日本経済新聞社は働く女性2000人を対象に、女性活躍の現状などについて意識調査を実施した。職場での女性活躍への取り組みが進んだと感じる人が増える一方で、仕事と育児の両立に悩んで会社をやめようと思った経験のある人が増加。制度の充実や男性側の意識改革など、女性が活躍する社会の実現に向けた課題も明らかになった。

女性活躍「進んだ」25%

あなたの会社は女性活躍への 取り組みが進んだという 実感はありますか?

あなたの会社は女性活躍への取り組み が進んだという実感はありますか?

(注)四捨五入のため合計は100%にならない

勤務先で女性活躍が進んだという「実感がある」、「どちらかというと実感がある」人は計25.2%となり、2年前の調査を4.5ポイント上回った。徐々にではあるが、取り組みが広がっている様子はうかがえる。

実感がある、どちらかというと あると答えた理由 (複数回答・上位5つ)

実感がある、どちらかというと あると答えた理由 (複数回答・上位5つ)

結婚・出産しても仕事を続ける女性が増えた 51.3%
女性管理職の割合が増えた 38.2%
女性社員の割合が増えた 28.0%
女性の勤続年数が長くなった 25.6%
女性活躍推進のための組織ができた 15.5%
2019年

前回調査よりも増えた回答は「結婚・出産しても仕事を続ける女性が増えた」(8.1ポイント増)、「女性社員の割合が増えた」(5.7ポイント増)、「女性の勤続年数が長くなった」(4.5ポイント増)、「女性管理職の割合が増えた」(3.2ポイント増)。上位5つには入らなかったが、「女性のキャリア意識が向上した」(2.8ポイント増)も増えた。2年前に比べると、職場における女性のプレゼンスの向上やキャリア意識の高まりを実感している回答者が増えた。

女性活躍が進まない原因 (複数回答・上位5つ)

男性中心の企業組織風土 42.9%
男性は仕事で女性は家庭という性別役割分業意識 38.8%
育児とキャリアアップを両立できる環境が整っていない 38.7%
男性の家事・育児への不参加 34.4%
長時間労働を是とする働き方 30.4%
2019年

女性活躍が進まない原因として、「男性中心の企業組織風土」「男性は仕事で女性は家事という性別役割分業意識」が上位を占めた。6位の「旧態依然とした価値観を持つ管理職の存在」も含め、回答割合は前回と大きく変わらない。3人に1人は「育児とキャリアアップを両立できる環境整備」や「男性の家事・育児参加」を求めており、家事や育児がネックになっていることは間違いなさそうだ。
一方で、21%の人が「女性自身のキャリア意識の低さ」、5.7%の人が「女性の活躍は進んでいると感じる」と回答している。

今までに言われた 女性の活躍を阻むNGワード

「本当は女性に活躍してほしくないのでは」と「感じたことがある」人は前回調査から0.8ポイント減ったものの、19.6%と5人に1人の割合。20代(11.8%)、30代(21%)、40代(21.2%)、50代(24.2%)と年齢を重ねるごとに回答率が上がる。「お茶くみや電話番は女性の役割と強要」、「給与や昇格での男女差別」、「取引先が担当を男性に代えるよう要求」といった場面で感じた人が多かった。

仕事と育児、両立に課題

育児との両立中、仕事を やめようと思ったことがある と回答した女性の割合

育児との両立中 仕事をやめようと思ったことがある と回答した女性の割合

育児との兼ね合いで「仕事をやめようと思ったことがある」人は前回から1.8ポイント増の57.3%。「時間的に余裕がない」「体力的にきつい」など追い込まれた状況がやめようという気持ちに直結しているようだ。

仕事と子育てを両立するために もっとも重要だと思うもの (上位5つ)

上司や職場の理解 30.3%
夫の理解と協力 18.2%
両立支援制度を気兼ねなく利用できる風土づくり 14.5%
会社の両立支援制度の充実 10.9%
在宅勤務など柔軟な働き方の導入 10.4%
2019年

両立のために重要なのは「上司や職場の理解」とする人は前回に続いて最も多かった。子育てまっただ中であろう20代、30代では育児期間中のキャリア継続への不安を訴える人も多く、職場環境の整備は急務と言える。「夫の理解と協力」は前回比3ポイント増。育休を取りやすくするなど男性が育児に参加できるような取り組みも欠かせない。

取材を終えて

4人に1人が「職場で女性活躍が進んだと実感」
仕事と育児との両立への悩みは依然多い
職場や家庭での男性の意識改革が不可欠

政府や企業が進めようと躍起になっている男性の家事・育児への参加。厚生労働省によると、2018年度に育児休業を取得した男性の割合はわずか6.16%。それでも過去最高だった。
女性側の受け止め方は微妙だ。今回の調査で女性が活躍できる社会づくりについて「進んだ実感がない」「どちらかというと実感がない」という人は59.4%だった。最も多い理由は「男性の家事・育児参加が進んでいない」。政府や企業が進める女性活躍についての意見を求める設問に、28.1%の人が選んだ「女性に偏る家事・育児負担の改善など『活躍』よりも前にやることがある」という選択肢が現状を物語る。
世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数で日本は19年、153カ国中121位と過去最低となった。国際的にも見劣りする男女平等意識を向上させ、男性が家事や育児することが当たり前という社会をつくることができるか。女性活躍は男性側の意識改革にかかっているともいえそうだ。
(伊藤新時)

調査概要

正社員・正職員(役員を含む)として働く20~50代の女性を対象に2019年11月から12月にかけて、調査会社マイボイスコム(東京・千代田)を通じてインターネット上で実施。各年代500人ずつ、計2000人から回答を得た。

記事
伊藤新時
デザイン
藤岡真央
イラスト
細井桃子
マークアップ
東條晃博

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