誰が
インフルエンサー
だったのか
Japan Election : Twitter Reacts
Introduction
SNSの情報発信源として強い影響力を持つ人をインフルエンサー(influencer)と呼ぶ。日本でツイッター投稿が盛り上がった10月の衆院選を分析すると、選挙のインフルエンサーの意外な姿が浮かび上がった。
データ出所:NTTデータ。リツイート含む。年代はNTTデータが推定した
もっとも注目されたTweetは
トランプ氏の4倍
衆院選期間中の「選挙」にかかわるつぶやきをリツイート数の多い順にランク付けしたところ、トップ5はすべて4万を超え、最も多いもので9万近くに上った(10月下旬)。頻繁なツイッター発信で知られるアメリカのトランプ大統領でも、11月の来日時のつぶやきでみればリツイート数は多くて2万台。ランキング上位のつぶやきはトランプ氏の倍以上の影響力があったことになる。上位に並んだのは、投票を呼びかける前向きなつぶやきだ。
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RANK
Tweet
DATE
RT
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1
なんか友達が「はじめて真面目に選挙に臨もう」と思って市内走り回った結果のまとめがすごかったので許可取ってお披露目しようと思う(゚д゚)選挙の参考になれば https://t.co/W0DeFABFmDTweetを見る
10/18 20:46
RT 89,579
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2
若い人に投票所に行ってほしい。別にオレの1票がなくても当落に関係ないでしょ?と言われる。違うよ、若い人の投票率が増えれば、政治家は看過出来なくなるんだよ。若者向けの政策を打ち出すようになるんだ。投票しない若者は政治家からすれば、存在しない人の扱いなんだ。そこを判ってほしいんだよ。Tweetを見る
10/11 02:28
RT 55,907
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3
「何でオタ活の時間を犠牲にして投票しなくちゃいけないんだよ!」と思う気持ちは分かります。ですが、「政治はその気になればいつでも私達のオタ活を殺せる」事を示す大きな出来事が、ほんの1年半~2年ほど前に立て続けに起きたばかりです。選挙… https://t.co/kU15LBZz9zTweetを見る
10/11 12:33
RT 51,511
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4
18・19歳が有権者となり参加した前回の参院選では、10代投票率は46.78%と20代30代の投票率を上回る結果に。そのためか大学授業料減免や返済不要の奨学金など、若干ではあるが10代向けの政策が目立つようになった。正直楽に暮らし… https://t.co/Dzf8hYn5WSTweetを見る
10/14 16:42
RT 50,685
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5
期日前投票の列に並ぼうとする→「最後尾はこちら」の看板を持ってる人から看板をもらおうとする→係官「???」→ぼく「???」→係官「?????」→ぼく(あっこれ同人イベントじゃない)Tweetを見る
10/21 15:26
RT 43,094
選挙関連Tweetのリツイートランキング
選挙戦を注目されたTweetで振り返る
選挙戦で反響の大きかった代表的なツイートをタイムラインで振り返る。バブル(円)チャートはリツイート数の多い上位300を時系列順に並べたもので、円が大きいほど大勢の人が見たつぶやきをあらわす。
ツイート。RT数が多いほど円が大きい
注目ツイートタイムライン
10/11 12:33
「何でオタ活の時間を犠牲にして投票しなくちゃいけないんだよ!」と思う気持ちは分かります。ですが、「政治はその気になればいつでも私達のオタ活を殺せる」事を示す大きな出来事が、ほんの1年半~2年ほど前に立て続けに起きたばかりです。選挙に行かずして政治に歯止めをかけることは不可能です。 pic.twitter.com/TTtIw4ztCI
— 温泉半熟卵 (@UL14_MITINOKU) 2017年10月11日
キーワード「オタ」の年代別出現順位
「オタク」とはいわず「オタ」。アニメや漫画に慣れ親しんだ世代への語りかけは若い世代の共感を呼んだ。すべての選挙関連ツイートのうち「オタ」への言及回数を順位付けすると、10代のつぶやきでは45位、20代は41位、30代はかなり下がって341位だ。40代と50代ではランク外となった。
10/11 13:43
最近総選挙があったドイツからきているエディターと話した。
— 古田大輔 (@masurakusuo) 2017年10月11日
「選挙どうだった?」
「退屈だったよ」
「投票率は?」
「80%ぐらい」
「なんでそんなに高いの?」
「特別なことはないよ。盛り上がらない選挙でも、投票しない人は、政治に何も言えないという意識があるだけ」
10/12 00:53
インフルエンザの予防接種が年寄りは公的補助があって1500円なのに、子供は3500円×2回で7000円!重症化しやすいのは子供もなんだから、子供の方こそ補助だせ!!
