TOKYO STORY

携帯データでわかった
新ベッドタウン

より近く、より遠く

東京都心で働く人のベッドタウンはどこか。携帯電話の移動データをもとに調べたところ、その現実が浮かび上がった。都心5区への通勤者が多く住む上位50駅は、ビジネス街の駅までの所要時間が平均16.1分。20分を切る近さで、遠い郊外から都心に通うスタイルは主流ではなくなった。一方で群馬や長野から新幹線で通う人も目立つ。通勤圏が「より近く、より遠く」なっている。

調査データについて

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ベッドタウンTOP50

オフィス街が集中する東京の都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)で働く人が、どこから通っているのか。NTTドコモの携帯電話の移動データを分析して、半径1キロメートル以内に住む人が多いベッドタウン駅TOP50を地図上に示した。

最も多い世代

家賃相場(1LDK)

    主なビジネス街駅までの所要時間は、朝の通勤時間帯を前提に、鉄道事業者や民間の検索サイトで調べた最短時間。家賃相場はリクルートの住宅・不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」で公開している駅別の家賃相場(1LDKのマンション、築年数0~5年、駅から徒歩5~10分の家賃相場。3月26日時点)

    200位まで見る

    50駅のうち、ビジネス街駅までの所要時間が10分以内のところは中野新橋(東京都中野区、新宿まで7分)や新高円寺(同杉並区、新宿まで9分)、初台(同渋谷区、新宿まで3分)など18駅あった。20分以内で見ると計34駅あり、近距離通勤の志向が強い。ベッドタウン駅周辺の家賃(リクルート住まいカンパニー調べ)相場は幅があり、50駅のうち、1LDKのマンション(築年数0~5年、駅徒歩5~10分)で最も高かったのは中目黒(同目黒区、17.4万円)、最も安かったのは西武柳沢(同西東京市、8.7万円)で、9万円近くの差があった。

    ビジネス街まで10分以内の駅、
    家賃がお得なのは?

    家賃が安いのは
    1 新中野 新宿まで6分 11.8万円
    2 中井 西武新宿まで8分 12.4万円
    3 新高円寺 新宿まで9分 12.6万円
    3 高円寺 新宿まで10分 12.6万円
    3 東松原 渋谷まで10分 12.6万円
    家賃が高いのは
    1 中目黒 渋谷まで3分 17.4万円
    2 初台 新宿まで3分 15.1万円
    3 東北沢 新宿まで10分 14.7万円
    4 学芸大学 渋谷まで7分 14.2万円
    5 幡ケ谷 新宿まで5分 14.1万円
    5 茗荷谷 大手町まで10分 14.1万円

    ベッドタウン駅TOP50のうち、ビジネス街がある駅まで最短10分で行ける駅の家賃を比べた。駅周辺の家賃が手ごろなのは新中野(中野区)、中井(新宿区)、新高円寺(杉並区)など。大型の商業施設が駅周辺にない一方で、静かな住宅街が広がり、下町風情も一部に残しながら新宿に乗り換えなしで行けるのが特徴だ。

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    TOP3はこんな街

    1位・三鷹(東京都三鷹市)、2位・葛西(同江戸川区)、3位・中野新橋(同中野区)。東京都心に通う人たちが住むトップ3駅の顔ぶれを見てみよう。

    三鷹

    人気スポット三鷹の森ジブリ美術館は駅から歩いて15分ほど

    1位 三鷹
    住みたい街のとなり駅

    リクルート住まいカンパニー(東京都港区)が毎年発表する「住みたい街ランキング」。2018年の関東版で三鷹は38位(17年は28位、16年は21位)と、それほど上位ではない。その三鷹が今回の移動データ調査で1位になった。注目したのは「住みたい街ランキング」の上位常連駅、吉祥寺(18年3位、17年1位、16年2位)のとなり駅だということ。三鷹駅近くの不動産会社担当者は「おしゃれな雰囲気で商業施設も充実した吉祥寺は憧れの街。ただ駅近の物件はやや狭く割高で、数も少ない」と明かす。不動産情報サイト「SUUMO」の家賃相場で、吉祥寺は12万7000円(マンション、1LDK、築年数0~5年、駅徒歩5~10分)。三鷹はこれより7000円安い。

    移動データでわかった
    住んでいる街ランク
    住みたい街
    ランク
    三鷹 1位 38位
    吉祥寺 150位 3位

    三鷹駅の北側は吉祥寺と同じ武蔵野市で閑静な住宅街が広がる。一方、南側は三鷹市となり、駅周辺は飲食店を中心に商業施設が多い。南口の玉川上水沿いの桜並木を抜ければ、人気スポットの三鷹の森ジブリ美術館に行き着く。鉄道ではJR総武線、東京メトロ東西線の始発駅で、JR中央線は特別快速が停車する。吉祥寺までの所要時間は3分、新宿までは約20分。さらに駅からは多くの路線バスの発着がある。

