HEAT TOKYO #01

どこが暑いのか

HEAT TOKYO #02

いつから暑いのか

HEAT TOKYO #03

どうすればよいのか

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ヒートアイランド、
熱波は練馬へ

観測史上初めて6月に梅雨が明けた東京。記録的な長雨だった2017年とは打って変わり、今夏は猛烈な暑さが続く。急速な都市化により、この100年で東京の気温は3度以上も上昇。2020年の東京五輪も厳しい暑さの中で開催される可能性が高い。ヒートアイランド対策の取り組みは10年以上続くが、ゴールは遠く、天気予報に一喜一憂する夏が繰り返されている。

東京
23区

HEAT TOKYO #01

どこが暑いのか

23区内で温度差

  • 練馬区
  • 千代田区
  • 江戸川区
  • DATA 01

    都内の主な地点の最高気温

    気象庁の2018年のデータをもとに作成

    気象庁の観測データをもとに、梅雨明け後の6月29日から7月18日まで、内陸部の練馬区、都心の千代田区、臨海部の江戸川区の最高気温を比べた。この期間の最高気温の平均は練馬区が33.6度、江戸川区が30.1度。3.5度の差があり、5度以上の差がある日もあった。

    地図で見ると

    2002〜2015年平均

    2009年(冷夏)

    2010年(猛暑)

    割合低

    凡例

    割合高

    DATA 02

    気温30度以上の時間割合の高低

    東京都環境局「大気汚染常時監視測定局データ」を基に作成。各年の7月20日~9月30日の間、東京23区内の17地点で観測した気温を用いた

    ヒートアイランドとは、空調機器や自動車による人工的な排熱で気温が上昇し、島のようにあらわれる暑いエリアのこと。大都市で顕著な現象だ。アスファルトの道路や高層ビルのコンクリートが熱を蓄え、日中の暑さだけでなく熱帯夜も呼び込む。
     同じ東京の中でも、熱気が集中するエリアがある。東京23区内で30度を超えた時間の割合が高い地点を赤く示すと、都心部のほか北部にも熱が広がる。これは、2009年のような冷夏、10年のような猛暑であっても傾向は同じだ。

    熱波は練馬へ

    最も暑い地域
    1 千代田
    (千代田区)
    466時間
    2 練馬
    (練馬区)
    410時間
    3 練馬北町
    (練馬区)
    408時間
    4 西新井
    (足立区)
    390時間
    5 世田谷
    (世田谷区)
    377時間
    最も涼しい地域
    17 春江町
    (江戸川区)
    237時間
    16 成城
    (世田谷区)
    251時間
    15 南葛西
    (江戸川区)
    254時間
    14 台場
    (港区)
    275時間
    13 鹿骨
    (江戸川区)
    333時間

    DATA 03

    気温30度以上の時間数

    期間は2002年から2015年の7月20日~9月30日。東京都環境局「大気汚染常時監視測定局データ」を基に作成。観測した17地点でランキング

    観測地点ごとに30度超の時間割合を見ると、都心部の千代田区と北部の練馬区が暑い。東京都環境科学研究所の研究員、常松展充氏は「東京湾からの距離が遠いため海風が都心で遮られ、かつ都心の人工排熱で暖められた風が流れこみ、気温が下がりにくくなっている」と解説する。北部は都心部の人工排熱の余波を受けているというわけだ。

    最涼は江戸川

    凡例

    TIME

    DATA 04

    2002年から2015年までの
    8月の平均気温

    東京都環境局「大気汚染常時監視測定局データ」を基に、1日の気温の推移を動画で作成

    2002年から15年までの8月の平均気温をもとに、各地区の1日の気温の動きを見てみよう。地図の真ん中にある千代田区周辺は都市活動による排熱、蓄熱が多く、昼も夜も気温が高い。一方、練馬区は都心部で暖められた風が流れ込み、昼は気温が高いが、都市活動による蓄熱は少ないため、夜は気温が下がる。23区で涼しいのは江戸川区。東京湾から吹いてくる涼しい風が、荒川の上空をつたって流れ込みやすいためだ。

    HEAT TOKYO #02

    いつから暑いのか

    100年で3度上昇
    2度分はヒートアイランド

  • 東京
  • 日本
  • 世界
  • DATA 05

    世界・日本・東京の
    年平均気温の変化

    1981~2010年平均からの偏差。1900年を0とした。東京の観測地点は2014年に移転。均質になるようデータを補正した。気象庁のデータを基に作成

    東京が暑いのは地球の温暖化によるものではないのか――。1900年以降の温度の上昇率を見ると、東京の上がり幅は日本全国の平均、世界全体の平均と比べても圧倒的に大きい。日本全国では1度の上昇なのに対し東京はおよそ3度も暑くなっていることから、東京都環境科学研究所の安藤晴夫氏は「3度のうち1度が温暖化で、2度はヒートアイランド現象によるものだろう」と分析する。

    HEAT TOKYO #03

    どうすればよいのか

    海風を内陸へ

    1

    2

    3

    風の道全体図

    東京湾から内陸に入り込む風の流れ方や向きをシミュレーション。足永靖信氏・鍵屋浩司氏「ヒートアイランド対策に資する『風の道』を活用した都市づくりガイドライン」(国土交通省国土技術政策総合研究所資料)を参考にして作成