— yukkii@CC熊本B72a (@yukkii1119) 2017年10月11日
って、毎年この時期に思うので。みなさん、選挙いこう…。若い人の投票率があがらないと、年寄り向けの政策になるよ…。
キーワード「若い人」の年代別出現順位
高齢者向けの政策が重視される「シルバー民主主義」への危機感を訴えるツイートだ。選挙のつぶやきで「若い人」に触れた回数は40~50代より10~20代で上位になった。
10/12 09:24
それ。絶対そうなる。必ず若い世代に利益があることを政治家がやり始めるよ。『現役世代の収入上げろ!子供を持つ家庭に手厚い保障!』ってなってお金回って来て良い生活できるようになるよ。若い世代は今みんな生活キツイ。投票行った方がいいマジで。むしろ『行かない=ずっと貧しくていい』になる。 https://t.co/wmNITJfu8C
— だんなマン、@育児鎮守府 少尉 (@tatsunami) 2017年10月12日
10/12 17:38
今回の選挙「誰が子ども達の未来を切り拓いていくのか。」ということも問われている大きなテーマです。
— 安倍晋三 (@AbeShinzo) 2017年10月12日
少子化によって転換期を迎えている日本。私達自民党は全ての子ども達の可能性を、しっかりとした全世代型の社会保障制度によって支えて参ります。 pic.twitter.com/JJrYNlvXfl
安倍晋三首相のつぶやきはトップ300に10件入った。9月13日のインド訪問からツイッターをおよそ7カ月ぶりに再開。同30日から選挙戦にかけて積極発信した。
10/12 23:23
18歳で初めて投票する人は、親の意見をきくかもしれませんね。なら忘れないでほしい。あなたがこれから学び、働き、一人であるいは家族と生きていく世の中は、親がすでに生きたものとは違います。だから親と違う選択をしても構わない。どこに投票したかも言わなくていい。それが自立の始まりです。
— 小島慶子 (@account_kkojima) 2017年10月12日
10/14 16:42
18・19歳が有権者となり参加した前回の参院選では、10代投票率は46.78%と20代30代の投票率を上回る結果に。そのためか大学授業料減免や返済不要の奨学金など、若干ではあるが10代向けの政策が目立つようになった。正直楽に暮らしたいやろ。投票率上げるしかないんや… pic.twitter.com/xutm5OOryk
— しろん (@Shirono_hiou) 2017年10月14日
いい事言うなあ
— のりつけ雅春 幸せ8巻発売中 (@zenbutukawarete) 2017年10月15日
レッツ投票!! https://t.co/RWbVuA0NbQ
キーワード「奨学金」の年代別出現順位
10~20代に目立ったキーワードの一つは「奨学金」だ。教育無償化を与野党がこぞって訴えていた。リツイート回数の4位になったつぶやきも奨学金に触れている。添付画像は人気漫画「しあわせアフロ田中」4巻のセリフを変えて投票に行く大切さを呼びかけたもので、原作者もリツイートした。
10/18 20:46
なんか友達が「はじめて真面目に選挙に臨もう」と思って市内走り回った結果のまとめがすごかったので許可取ってお披露目しようと思う(゚д゚)
— 鉄リン㌠ (@tetsulink) 2017年10月18日
選挙の参考になれば pic.twitter.com/W0DeFABFmD
リツイート回数が最も多かったつぶやきは、各党の政策スタンスや理念、情勢調査による獲得議席予想をグラフィックでコンパクトにまとめたものだった。若い世代はひと目で政策がわかる一覧に敏感に反応する。政策への関心の強さがあらわれている。
10/21 15:26
期日前投票の列に並ぼうとする →「最後尾はこちら」の看板を持ってる人から看板をもらおうとする →係官「???」 →ぼく「???」 →係官「?????」 →ぼく(あっこれ同人イベントじゃない)
— ジャカルタ読み専ブラザーズ (@_oinarisan_) 2017年10月21日
キーワード「係官」の年代別出現順位
