インターネットのデータ通信の99%は、地球上に張り巡らされた海底ケーブルを通る。「ネットの海の道」の総延長は地球30周分。グーグルやフェイスブック(FB)など米IT(情報技術)大手と中国国有企業の間で、ケーブル敷設を巡る勢力争いが激しくなっている。
中国通信大手3社のいずれかが出資
グーグルかフェイスブックが出資
両者が出資
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海底ケーブルは髪の毛ほどの太さの光ファイバーを数本束ね、金属や樹脂の厚いカバーで保護。深さ数千mの海底に沈める。米調査会社のテレジオグラフィーによると、現在の総延長は約120万km。2016年ごろから建設ペースが加速し、20年にはさらに2割伸びる見通しだ。
新設する海底ケーブルの距離が、近年急増している
中国通信大手3社のいずれかが出資
グーグルかフェイスブックが出資
両者が出資
データ通信は1990年代には衛星通信と海底ケーブルの通信量シェアが同等だった。だがスマートフォン(スマホ)の普及などで大容量のデータ需要が増すと、安定して多くのデータを送れるケーブルの比重が高まった。
ケーブルの多くは国や大陸をまたぐため、複数国の企業が共同出資するのが大半だ。日本や中国、東南アジア諸国を結ぶ長さ約1万kmの「SJC2」は20年に完成予定で、日本のKDDIや中国、タイ、シンガポールなど計9社が参加する。
グーグル、FBは太平洋、大西洋で積極投資
ここ数年、グーグルとFBの積極的な動きが目立つ。11~15年完成分で両社のいずれかが投資したケーブルは総延長が9千kmだったが、16~20年完成分では15万5千kmと急増する見込み。この時期にできる世界のケーブルの3分の1を占めるほどだ。
中国勢はインド洋、地中海にも触手
対抗するのが、中国電信、中国聯合通信、中国移動通信の中国の通信大手3社。16~20年で3社が出資するケーブルは13.8万kmで、グーグルとFBに迫る。中国からのケーブルにとどまらず、中東やアフリカなどでの動きも活発だ。18年にアフリカと南米を初めて直結した「SAIL」には中国聯合通信が出資。広域経済圏構想「一帯一路」で、新興国へ経済進出を図る中国の国家戦略とも重なる。
北米―東アジア間では米中が協力
建設に多額の費用がかかるため、ライバルの米中企業が〝相乗り〟するケースも珍しくない。グーグル、FBのいずれかと、中国企業が共同出資するケーブルは20年完成予定分だけで4万km。KDDI海底ケーブルグループの戸所弘光シニアアドバイザーは「共同出資の場合、出資額や経由地を巡って参加企業間の駆け引きも激しい」と明かす。企業間で協力と競争が入り交じる、複雑な構図が生まれるという。
米シスコは、21年にはネットのデータ流通量が16年の3倍になると予測。使い勝手の良いケーブルをいかに確保できるかは、各社のウェブサービスの内容やスピードにも影響する。ケーブル製造世界大手のNECの増田彰太シニアマネージャーは「米中勢を中心に、ケーブルの建設競争もますます加速するだろう」と話す。
- 取材・制作
- 伴正春、清水明、清水正行