自在のスタイル追求
西野ジャパン
自在のシステム変更で
日本らしいサッカーを
日本代表のメンバー発表から半月で開幕を迎えるW杯。西野新監督は3バックと4バックを併用し、相手によって人の配置を変えながら戦うことを構想する。バヒド・ハリルホジッチ前監督の人材プールをそのまま用いつつ、システムという器を変えていく。グループとしての適応力を「日本らしさ」と定義する西野ジャパンの真価が試される。
MEMBER
川島
永嗣
KAWASHIMA Eiji
POSITION
GK
SPEC
年齢 | 35 |
---|---|
身長 | 185cm |
体重 | 74kg |
現所属(国) | メッス(フランス) |
プロ入り前所属 | 埼玉・浦和東高 |
日本代表での試合と得点 | 84試合 87失点 |
日本代表歴 | 10W、14W |
全軍動かす〝神の声〟
フル代表では長らく川口能活、楢崎正剛に次ぐ第3GKに据えおかれてきたが、W杯過去2大会は全7試合フル出場。経験がものを言うポジションで長期政権を築く。J2大宮で始まったプロキャリアは8年前に欧州へと舞台が移った。ベルギーで5季を過ごしてのち無所属となり、代表でも短い空白期をつくったが、16年に入団したメッスで復調。コーチングには特に定評がある。英語やポルトガル語など数カ国語に通じ、声量もなかなか。「後ろの声は神の声」というサッカーの格言を地でいくGKである。
長谷部
誠
HASEBE Makoto
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 34 |
---|---|
身長 | 180cm |
体重 | 72kg |
現所属(国) | アイントラハト・フランクフルト(ドイツ) |
プロ入り前所属 | 静岡・藤枝東高 |
日本代表での試合と得点 | 110試合 2得点 |
日本代表歴 | 10W、14W |
日本の精神的支柱
南アフリカ、ブラジル大会に続いて今回も主将の大役を務めることになる。本職のボランチではなく、今大会は所属先のフランクフルトと同様に3バックの中央を任される機会が増えそうだ。試合中にCBからボランチ、ボランチからCBに転じることで、選手を代えずに3バックと4バックを使い分けることもできる。そんな臨機応変な戦術の鍵を握る選手。全盛期に比べればスピードに陰りは見られるが、経験に裏打ちされた抜群のリーダーシップと読みの深さは、まさに替えのきかない存在だ。
吉田
麻也
YOSHIDA Maya
POSITION
DF
SPEC
年齢 | 29 |
---|---|
身長 | 189cm |
体重 | 78kg |
現所属(国) | サウサンプトン(イングランド) |
プロ入り前所属 | 名古屋ユース |
日本代表での試合と得点 | 82試合 10得点 |
日本代表歴 | 08五、 12五、14W |
ディフェンスリーダー
W杯に2大会連続出場、五輪も2大会連続出場。イングランドでのプレーは6季目を迎え、その実績は守備陣のリーダーにふさわしい。スピードに難があるものの、身長に恵まれ、足元の技術も確かな万能型CB。ぽーんと左右の足でボールを蹴り分け、遠くにいる味方の胸で正確に弾ませる。日本代表ではセットプレーからのヘディングの得点が多いが、最近はFKのキッカーを買って出ることもある。後衛の選手ほどキックを大切に。長くプレミアリーグに生きる者のたしなみなのだろう。
長友
佑都
NAGATOMO Yuto
POSITION
DF
SPEC
年齢 | 31 |
---|---|
身長 | 170cm |
体重 | 68kg |
現所属(国) | ガラタサライ(トルコ) |
プロ入り前所属 | 明大 |
日本代表での試合と得点 | 105試合 3得点 |
日本代表歴 | 08五、10W、14W |
左サイドのダイナモ
2018年1月、シーズン途中でインテルミラノから出場機会を求めてガラタサライに移籍。これが奏功し先発出場を重ね、3年ぶりのリーグ制覇に貢献した。クラブでの好調を代表に還元すべく燃えている。西野監督が3バックを主戦とした場合、左のウイングバックを務める。自陣から相手陣内まで頻繁に上下動を繰り返すため無尽蔵のスタミナと攻守の能力に均整が取れていることが求められるポジションになるが、それにうってつけの人材。昨年11月のブラジル戦でキャップ数が100を越えた日本で7人目の選手になった。
槙野
智章
MAKINO Tomoaki
POSITION
