金目当ての詐欺事件が起きたりするなど「量」を追い求めてきたひずみが目立つようになりました。保育園を考える親の会の普光院代表も、「質」を後回しにした保育施策に警鐘を鳴らします。例えば、資金使途が不明瞭な保育園もあると指摘。利用料が保育内容の充実に活用されるためにも「事業者に情報公開を促す仕組みを設けるべきだ」と主張します。
「保護者に選ばれるためのサービス競争が始まる」。そう話すのは、首都圏で認可保育所などを60カ所余り運営するWITHホールディングス(埼玉県川口市)の新井実代表です。保育の「全入時代」を見据え、ネーティブ講師による英語教室や保育士の研修制度に力を入れます。自治体も保育施設の巡回指導を増やすなど「質」向上の取り組みを充実させる必要があります。

取材・記事
新田祐司
デザイン
渡辺健太郎
プログラム
清水正行
マークアップ
東條晃博

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