1989年に消費税が初めて導入されてから30年。消費税率は10月1日から10%に上がりました。暮らしの負担はどう変わるか、なぜ増税が必要なのか、世界各国の動向は? 増税にまつわるナゼを図解します。
増税でうちの負担は?
1989年に3%で導入された消費税。10%に上がり、家計の負担はどのくらい増えるのでしょうか。
1世帯当たりの年間消費税負担額
年収に占める消費税負担割合
消費税率が10%に上がると、「年収400万円以上~500万円未満」の年間の消費税負担額(推計)は約4万4000円増えて約22万円に、「1000万円以上~1500万円未満」なら約7万4000円増えて約36万8000円になります。
なぜ消費税なの?
景気変動の影響が大きい所得税、安定が際立つ消費税
一般会計税収の推移
所得税は景気や人口構成の変動に左右されやすく、働く世代など特定の人に負担が集中しやすい側面があります。バブル崩壊やリーマン・ショック直後は急減しました。 消費税は景気による税収の変動は小さく、安定財源が求められる社会保障に適しているとされます。
法人税は世界で引き下げ競争
各国の法人税率(左は2000年。右が日米のみ2018年で、他は2017年)
法人税は先進国を中心に企業誘致を狙った引き下げ競争が加速しています。経済のグローバル化が進む中で、日本だけが引き上げると企業の海外流出につながる懸念があります。
ボリュームが小さい相続税
税収の内訳(2018年度)
資産の多い人に課税する相続税は税収全体のわずか4%しかありません。政府は相続税の課税対象拡大に取り組んできましたが、高齢化で拡大が続く社会保障の財源としては力不足です。
負担増ばかりなんですか?
幼児教育無償化など新サービスも
消費税増収分の使い道
(8%→10%)
政府は消費税率10%への引き上げによる増収を年間で約5.6兆円と見積もっています。約1.7兆円を幼児・高等教育の無償化など少子化対策に回し、約1.1兆円は低所得の高齢者支援など社会保障サービスの充実に充てます。残る2.8兆円を借金の返済などに回す方針です。
増税はこれで終わりですか?
社会保障費の膨張はまだ続きます
2040年の社会保障費は18年より5割超増える見通し
消費税率の引き上げが今回で打ち止めとは断言できません。安倍晋三首相は10%に引き上げた後は「10年くらいは必要ない」と述べましたが、2018年に121兆円だった医療や介護など社会保障給付費は40年には約190兆円まで膨らむ見通しです。これを賄うためにさらなる消費増税の可能性も捨てきれません。
欧州は20%以上も多く
各国の消費税(付加価値税)の税率
世界を見渡すと、日本の消費税10%は必ずしも高いとはいえません。欧州では消費税にあたる付加価値税(VAT)が20%以上と、日本の2倍以上の国も多い状況です。英国は2010年に15%から17.5%、さらに11年にも20%へと引き上げました。イタリアは13年に22%、フランスは14年に20%へとそれぞれ引き上げています。
負担増以外の道はないの?
ハイテクで医療・介護を効率化
テクノロジーの活用で医療・介護を今よりも飛躍的に効率化して提供できるようになれば、これを支えるための国民負担を減らすことができるかもしれません。介護・医療ロボットで人件費を節約したり、人工知能(AI)の活用で医師の負担を軽減したりといった策です。5G通信技術による遠隔医療の進歩も医療を効率化する可能性を秘めます。
社会保障の範囲を小さく
社会保障制度のあり方を見直して給付の膨張を抑えることができれば、今後の国民負担増をやわらげることができるかもしれません。製薬技術の進歩で1回の投薬で3千万円を超える高額新薬が出てきましたが、これをすべて公的保険でカバーするのかどうか。治療効果との兼ね合いで保険適用のあり方を考える案があります。また高所得者の基礎年金を減額する案や、75歳以上の後期高齢者にも経済力に応じた医療費の負担を求める案が政府内で議論されています。ただこうした給付抑制策は国民の「痛み」を伴うので、実現に向けた調整は難航が必至です。