同人誌のイベントで行列ができると、最後に並んだ人が「最後尾はこちら」の看板を持つのが暗黙のルール。各地の期日前投票所に行列ができた10月21日、同人誌イベントに慣れた人にとっては、なぜ「係官」の人が一人で看板を持ち続けているのか不思議だったに違いない。キーワード「係官」は40~50代ではランキングの圏外だった。硬い話題と柔らかいトピックを同時に扱う世代ならではだ。
10/22 08:43
「投票用紙持ち帰りやめてー!数が合わないと大騒ぎで探す回って大変だからやめてー!」といツイートをみたが、まさにおばちゃんが最高裁判官の投票用紙をナチュラルに鞄にいれてもちかえろうとして係員が総出で「大変なことになるから!」止めていた現場に居合わせた。必死さから現場の苦労を見た…
— ベキベッキー (@nyamuresuka) 2017年10月21日
投票所での一場面を描いたツイート。公正さを保つため選挙管理委員会も懸命だ。日本の行政のまじめさをうかがわせた。
10/22 12:55
タダで投票できるなんて夢のようだ。AKBなんて1票2,000円だぞ。
— 吉田広志 (@takabee1970) 2017年10月22日
10/23 10:45
共産党は、沖縄1区で赤嶺再選を勝ち取りましたが、議席を12に減らす結果となりました。私たちの力不足であり、たいへんに残念です。ご支援に心から感謝いたします。
— 志位和夫 (@shiikazuo) 2017年10月23日
同時に、立憲民主党が躍進し、市民と野党の共闘勢力として議席を増やしたことは大きな喜びです。共闘をさらに発展させる決意です。
10/23 14:41
親愛なる友 @AbeShinzo、総選挙大勝利、心からお祝いを申し上げます。印日関係のさらなる強化のため、共に働き続けることを楽しみにしております。 pic.twitter.com/EWyERlZtvh
— Narendra Modi (@narendramodi) 2017年10月23日
選挙を終えて一夜明けた10月23日、インドのモディ首相がツイッターで安倍首相への祝意を伝えた。日本語のツイートは拡散され、リツイート回数はトップ100に入った。
10/23 18:14
結党から20日。多くの皆さんのご支援のおかげさまで、衆議院選挙を戦い抜き、次へとつながる一定の成果をあげることができました。しかし、私たちの挑戦は、ここからスタートします。『上からの政治でなく、国民の皆さんと歩く草の根からの政治へ。』責任の重さを痛感しながら前へ進みます。
— 枝野幸男 (@edanoyukio0531) 2017年10月23日
政党党首では自民党の安倍総裁(首相)と立憲民主党の枝野幸男代表、共産党の志位和夫委員長がランクインした。安倍総裁のフォロワー数は約83万、枝野代表は約9万、志位委員長は約7万で、ツイッターでの自民・立憲民主・共産の「3極」対決を裏付けている。ただ、どれもリツイート回数で100位以内に入っていない。
BuzzFeed Japan 創刊編集長の古田大輔さんやタレントの小島慶子さんら知名度のある人のつぶやきも多く拡散された。リツイート回数で上位のツイートのほとんどは、フォロワー数のそれほど多くない一般の人だった。
年代別注目キーワードの順位
キーワード「北朝鮮」は全世代、
若い世代は「草」
すべての世代が多く触れたキーワードは「北朝鮮」だ。10~20代では同じくらいの順位に「草」がある。「草」はネット用語で「w」が変化したもの。「w」は「wara」つまり「笑」。
森友学園や加計学園の問題をあらわす「森友」「加計」は10~20代と30~50代の間に大きな差が出た。「排除」も30~50代の上位。希望の党の小池百合子代表(東京都知事)が民進党議員の合流を問われ「排除する」とした発言は小池氏自身のイメージに跳ね返った。
Summary
まとめ
衆院選では一般の人であっても共感される文章や画像が伴えば、大統領や首相を上回るインフルエンサーになった。反響を呼んだツイートは、受け止め方に他の世代と違いもみえる10~20代を意識していた。爆発的に広まるかどうかはつぶやきの中身次第。ツイッターの空間では著名人も一般人も、同じ地平に立っているといえそうだ。
- デザイン
- 安田翔平、久能弘嗣、佐藤健