    葛西

    東西線葛西駅前の交差点。環状7号線が通り、駅前に大きなマンションが建つ

    2位 葛西
    東京の端でも便利
    女性比率は低め

    葛西駅は、東京メトロ東西線の東京都内の駅でいちばん東にある駅で、となりは千葉県の浦安駅。「東京の端」の駅ながら、都心の日本橋や大手町まで20分かからずに行ける交通の便のよさがある。1LDKの家賃相場(マンション、駅から徒歩5~10分、築年数0~5年)は10.1万円で、ベッドタウンTOP50の平均相場(11.9万円)より2万円近く安く、TOP50に入った東京23区内の駅で3番目に安かった。葛西駅周辺に住んで都心5区に通う人のうち、女性は43%で全体平均(46%)よりやや低い。男性では20代の比率が高く、単身世帯が多い傾向がうかがえる。

    中野新橋

    神田川沿いに立つマンションの向こうには新宿の高層ビル群が間近に見える

    3位 中野新橋
    独身世代が巣立つ
    エアポケット

    中野新橋は東京メトロ丸ノ内線の支線の駅で、若い世代が多く住む。駅の半径1キロ圏内に住む都心5区への通勤者は20~30代が全体の60%。全体平均より6ポイント高い。築年数0~5年、駅から徒歩5~10分のワンルームの家賃相場は約8万円。近くの主要駅の中野駅周辺より1万5千円ほど安い。「割安な独身向け物件が多く、彼らは結婚などで家族が増えると別の街へ巣立っていく」(中野新橋駅周辺の不動産業者)という。新宿までは3駅、直線距離は4㎞ほど。終電を逃しても、タクシーで比較的手ごろな値段で帰宅できる。住宅地の合間からは新宿の高層ビル群が間近に見え、都心のエアポケットのような静かなエリアだ。

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    新旧ベッドタウンを比べると

    日本の高度経済成長時代に開発が進んだベッドタウンと、タワーマンションが立ち並ぶ今どきのベッドタウン。年齢構成や働く男女の割合を比べてみた。

    ベッドタウンマップ

    タワマン林立の武蔵小杉
    20~30代が6割超

    駅周辺でタワーマンションの建設が相次ぐ武蔵小杉(川崎市)。新幹線が停車する品川駅まで11分の近さだ。JRと東急電鉄を合わせた乗降客数は16年に30万人を超え、11年と比べると2割近く増えている。今回の移動データ調査では、神奈川県で唯一トップ10入り(8位)した。駅の利用者で都心5区に通勤する人のうち、20~30代の割合は62%。若い世代の流入が多く、全体平均(54%)を超える。

    60代 2%

    20~30代 62%

    40~50代 36%

    田園都市線沿線3駅
    40~50代率は平均を上回る

    東京の渋谷駅から神奈川県大和市方面へ延びる東急田園都市線。1984年の全線開通と合わせて、ベッドタウンとして沿線の住宅地整備が進んだ。急行が停車する鷺沼、たまプラーザ、あざみ野の3駅から都心5区に通勤する人は、40~50代が45%で全体の平均(41%)を上回り、年齢構成が高齢にシフトしている。今回調査したベッドタウン駅ランキングでは鷺沼が29位、たまプラーザが199位、あざみ野は200位以下だった。

    60代 6%

    20~30代 49%

    40~50代 45%

    多摩ニュータウン6駅
    都心勤務の女性割合は低く

    1970年代初めに入居が始まった多摩ニュータウン。東京都稲城市、多摩市、八王子市に位置する6駅(多摩センター、永山、唐木田、堀之内、若葉台、南大沢)から都心5区に通う人は、40~50代の割合が平均より高い。また、女性比率が全体の33%と平均(46%)を大きく下回り、都心まで通って働く女性が少ない。ベッドタウン駅ランキングでは6駅とも200位以下だった。

    60代 5%

    20~30代 49%

    40~50代 46%

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    高崎や宇都宮
    新幹線通勤派も

    携帯電話の移動データで東京都心への通勤者を追ったところ、東京、神奈川、埼玉といった「東京圏」の外側から一定数の通勤者がいることがわかった。

    東京圏外通勤者マップ

    携帯電話の移動データで、東京都心5区への一定数の通勤者が確認できた駅を示した

  • 新幹線
  • 在来線
  • 例えば上越・北陸新幹線の高崎駅(東京から54分)とその周辺駅から推計で400人超が都心5区に通勤している。東北新幹線の宇都宮駅(東京から54分)とその周辺駅からも200人程度の通勤者がいた。実際、17年3月時点で、JR東日本の新幹線定期利用者の輸送量(人数×距離)は10年前と比べて48%伸びている。

    若い世代や子育て世代の定住を促すために、新幹線の定期代を補助する自治体もある。栃木県小山市では新卒者や40歳未満の転入者などが利用する新幹線定期券の購入費用を補助する制度(月額1万円、最大36カ月補助)を17年に始めている。

    取材・制作
    板津直快、今村大介、北爪匡、安田翔平、清水正行

    モバイル空間統計

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