苦難の東京五輪
延期で揺れたこの1年
近代五輪史上初の延期となった東京五輪。新型コロナウイルスの世界的流行のなかで街のにぎわいは消え、人々はマスクとの生活を強いられている。代表選手は1年延期を新たな挑戦と捉え、自らを鍛え直す日々が続いた。7月23日の開会式を控え、この1年を振り返る。
五輪史上初の
延期決定
2020/3/24
安倍晋三首相(当時)は2020年3月24日、IOCのバッハ会長と東京五輪・パラリンピックを1年延長することで合意した。「東京2020」の大会名称は維持を決めた。新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、選手らの準備期間も踏まえ判断した。
2020/3/25
東京五輪・パラリンピックの開催延期が決まりJR東京駅のカウントダウンクロックは開会式までの残り日数から、「25-3(3月25日)」の日付けに切り替わった。
2020/3/25
千葉県庁に設置されている看板では、カウントダウンの数字を隠す作業が行われた。
初の緊急事態宣言、
人が消えた
2020/4/29
4月7日に東京や神奈川など7都府県で初の緊急事態宣言が発令された。大型連休の4月29日にも関わらず閑散とする東京・銀座。東京都では外出自粛を呼び掛けた「ステイホーム週間」を強く求めた。
2020/8/5
緊急事態宣言の解除から2カ月以上経った8月初め、東京・お台場の五輪マークのモニュメント付近でマスク姿で散歩をする人たち。4月7日に発令された緊急事態宣言が5月25日に解除されたものの、7月29日には国内の新規感染者が初めて1日1000人を超した。
2020/11/16
東京五輪を巡る会談を前にIOCのバッハ会長(左)とグータッチを交わす菅首相。東京五輪・パラリンピックを必ず実現するとの方針で一致した。11月18日には国内の新規感染者が初の1日2000人を突破した。
歓声なき
プロスポーツ
2020/6/19
プロ野球が約3カ月遅れで開幕し、公式戦としては史上初の無観客試合で開催された巨人-阪神戦。7月からは観客上限5000人で開催した。
2020/7/4
2月の開幕直後から中断していたサッカーのJ1リーグが4カ月ぶりに無観客で再開した。観客制限に加え、客席を1席ずつ空けるなどの感染対策を実施を行った。
2021/5/9
大相撲夏場所の初日を迎え、無観客の両国国技館で協会あいさつをする八角理事長と三役力士ら。昨年の夏場所は中止となり、角界でも複数の感染者が確認された。
森会長
女性蔑視発言巡り
辞任
2021/2/12
東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の会長を辞任した森喜朗会長(右)。女性を蔑視した発言に批判が殺到した。森会長から後任として打診され、いったん受諾した川淵三郎氏は辞退。不透明な選考手続きは「密室体質」を浮かび上がらせた。
2021/2/19
東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長になった橋本聖子氏(左)が、東京都知事の小池百合子氏を訪れた。橋本会長は日本選手として初めて冬と夏両方の五輪に出場、合計7回の出場は日本女子最多。
不安も抱え
聖火リレー
2021/3/25
福島県楢葉町の聖火リレーの出発式に参加した東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本会長ら。121日間かけて全国の市区町村を巡り、7月23日に国立競技場の開会式に聖火を届ける。
2021/3/25
福島県広野町の聖火リレーコース沿いで小旗を手にする児童。旗の日付は、延期前のリレー出発予定日の「2020.3.26」となっていた。組織委は沿道での観覧は禁止しない一方、インターネット中継の視聴を推奨した。
2021/4/14
大阪府吹田市の万博記念公園で行われた聖火リレーで、マスク姿で聖火の引き継ぎを待つランナー。一部自治体では公道での聖火リレーを取りやめるケースもあった。
エース
難病から復帰
代表選考も進む
2021/4/4
東京五輪代表選考会を兼ねた競泳の日本選手権の女子100メートルバタフライ決勝で優勝し、観客席に向かってガッツポーズする池江璃花子選手。白血病との闘病を経て五輪代表に内定した。
2021/4/11
石川県輪島市で行われた東京五輪代表選考会を兼ねた日本選手権50キロ競歩。沿道に集まった人たちは声を出さずうちわなどで応援していた。
2021/5/8
東京・有明体操競技場で行われた五輪のテストイベントで演技を終え、マスクを着けて待機する新体操団体の日本代表「フェアリージャパン」。
2021/5/9
各競技の代表選考が進むなか、東京五輪陸上テストイベントが行われた国立競技場。この時点では観客数の上限人数など決まっていなかった。
消えぬマスク
迫る本番
2021/5/28
東京五輪・パラリンピックのバナーが掲げられた東京・渋谷のセンター街をマスク姿で行き交う人たち。五輪ムードの熱気はまだ見られない。
2021/6/1
来日し、群馬県太田市のホテルに到着したソフトボールの女子オーストラリア代表。来日の全員が新型コロナのワクチンを接種済み。毎日PCR検査を受け、行動範囲は練習会場の球場とホテルに限定された。
競技場観客
最大1万人で決着
2021/6/21
5者協議に出席した(左から)東京都の小池知事、大会組織委の橋本会長、IOCのバッハ会長、丸川珠代五輪相。五輪会場の観客数上限を定員の50%以内で、最大1万人とすることを正式に決めた。