新産業創世記

世界で台頭 巨大ベンチャー「ユニコーン」勢力図

 非上場にもかかわらず、企業価値が10億ドル(約1200億円)を突破する有望ベンチャー。めったに姿をみせないという意味合いを込め、伝説の生き物である「ユニコーン(一角獣)」と米国で呼ばれようになったのはこの1~2年だ。もっとも、既存の枠にとらわれないビジネスが次々と登場し、成長軌道に乗せる勢いも並外れになるなか、ユニコーンは必ずしも特別な存在でなくなりつつある。

グラフで探る ユニコーン141社と予備軍たち

 米調査会社CBインサイツによると今年10月時点で、141社のユニコーンがグローバルに散らばる。企業価値の総額は、5000億ドル(約60兆円)に達した。

 世界のユニコーンとその予備軍を、国・業種別に探せるようにしたのが次のグラフィックだ。ボタンで国を選んだり、プルダウンで業種を選んだりすると該当するベンチャーが現れる。円形のバブルチャートは企業価値の大きさを示し、10億ドル以上のユニコーンには企業名を表示している。バブルチャート上にカーソルを合わせると予備軍も含め国や業種、企業価値が分かるほか、下の表では事業概要も一覧できる。

国別に調べる

企業名企業価値 (億ドル)国名業種内容

米中が二大勢力 eコマース突出

 上位企業に目を向けると、1位が配車サービスの米ウーバーテクノロジーズ(Uber)、2位が中国スマホ大手の小米(シャオミ)と続く。いずれも企業価値は500億ドル(約6兆円)規模と破格だ。100億ドル超えは13社にのぼった。

「eコマース」◎社

 業種別ではeコマースが31社と突出する。インドのフリップカートに代表されるように、新興国からも巨大ベンチャーが生まれる。金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」やヘルスケア関連も躍進する。

 国別にみると、首位が米国(3100億ドル)、2位が中国(1130億ドル)、3位がインド(250億ドル)と続く。スウェーデン、ドイツ、英国が上位に顔を出し、イスラエルやシンガポール、タイ、アルゼンチンなどでもユニコーンが育ちつつある。(米スクエアはニューヨーク証券取引所に11月19日上場)

日本にユニコーンは育つのか

 一方、日本に目を向けるとユニコーンは存在しない。調査会社のジャパンベンチャーリサーチ(東京・港)が分析した企業価値1億ドルを超える国内ベンチャー(バイオ系除く)10社が予備軍といえる程度だ。ジャパンベンチャーリサーチ代表の北村彰(64)は「日本はベンチャーがIPO(新規株式公開)をゴールにし、利益を出すために保守的な経営になって息切れしがち」と指摘する。(敬称略)

企業名企業価値 (億ドル)業種内容
スマートニュース(SmartNews)
3.42
メディアインターネット上のニュース記事を自動収集して閲覧するためのアプリを提供
エリーパワー(ELIIY Power)
3.27
グリーンテック蓄電池メーカー。大和ハウス工業などが出資
スパイバー(Spiber)
2.76
グリーンテック人工のクモ糸を開発
フリー(freee)
2.50
フィンテッククラウド会計ソフト
メルカリ(Mercari)
2.09
eコマーススマートフォンを使ったフリーマーケット運営
マネーフォワード(MoneyForward)
1.46
フィンテック自動家計簿サービスや企業向けクラウド会計ソフト
グライダーアソシエイツ(GliderAssociates)
1.27
メディアニュース配信アプリ「アンテナ」を運営
ラクスル(Raksul)
1.13
eコマースインターネットで印刷業務を受託
アカツキ(Akatsuki)
1.12
ゲームスマートフォンゲームを開発
スターフェスティバル(StarFestival)
1.08
eコマース法人向け弁当宅配サービス「ごちクル」を展開

取材・制作森園泰寛、松本千恵、田中深一郎、清水明、山崎亮、久野美菜子

データ出典CBインサイツ、ジャパンベンチャーリサーチ

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