「安定多数」「惜敗率」「供託金」 衆院選のしくみ SHUIN2021-SYSTEM

10月19日公示―31日投開票で衆院選が実施される。与野党は前回からおよそ4年ぶりの衆院選で、小選挙区と比例代表あわせて465の議席を争う。カギとなる数字はなにか、有権者が投票で選ぶ仕組みはどうなっているのか、まとめた。

TOPIC 1

当選者は
どう決まる?

注目すべき議席数

全議席数は465席

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衆院選での議席数は国会の運営でどれだけ主導権を握れるかに直結する。与党の解散時勢力は自民党276、公明党29の計305。8月下旬には菅義偉首相(当時)のまま衆院選になれば「自民党は数十議席減る」との観測が自民党内に流れた。自民党総裁選を経て岸田文雄首相に代わり、どこまで議席を確保できるか。

法案を本会議で可決するのに必要なのは「過半数」233議席だが、法案の審議はまず委員会が担う。委員会の採決で可否が同数ならば委員長が決裁するため、全ての常任委員会で委員長を出し、委員の半数を得る条件となる244議席の「安定多数」も重要だ。さらに全委員会で、委員の過半数を握るには261議席の「絶対安定多数」が求められる。

選ぶのは465人

小選挙区と比例代表

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全体の6割強の289人は小選挙区で選ぶ。人口がなるべく均等になるよう全国をわけた選挙区ごとに票を一番多く獲得した1人が当選する。有権者は投票用紙に候補者名を記入する。

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176人は比例代表で選ぶ。全国を11ブロックにわけて人口に基づく定数を割り振っている。ブロックごとに政党の得票数によって各政党の当選人数が固まり、各政党の名簿の順位に沿って上位から当選者が決まる。有権者は政党名を投票用紙に記入する。

小選挙区と比例代表に
「重複立候補」できる

小選挙区で当選

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衆院選は小選挙区と比例代表の「重複立候補」の制度がある。小選挙区の立候補者が比例代表選挙の名簿にも名前を載せられる。小選挙区で当選が決まれば比例代表の当選者にはならない。

小選挙区で落選し、
比例代表で復活当選

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惜敗率とは?

小選挙区において候補者の得票数をその選挙区の最多得票者(当選者)の得票数で割った比率を指す。100%に近いほど、最多得票者に肉薄し、惜敗だったといえる。

小選挙区で落選しても、政党が獲得した議席数の範囲で比例代表の当選者になる。これを「比例復活」と呼ぶ。政党は小選挙区の複数の候補を比例代表の名簿で同じ順位にできる。同じ順位の場合は惜敗率を比べてより惜しい負け方をした候補者から当選者が決まる。

国・地域によって
選挙制度は様々

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選挙制度は国・地域によって異なる。世界は大きく小選挙区を軸とする制度と比例代表を軸とする制度、その2つを組み合わせた制度に3分類できる。小選挙区制の代表例が米国、英国、フランス、カナダの下院だ。一方でスペイン、オランダなどは比例代表制を基本にする。東アジアの日本や韓国、台湾は混合型の制度をとる。

TOPIC 2

議員の多様性は
道半ば?

伸び悩む女性当選者

  • 候補者
  • 当選者
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前回2017年の衆院選で女性当選者は47人だった。全体の10%で伸び悩む。候補者の比率以上に当選者の比率が低い理由のひとつは獲得議席数がもっとも多い自民党候補者の女性の少なさだ。現職が多い事情などが背景にありそうだ。

18年に男女の候補者数を均等にするよう政党に努力を求める「政治分野の男女共同参画推進法」が成立した。成立後初めて迎える衆院選で各党がどこまで女性比率を高めるのか注目が集まる。

低い女性議員の比率

  • 女性
  • 男性
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出所:列国議会同盟(2021年1月時点)、193カ国を集計、二院制の場合は下院の数字

国際的にも日本は女性議員の割合が低い。世界の国会議員が参加する「列国議会同盟」が2021年1月時点について193カ国を集計したところ、日本は166位だ。最も高いのはルワンダの61%だった。英国は34%、米国は27%で、比例代表の名簿の半数を女性にする制度を導入した韓国も日本を上回った。

立候補にはお金も必要

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立候補には小選挙区で300万円、比例代表で600万円の「供託金」が必要だ。売名目的などの無責任な立候補を防ぐ狙いがあり、一定の票を得ないと国に没収される。

他の国は?

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諸外国でも供託金制度を導入している例はあるが、日本と比べると額は低い。米国やフランスなど先進国で「供託金」制度がない国もある。 額が高すぎると志があっても資金はない人の立候補を妨げるとの批判もある。

TOPIC 3

投票率は下落傾向

若年層ほど投票率低く

衆院選の年代別投票率

  • 全体
  • 10歳代
  • 20歳代
  • 30歳代
  • 40歳代
  • 50歳代
  • 60歳代
  • 70歳代以上
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衆院選の投票率は下落傾向にある。前回17年の選挙は53.7%で過去2番目の低さだった。年代が高くなるほど高く、若年層で低い傾向も出ている。国民の代表を選ぶという選挙の目的を果たすため投票しやすい環境の整備も課題だ。総務省は将来的なインターネット投票の一部導入を検討しているが実用化のメドはたっていない。

投票は公示翌日から

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投票日当日に忙しい場合も事前に投票は可能だ。当日に学校や公民館などの投票所に行く以外の選択肢として、立候補者が出そろう公示日の翌日から「期日前投票」ができる。投票時間は基本的に夜8時までで、大学やショッピングセンターなどに投票所を設ける例もある。

「密」避ける
コロナ対策で活用も

制度導入後の
投票者に占める比率 (選挙区)

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期日前投票の利用は増えている。前回の衆院選は2138万人が期日前投票を利用し、過去最多だった。新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、期日前投票を使って投票所の密をさける工夫も考えられている。

岸田政権に審判、
コロナ対策など争点

conclusion

10月4日に就任した岸田首相は衆院選で国民の審判を受ける。19日に公示され、31日に投開票日を迎える。新型コロナウイルス対策や成長戦略・分配政策の具体策が争点となる。