東・南シナ海、対立の構図 6つのポイントで解読

東・南シナ海、対立の構図
6つのポイントで解読

 米軍が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島にイージス艦を派遣、中国が岩礁を埋め立ててつくった人工島の12カイリ以内で巡視活動に踏み切った。一方、東シナ海では中国が一方的に進めるガス田開発に関し、協議再開を目指すことで一致したものの、沖縄県の尖閣諸島の領有権を主張する中国との対立は解消していない。米国を巻き込んで一触即発の危険性をはらんでいるこの地域をめぐる各国の思惑を探る。

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 米軍が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島にイージス艦を派遣、中国が岩礁を埋め立ててつくった人工島の12カイリ以内で巡視活動に踏み切った。一方、東シナ海では中国が一方的に進めるガス田開発に関し、協議再開を目指すことで一致したものの、沖縄県の尖閣諸島の領有権を主張する中国との対立は解消していない。米国を巻き込んで一触即発の危険性をはらんでいるこの地域をめぐる各国の思惑を探る。

  • 中国
  • フィリピン
  • マレーシア
  • ベトナム

01

中国の九段線
周辺国の対立

 南シナ海の南沙諸島は、日本が第2次世界大戦後に領有権を放棄したが、1970年代に海底油田の発見などで中国やフィリピン、ベトナム、マレーシアなどが自国の領海と主張し始めた。

 1947年、中華民国(当時)は南シナ海に引いた11本の線を元にした「11段線」で囲まれた海域を「領海」と一方的に決めた。その後、中国は友好的だったベトナム周辺海域の2本を減らし、現在まで「九段線」を自国の境界とし管轄権を主張している。

 南シナ海はインド洋から太平洋に抜ける重要な貿易の通路であるため、日本や米国は中国が人工島を「領土」と見なすやり方を認めれば自由な航行の妨げになると警戒を強めている。さらに人工島を拠点に軍事活動を活発化させれば、アジア全域の安全保障バランスに重大な影響を招きかねないと懸念している。

領有権主張範囲(国名を選び表示)

02

中国のガス田開発

 中国は日中間で境界が未画定の東シナ海の「日中中間線」付近で新たなガス田開発を単独で進めている。東シナ海では1960年代末に天然ガス資源の存在が指摘された。中国は2003年に中間線のやや中国寄り海域で開発に着手。日本は「地下を通じ日本側の排他的経済水域(EEZ)の資源を吸い取っている」と主張する。

 日中両政府は2008年6月に問題の解決をめざし、中間線より中国側に「共同開発区域」を設定することなどで合意した。いったんは条約締結交渉に入ったが、2010年9月の沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を受けて中断したままとなっている。

 日本政府は中国が建造した16基のガス田掘削施設のうち、2015年9月中旬までにガス生産を裏付ける炎を7基で確認。11月1日に安倍晋三首相と中国の李克強首相がソウルで会談した際に、東シナ海ガス田の共同開発を巡る協議の再開をめざすことを申し合わせた。

03

尖閣問題

 5つの島と3つの岩礁からなる沖縄県・尖閣諸島を巡る日中間の対立。2012年9月に日本政府が魚釣島、北小島、南小島の3島を地権者から買い取って国有化。残る2島は大正島がすでに国有で、民間所有の久場島は防衛省が借り上げている。中国と台湾は自らの領有権を主張するが、日本政府は「我が国 固有の領土」との立場だ。

 2012年4月に東京都の石原慎太郎知事(当時)が3島の購入計画を表明したのを受け、野田佳彦首相(同)が国有化を決断した。領有権を主張していた中国は猛反発し、その後の日中関係は冷え込んだ。日本政府は「領土問題は存在しない」としており隔たりは大きい。

 2015年11月1日のソウルでの日中首相会談で、尖閣周辺などで自衛隊と中国軍の不測の衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の早期運用開始を申し合わせた。オバマ米大統領は尖閣諸島は米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が「適用される」と明言している。

ロイター

04

12カイリと島・岩礁

 中国は南シナ海の「九段線」の内側に、7カ所の岩礁を埋め立てて人工島をつくり出した。中国は人工島を「領土」とみなして周辺の12カイリ(約22キロメートル)は領海だと唱えるが、日米などは根拠はないとの立場。満潮時に海面に沈む岩礁を埋め立てても、国際法上は領海と主張できないためだ。

 中国は、人工島に滑走路やビルなどを建設して軍事拠点化を進める。米国は中国による既成事実化を容認しないとの姿勢を示すため、10月下旬にイージス駆逐艦を中国の了解なしに人工島の12カイリ内に派遣した。南シナ海は日本の輸入原油の8割が通る交通の要衝で、日本経済にとっても死活的 に重要な地域だ。

 南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島を巡ってはフィリピンやベトナムなどが領有権を主張し、中国と対立する。

05

排他的経済水域
EEZ

 1982年採択され、1994年に発効した国連海洋法条約は、領土と同様に国の主権が及ぶ領海を沿岸国の海岸の基線から12カイリ(約22キロメートル)と規定した。領海の外の200カイリ(約370キロメートル)までは、沿岸国が鉱物や漁業などの海洋資源を管轄できるEEZに区分する。

 同条約は現在、日本や中国を含む167カ国・地域が締結。EEZは従来は公海だった海域に沿岸国の管轄権が認められたもので、第三国は沿岸国の権利義務を尊重すれば他国のEEZ内でも航行の自由を有する。

 フィリピンのEEZ内のスカボロー礁には、自国の管轄権を主張する中国の船が居座り続けている。フィリピンは中国の主張が国際法に違反するとして、2013年1月に仲裁手続きを開始。オランダのハーグにある仲裁裁判所は10月下旬に「(裁判所に)管轄権はない」とする中国の主張を退けた。審理は継続し、2016年にも判断が下される。

06

シーレーン

 シーレーンとは海上輸送交通路のこと。英語ではSLOC(Sea Lines of Communication)とも呼ぶ。物資のみならず、原油や液化天然ガス(LNG)などエネルギー資源の通り道として、貿易する国々の生命線である。

 日本の原油輸入路をみると、サウジアラビアやアラブ首長国連邦などの輸入相手国からタンカーがインド洋を回り、マラッカ海峡を通り南シナ海へ抜けてくる。

 南シナ海はインド洋と西太平洋をつなぐ、極めて重要な位置にある。特にアジアへの最短路を提供しているマラッカ海峡は世界で最も重要な「チョークポイント(喉)」の一つ。

 中国やベトナム、フィリピンなどが領有権を争う南沙(スプラトリー)諸島周辺も重要なシーレーンとなっている。中国が人工島をつくり、その上に軍事拠点を設ける事態になれば、確実にシーレーンに影響が生じる。

マラッカ海峡

通過した原油量は約1520万バレル/日(2013年)。世界第2位の規模だ。(米エネルギー情報局調べ)

中国

貿易関連貨物の9割以上を海上輸送に依存。自国のシーレーンを「核心的利益」と位置付ける。

日本

全貿易量の99%以上を海上輸送に依存している。

取材・制作
中川真希子、坂口幸裕、安田翔平
データ出典
外務省、防衛省、海上保安庁

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