DF
SPEC
年齢 | 31 |
---|---|
身長 | 182cm |
体重 | 77kg |
現所属(国) | 浦和 |
プロ入り前所属 | 広島ユース |
日本代表での試合と得点 | 32試合 4得点 |
日本代表歴 |
ポジティブなエースキラー
筋トレとチューブトレーニングに親しみ、週2回は低酸素状態で走り込む。すべては、相手チームのキーマンとなるFWに仕事をさせないため。それがDFである自分の生きる道、と自負している。冗舌でよく笑い、常にポジティブ。苦境で味方を鼓舞できるメンタリティーは、寡黙な選手が多い日本では貴重。もしかしたら、より即物的にセットプレーの得点で日本を窮地から救うかもしれない。昨年のブラジル戦ではFKから頭でゲットした。目立ちたがり屋の本領発揮となるか。
酒井
宏樹
SAKAI Hiroki
POSITION
DF
SPEC
年齢 | 28 |
---|---|
身長 | 183cm |
体重 | 70kg |
現所属(国) | マルセイユ(フランス) |
プロ入り前所属 | 柏U-18 |
日本代表での試合と得点 | 43試合 0得点 |
日本代表歴 | 12五、14W |
これぞ世界基準
グローバルスタンダードに最も近い日本選手ではないか。仕事場のフランスリーグにはアフリカ系の強者がずらり。名門マルセイユで堂々レギュラーを張る。SBとしてのサイズは国際標準、右からの低空高速クロスは柏時代から味方にゴールをもたらしてきた。守備や位置取りに粗はあるものの、歴代の代表監督がそこに目をつぶって起用したのは豊かな素質ゆえ。4年前はメンバー入りしながら出場は果たせなかった。脂が乗って迎える2度目のW杯。もはや余人をもって代えがたい。
山口
蛍
YAMAGUCHI Hotaru
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 27 |
---|---|
身長 | 173cm |
体重 | 72kg |
現所属(国) | C大阪 |
プロ入り前所属 | C大阪U-18 |
日本代表での試合と得点 | 42試合 2得点 |
日本代表歴 | 12五、14W |
寡黙なボール回収人
口数少なく、プレーもいぶし銀。前線に顔を出すことはほとんどない。攻めに出る味方とのバランスを保ち、けんのんな相手アタッカーに目を光らせる。尽きぬ運動量で危険の芽を摘みとり、ルーズボールを拾い続ける。強いチームには気のつくボール回収人がいるもの。スター軍団だったレアル・マドリードにマケレレが、プレミアリーグを制した昨季のチェルシーにはカンテがいた。そして日本代表には山口が。この黒子が働く試合は味方が輝く試合、日本のベストゲームなのである。
大島
僚太
OHSHIMA Ryota
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 25 |
---|---|
身長 | 168cm |
体重 | 64kg |
現所属(国) | 川崎 |
プロ入り前所属 | 静岡学園高 |
日本代表での試合と得点 | 5試合 0得点 |
日本代表歴 | 16五 |
才は細部に宿る
数年後は日本のシャビかイニエスタかという才物。大学へ進学してサッカーをやめようかと考えていた高3の秋、J1川崎に誘われた。背番号10番を背負い、昨季のリーグ優勝の立役者に。小柄ながらボール奪取に優れ、楔のパスを打ちこんでリターンをもらう。トラップと体の向きのつけ方が細やかで、窮屈な場所を苦にしない。これまでフル代表とは相性が悪く、デビュー戦となったW杯予選のUAE戦で黒星。以後は試合のたびに負傷していたが、秘めた力はハリルホジッチ前監督にも買われていた。
柴崎
岳
SHIBASAKI Gaku
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 26 |
---|---|
身長 | 175cm |
体重 | 62kg |
現所属(国) | ヘタフェ(スペイン) |
プロ入り前所属 | 青森山田高 |
日本代表での試合と得点 | 18試合 3得点 |
日本代表歴 |
静かなる司令塔
いつでも沈着、冷静。相手に寄らせても顔色一つ変えず、通すべき場所へパスを送る。球の止め方、角度ひとつにも理を求める知性派は、スペインリーグ1部を経験して視野が広くなり、寄せられても平気になった。16年12月に鹿島がレアル・マドリードと対峙したクラブW杯決勝で2得点、ヘタフェに移った17年の初得点はバルセロナ相手の美しいボレーシュート。相手が巨大になるほど、白面の貴公子は大きな仕事をする。「静」の柴崎が「動」に転じるとき、日本の好機が訪れる。
