バイデン氏は菅氏との共同記者会見で「最初に招いた外国首脳だ。フェース・ツー・フェースで意見交換できてうれしい」と強調した。「日本の安全保障を鉄壁で守る」と約束し、菅氏は日本の防衛力強化への決意を伝えた。米国主催で開く気候変動サミットに向けて「日米で世界の脱炭素をリードしていく」とも訴えた。

同席者が通訳だけの会合では、お互いの家族や人生経験について、用意されたハンバーガーに手を付けずに終わるくらい話し込んだ。

安倍晋三首相は、この年就任したトランプ大統領と同氏の別荘があるフロリダ州パームビーチを訪れ、ゴルフをともにした。日米首脳のゴルフは1957年の岸氏とアイゼンハワー氏以来だった。通常の1.5倍の27ホールを回りながら、対ロシア政策や北朝鮮などの国際情勢を話し合った。両首脳の「ゴルフ外交」はこのときを含め日米で計５回重ねた。

安倍氏は前の年、大統領選に勝利したトランプ氏といち早く会った。トランプ氏は日米の自動車貿易などを「不公平」と訴え、日本側に警戒もあった。両首脳はフロリダに向かう前のワシントンでの会談で日米経済対話を立ち上げる方針を確かめた。

オバマ大統領は2016年5月、現職の米大統領として初めて被爆地の広島を訪れ、核兵器の廃絶を訴えた。その半年後の12月、安倍氏は日米開戦の舞台となった米ハワイの真珠湾に赴き、オバマ氏と旧日本軍の真珠湾攻撃の犠牲者を慰霊するアリゾナ記念館を訪問した。

安倍氏はオバマ氏との共同演説で「戦争の惨禍は二度と繰り返してはならないとの不戦の誓いを貫いてきた」と語った。日本の真珠湾攻撃から75年がたち、日米は「歴史にまれな深く強く結ばれた同盟国となった」と強調した。オバマ氏の退任を前に日米の和解、歴史の区切りを演出した。

来日したオバマ氏を安倍氏が東京・銀座のすし店「すきやばし次郎」での夕食会に招いた。オバマ氏はすしが好物とされ、安倍氏自ら店を選んだ。２人はノーネクタイ姿で握手し、のれんをくぐった。米側はライス大統領補佐官とケネディ駐日大使が同席した。

安倍氏はオバマ氏にお酌しながら、中国や北朝鮮といった懸案を挙げて日米同盟強化の必要性を説いた。安倍氏は前年末に靖国神社を参拝し、米側が「失望」を表明していた。安倍氏はオバマ氏退任後の18年にもすし店「銀座久兵衛」で会食した。

小泉純一郎首相はブッシュ大統領（第43代）と大統領専用機に同乗し、テネシー州メンフィスにある「ロックの王様」エルビス・プレスリーが暮らした「グレースランド」を訪れた。小泉氏はプレスリーの大ファン。首相は歌の一節を口ずさみ、身ぶり手ぶりでプレスリーのポーズをまねた。英語で「夢がかなった」と語った。

小泉氏にとって在任中最後の訪米だった。両首脳は特別な待遇を通じ、テロとの戦いなどで深めた日米同盟関係を改めて強調した。

ブッシュ氏がワシントン郊外にある大統領別荘「キャンプデービッド」にその年の4月に首相に就任した小泉氏を招いた。ブッシュ氏は小泉氏に革製のジャンパーと大統領直筆のサイン入り野球ボールを贈った。喜んだ小泉氏はボールをブッシュ氏にトス。ブッシュ氏は素手でキャッチした。野球好きで２人は共通していた。

その年の９月、米同時テロが起きる。小泉氏はブッシュ氏の「テロとの戦い」への支持を打ち出し、インド洋に海上自衛隊を後方支援のため派遣した。03年にはイラクにも自衛隊を送った。

ブッシュ大統領（第41代）が海部俊樹首相夫妻を米メーン州ケネバンクポートにある別荘に招いた。家族を交えた歓迎で親密さを演出した。ブッシュ氏は会談後に「これからボートにお乗せする」と海部氏に呼びかけ、自ら操縦かんを握って猛スピードで疾走した。

ブッシュ氏は前の年の会談で湾岸諸国への日本の支援の遅れに注文を付けていた。貿易摩擦を巡っても日米構造協議が進まないことなどにいら立ちを募らせた経緯があった。91年は１月に湾岸戦争が起き、日本は多国籍軍への90億ドルの追加支援を打ち出した。４月の西海岸ニューポートビーチでの首脳会談では海部氏がブッシュ氏の指導力を称賛していた。

中曽根康弘首相はレーガン大統領夫妻を自然に囲まれた自身の別荘「日の出山荘」（東京都日の出町）に迎えた。囲炉裏を囲んでたてた抹茶、天ぷらや煮物といった日本料理をふるまい、大統領夫妻に「ちゃんちゃんこ」を贈った。

前年11月に首相に就いた中曽根氏は防衛協力や通商を巡りギクシャクしていた日米関係の立て直しに力を注いでいた。「防衛費1%枠」の撤廃などを打ち出し、83年1月の訪米で日米両国は太平洋を挟む「運命共同体」という認識を表明した。レーガン氏とも積極的な対話を通じて「ロン・ヤス」と呼ばれる親密な関係を描き出した。

岸信介首相は初の訪米でアイゼンハワー大統領とワシントン近郊にある名門クラブ、バーニング・ツリー・カントリークラブでプレーした。日米首脳がゴルフをともにしたのはこのときが初めてだった。安倍晋三前首相は祖父である岸氏から「目の前でホールを外して悔しがるアイゼンハワーの姿を見て、2人の距離は急速に縮まった」と聞かされたという。

日米安全保障条約の改定に向けた協議に道筋をつけた両首脳のもと、日米は1960年に新条約締結にこぎつける。同年には大統領の史上初の来日も調整したが、日本国内の条約への激しい反対運動を受け実現しなかった。