    江戸川区など海風が入りやすい地区が涼しいのは、ここまで見てきたデータが示す通り。ならば、高層ビルなどが遮る東京湾からの風をうまく行き渡らせれば、暑さをおさえることができるはず。そんな構想から「風の道」を確保する都市開発が進んでいる。

    東京

    東京駅

    1

    東京駅の八重洲口にそびえ立っていた高さ約60メートルの鉄道会館。八重洲通り(写真の下側から駅まで)から入る風を遮り、北側(写真の皇居方面)の気温が上昇する一因とされていた。これを09年に撤去し、新たに建てたビルも風の通り道に配慮して駅の両サイドに配置した。

    品川

    写真提供・NTT都市開発

    品川

    2

    品川・田町駅周辺は東京都主導で風の道を設定している。臨海部の再開発の際、無秩序に建ったビルによって「海風が入りにくくなり、気温が上昇した」という批判が相次いたことが背景だ。都は14年にガイドラインを作成。地上50メートルの地点で、夏の日中に吹く南南東の風が一定の速さで確保できるルートを「風の道」に設定した。このルートに建物を建てる場合は、ビルの向きや高さなどに配慮を求めている。

    大崎

    写真提供・品川区都市環境部都市開発課

    大崎

    3

    川に沿って吹く風を街の中に行き渡らせているのが大崎地区だ。官民でつくる再開発連絡会が04年にまとめたガイドラインで、この地区を流れる目黒川を活用したヒートアイランド対策が盛り込まれた。もともと目黒川に対して「逆ハの字型」に道路が延びる地の利を生かし、東京湾から目黒川をつたって流れる風が市街地に抜けていくようにした。駅周辺の再開発ビルは、目黒川からの「風の道」を確保する設計が施されている。

    道半ばの対策
    点から面へ

    国や都は、都市開発の際に風の道への配慮を促すガイドラインを示している。しかし、取り組みは「点」にとどまり、東京都全体を「面」で冷やす効果は表れていない。風の道に次ぐ2つの「面」の取り組みを見てみよう。

    緑化

    東京都は都電荒川線で軌道の緑化実験に取り組んでいる。これまで荒川車庫前停留場付近のみで実施していたが、2018年3月に3カ所に拡大。比較的乾燥に強く管理の手間がかからないとされる多肉植物のセダム属を敷き詰め、温度変化を測定している

    緑地は増えているのか

    緑地を増やすのも代表的なヒートアイランド対策の一つだ。そこで指標となるのが「みどり率」。緑が地表を覆う部分に公園などを加えた面積が地域全体に占める割合をさす。
     東京都区部では03年から10年で横ばい状態が続いている。都が公園整備や校庭の芝生化、ビルの屋上緑化を推進しているが、急ピッチで進むオフィスビルの建設など、都市化がそれを上回るペースで進んでいる。

    東京都区部のみどり率

  • 公園・緑地
  • 農用地
  • 水面・河川
  • 樹林・原野・草地
  • 東京都環境局調査

    高温対策道路

    薄い灰色の路面(写真奥)が遮熱性舗装。サーモグラフィーでは、通常の舗装は高温(約46度)で赤く、遮熱性舗装は低温(約38度)のため青くなった

    道路の温度を8度抑える

    もう一つの切り札が道路の舗装だ。現在の主流は「遮熱性舗装」と呼ばれる手法。路面に赤外線を反射する遮熱性樹脂などを塗り、昼に熱が蓄えられるのを抑える。夜には路面からの熱の放射を抑えるため、熱帯夜を防ぐ効果も。一般のアスファルト舗装に比べ、夏の路面の温度を最大で8度抑えられるという。ただ、対策が進んでいるのは東京23区内の国・都道では約1割にすぎない。

    対策済み道路
    11%

    未対策道路
    89%

    ヒートアイランド対策道路はまだわずか

    東京都区部の国・都道(約1040キロメートル、2017年4月1日時点)が対象。そのうち対策済みは計約121キロ―メートル。
    区道などは含まない。東京都と国土交通省に取材し作成

    打ち水頼み? 遠いゴール

    ミスト

    江戸川区にある東京メトロ西葛西駅前の都営バス停留所に霧状の水を吹き出す装置が設置された。気温が28度以上になるなどの条件で稼働し、局所的に気温を下げる狙い

    緑化などを柱とする「ヒートアイランド対策ガイドライン」を東京都が策定したのは2005年。その後、都は様々な対策を講じている。目立つのは、その場の暑さを和らげる方法だ。 打ち水はあたりの空気がひんやりする効果があり、イベントと合わせた啓発活動として広がっている。細かい霧を噴霧する方法もひとときの清涼感を得るには効果的だ。ただ、ヒートアイランド研究を進める首都大学東京の三上岳彦名誉教授は「目に見える方法に走りがち。やはり根本の原因に向かい合わなければ、本当の対策は打てない」と話す。都市全体を冷やすには、東京を面でとらえた手法のほか人工排熱の抑制も欠かせない。東京五輪まであと2年。対策のゴールは遠い。

    取材・制作
    板津直快、鈴木洋介、夏目祐介、安田翔平、清水正行

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