原口
元気
HARAGUCHI Genki
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 27 |
---|---|
身長 | 177cm |
体重 | 68kg |
現所属(国) | デュッセルドルフ(ドイツ) |
プロ入り前所属 | 浦和ユース |
日本代表での試合と得点 | 33試合 6得点 |
日本代表歴 |
ポリバレント
W杯最終予選の功労者の1人。4試合連続得点でロシアへの道を切り開いた。西野監督が選手に求める、複数のポジションをこなせるポリバレントな能力を体現する。3-4-2-1の布陣でも2シャドー、右ウイングバックと2つのポジションでプレーする可能性大。3トップの左ウイングも定位置。どこで使われても攻守両面でダイナミックにハードワークする姿は熱い。日本の選手には珍しく自陣からでもボールを運ぶ力がある。12年ロンドン五輪世代ながら最終メンバーから外れ、国際舞台に立つのはこれが初めて。
本田
圭佑
HONDA Keisuke
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 32 |
---|---|
身長 | 182cm |
体重 | 74kg |
現所属(国) | パチューカ(メキシコ) |
プロ入り前所属 | 石川・星稜高 |
日本代表での試合と得点 | 95試合 36得点 |
日本代表歴 | 08五、10W、14W |
日本人のW杯最多得点者
W杯でマークした通算3得点は日本人選手の最多得点記録。8年前の南アフリカ大会はカメルーン戦の決勝点とデンマーク戦の超ド級の先制FK、4年前のブラジル大会はコートジボワールから先制点を奪った。アフリカ勢に強いのはフィジカルの強さの証しか。前任のハリルホジッチ体制では右ウイングで窮屈にプレーした。西野新監督の下では2シャドーの一角でプレーする。よりゴールに近い場所で持ち前の決定力を発揮してほしいもの。西野監督は強烈なパーソナリティーがチームに好影響を及ぼすことも期待している。
香川
真司
KAGAWA Shinji
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 29 |
---|---|
身長 | 175cm |
体重 | 68kg |
現所属(国) | ドルトムント(ドイツ) |
プロ入り前所属 | 宮城・FCみやぎバルセロナ |
日本代表での試合と得点 | 92試合 30得点 |
日本代表歴 | 08五、14W |
リベンジに燃える日本のエース
日本のエースとして期待され、初出場した4年前のブラジル大会は大きく期待を裏切った。ロシア大会は悔しさを晴らす場になる。狭いスペースでパスを受け、次の攻撃につなげる能力は日本屈指。周りとの連動の中で選択肢が増えるほど輝きを増すタイプといえる。マンチェスター・ユナイテッド、ドルトムントで磨いた能力を代表でフルに発揮する、おそらくこれが最後のチャンスだろう。今年2月に負傷し、5月12日の最終節まで実戦から遠ざかっていた。実戦感覚、試合体力が戻れば、頼もしい存在になる。
宇佐美
貴史
USAMI Takashi
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 26 |
---|---|
身長 | 180cm |
体重 | 72kg |
現所属(国) | デュッセルドルフ |
プロ入り前所属 | G大阪ユース |
日本代表での試合と得点 | 24試合 3得点 |
日本代表歴 | 12五 |
ボールと自由を求めて
ドリブル、パス、シュートと3拍子そろったアタッカー。ボールを失うと守備力や走力の不足があらわになるが、好調時はオールマイティーの切り札だ。11年に移籍したバイエルン・ミュンヘンで出番なし。2度目の渡独で行きついたデュッセルドルフで働き場所を得た。過去に代表で起用された左ウイングよりも、西野監督が与えたシャドーの仕事を「自分に合っている」と語る。自由度の高いポジションに適性があるのは間違いない。問題は、その自由を与える余裕がチームにあるかどうかだが……。
乾
貴士
INUI Takashi
POSITION
MF
SPEC
年齢 | 30 |
