米メタの最新の仮想現実(VR)ゴーグル「Meta Quest Pro」を分解調査した。民生機器では最高水準の没入感を実現する、内部の仕組みを3Dで見てみよう。使用部品を分析したところ、半導体や記憶装置、通信といった情報処理の中核を担う部品は米国製が中心だった。先端技術を巡る米中の対立が深まるなか、半導体は地政学リスクを回避しつつ、ディスプレーや基板はコストが低い中国製を使う調達戦略が浮き彫りとなった。分解調査は、電子機器の調査を手掛けるフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズ(東京・千代田)の協力を得て行った。

Proの部品原価
Quest 2の2.4倍

フォーマルハウトの推定によると、メタクエストプロの部品価格を積み上げた原価は約440ドルになった。旧モデルのクエスト2の約2.4倍だった。組み立てにかかる費用は含まれていないが、フォーマルハウトによると組み立ては台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業傘下の富士康科技集団(フォックスコン)の可能性が高いという。

部品原価に占める
中国製の割合は上昇

原価における国・地域別の比率は、中国の上昇が目立つ。中国は18%で「2」から14ポイント上昇した。順位は4位から2位に上がった。1位の米国で34%を占め、4ポイント上昇した。
フォーマルハウトの柏尾南壮ディレクターは「中国製品が採用されているのはディスプレーや筐体などで、メイン半導体などの重要部品は米国を中心に採用している」と指摘する。「中国製であれば米国の3割のコストで調達できるものもある」

中国企業の完全排除は困難

半導体はほとんどが米国メーカーだった。データを保存したり、データを処理したりする役割を担うものは中国製品を避けている可能性がある。一方、ディスプレーは中国メーカーで、高度な技術を要するアンテナを埋め込んだ筐体も中国製だった。フォーマルハウトの柏尾氏は「情報を表示するだけであれば中国企業でも問題ないと判断したのだろう」と推測する。ディスプレーの量子ドットをはじめとして中国企業は価格競争力だけでなく技術力も高くなり、もはや良い製品を作るためには中国企業を無視できなくなりつつある。

米国と中国とのハイテク分野の貿易摩擦が強まるなかでも、VR機器やスマホのような最先端のモバイル端末の開発や生産での中国の存在感は米中貿易摩擦の中でも存在感を増しているように見えた。