---|---|
身長 | 169cm |
体重 | 59kg |
現所属(国) | エイバル(スペイン) |
プロ入り前所属 | 滋賀・野洲高 |
日本代表での試合と得点 | 27試合 4得点 |
日本代表歴 | W杯初出場 |
日本最高のペネトレーター
日本が誇るペネトレーター(突破者)。11年からドイツ、スペインで足を磨き、今季エイバルでリーグ34試合に出場する充実のシーズンを過ごした。17年5月にはFCバルセロナから2ゴールを奪う活躍を演じ、来季はベティスに移籍する。代表では4-3-3の左ウイングか、3-4-2-1の2シャドーに入りそう。いずれにしても最大の武器はトリッキーなドリブル。左サイドからカットインして守備ラインにギャップをつくり出す能力はピカイチ。守備面の成長も著しい。右太ももの故障が不安材料。
岡崎
慎司
OKAZAKI Shinji
POSITION
FW
SPEC
年齢 | 32 |
---|---|
身長 | 174cm |
体重 | 70kg |
現所属(国) | レスター(イングランド) |
プロ入り前所属 | 兵庫・滝川二高 |
日本代表での試合と得点 | 113試合 50得点 |
日本代表歴 | 08五、10W、14W |
泥臭くゴールをねじこむ
代表通算50点は釜本邦茂(76点)、三浦知良(55点)に次ぐ史上3位、現役最多記録。15年に移籍したレスターの1年目にイングランド代表FWバーディーの良き相棒としてプレミアリーグ優勝に貢献した。今季は序盤にゴールを量産して好調だったが、18年になってから故障に悩まされ出場機会を減らした。前監督には不向きな1トップを割り振られて苦労した。新体制では故障明けということもあり、スーパーサブでの起用が予想される。W杯2大会連続得点中。泥臭いゴールでチームを救えるか。
大迫
勇也
OSAKO Yuya
POSITION
FW
SPEC
年齢 | 28 |
---|---|
身長 | 182cm |
体重 | 71kg |
現所属(国) | ブレーメン(ドイツ) |
プロ入り前所属 | 鹿児島城西高 |
日本代表での試合と得点 | 29試合 7得点 |
日本代表歴 | 14W |
ドイツ仕込みのたくましさ
1トップが仕事場だ。相手DFにぐるりと囲まれながら足元にボールを収め、攻めへ転じる始点となる。この孤独な任務の適任者はほかに見当たらない。冬の全国高校選手権で得点王になった高校サッカーのヒーローは、14年に鹿島から独2部チームへ移籍した。持ち前のゴールセンスに加え、かの地でポストプレーに磨きをかけ、泥臭さとハングリー精神を備えていった。倒れず屈せず、前線でボールを守って味方に配り、反転してシュートも放つ。このたくましさに日本の命運を託したい。
武藤
嘉紀
MUTO Yoshinori
POSITION
FW
SPEC
年齢 | 25 |
---|---|
身長 | 178cm |
体重 | 72kg |
現所属(国) | マインツ(ドイツ) |
プロ入り前所属 | 慶大 |
日本代表での試合と得点 | 24試合 2得点 |
日本代表歴 |
上り調子の秘密兵器
慶大在学中に特別指定選手として、ユース時代を過ごしたFC東京でプレー。2年目の14年にスピードを武器に13点を挙げた。移籍したマインツで3シーズン目の今季は自己ベストの10点(リーグ8点、カップ2点)をマークし上り調子にある。前線からの精力的なチェイシングは相手に脅威で、ゴール前で絡まれながらシュートに持ち込む人に対する強さがある。ビッグネームの陰に隠れているが、DFの背後を突く速さ、ポイントに飛び込む勇気、思いきりの良さを武器に出番を増やしそう。
西野
朗
NISHINO Akira
POSITION
監督
SPEC
年齢 | 63 |
---|
スター選手は最多勝監督に
早大時代から日本代表に選ばれるスターだった。気品あるプレーと端正な顔立ちが人気で、東京・西が丘サッカー場を女性客で満たし、試合中のけがで病院へ行くとそこでも女学生が殺到したという逸話が残る。卒業後は日立製作所(現柏)でプレー。96年アトランタ五輪監督。J1監督として4チームを渡り、歴代最多の270勝。G大阪で05年J1優勝、08年アジア・チャンピオンズリーグ制覇。技術委員長としてハリルホジッチ前監督を支えた後、思いがけず〝最後のご奉公〟の機会が訪れた。
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