バブルをつないだ中国株、大揺れの軌跡

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 中国の株式市場が大きく揺れている。代表的な上海総合指数は6月中旬に7年ぶりの高値をつけた直後に失速し、7月8日には直近ピークから3割超も急落した。中国政府はなりふりかまわぬ株価維持対策を打ち出すが、過熱相場の崩壊を食い止めるのは容易ではない。大荒れの中国株の動きをまとめた。

1カ月で3割超の急落 → 一転、上昇も……

6月12日
  • 上海総合指数が5166と2008年1月以来7年5カ月ぶり高値
6月25日
  • 中国人民銀行が2カ月ぶりに短期資金供給を実施
6月27日
  • 中国人民銀行が政策金利と預金準備率の同時引き下げを決定
6月29日
  • 財政省が年金基金による株式投資を容認する草案を発表
  • 証券監督当局が「信用取引のリスクは制御可能」と声明
7月1日
  • 証券監督当局が信用取引の規制緩和を発表
  • 上海・深圳の証券取引所が8月から売買手数料の3割引き下げを発表
7月4日
  • 証券当局が証券21社に1200億元で投信買い入れを要請
  • 上場予定28社が当面の上場を見送り
7月5日
  • 政府系ファンドが投信買い入れを発表
7月8日
  • 証券監督当局が上場企業の経営陣や大株主による6カ月間の株式売却を禁じる
  • 売買停止銘柄が1300超と全体の半分にまで拡大
  • 保険会社の株式投資上限を引き上げ
  • 政府が国有企業に自社株買いを要請
7月9日
  • 上海・深圳の取引所が8月から売買手数料の一部を引き下げると発表
  • 上海・深圳市場の売買停止銘柄は約1600に
  • 公安幹部による「悪意ある空売りを徹底的に取り締まる」との発言が伝わる
  • 銀行監督当局が銀行への信用取引関連の株式担保融資の規制緩和を発表
  • 中国人民銀行が信用取引を手掛ける政府系の中国証券金融に対し「十分な資金を提供した」と発表
7月10日
  • 公安当局が「悪意ある空売り」の疑いで約10件の調査に乗り出したと伝わる
7月15日
  • 国家統計局が2015年4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率が7.0%増だったと発表
7月20日
  • 有力メディアの財経が「証券監督管理委員会が(株価対策で投じた)資金の回収を研究している」と報道
7月22日
  • 中国乳業大手の内蒙古伊利実業集団が、中国証券金融の持ち株比率が6.05%から4.28%に低下したと発表
7月24日
  • 政府が貿易促進策の一環として人民元の変動幅を一段と拡大すると発表。市場では「政府が人民元安を容認し、輸出増を通じて株価を支える狙い」との見方が浮上
7月27日
  • 上海総合指数の下落率は8.5%と、2007年2月以来約8年5カ月ぶりの大きさに
  • 深夜に証券監督当局が「中国証券金融は市場を安定させるために株式買い入れを続ける」と発表
7月28日
  • 中国人民銀行が「下期も穏健な金融政策を続ける」と金融緩和で市場を支える意向を示す
7月31日
  • 上海・深圳の取引所が24の証券口座の売買を3カ月間停止すると発表
  • 浙江省の検察当局が違法な先物取引を提供した疑いで7人を逮捕したと発表

「売却禁止」や「公安調査」も 株価維持に荒療治

 6月中旬以降、それまでの「牛市(強気相場)」から一変した中国株。上海総合指数は前日比5%を超える大幅安が頻発した。中国の株式市場は外国人投資家の参加が制限され、売買の中心は国内の個人投資家。株価が一方向に振れやすく、個人のろうばい売りが膨らんだ。信用取引で損失を被った個人の投げ売りも広がった。

 中国当局はあからさまに株式市場へ介入し、株価維持策(PKO)に躍起だ。証券会社や政府系ファンドなどによる買い支えにとどまらず、上場企業の大株主が株式を売却することを禁じ、公安当局が「悪意ある空売り」を調査する方針まで打ち出した。株価が下落する局面で株式を借りて売り、その後買い戻す「空売り」は違法な手段ではないが、株価の下落を加速させかねないと当局は問題視した模様だ。上海と深圳の株式市場では一時、上場銘柄の半数超の銘柄が売買を停止し、投資家は「売りたくても売れない」状況に陥った。

 政府が力ずくで市場を抑え込んでも、市場のゆがみを先送りするだけに終わる可能性もある。7月中旬には上海総合指数は反発したものの、7月27日には約8年5カ月ぶりの下落率を記録するなど、中国株の先行きはなお不透明だ。大揺れする中国株の動向に世界から注目が集まったが、市場としての未熟さも明らかになった。

乱高下の10年、最高値は07年10月

不動産開発投資は前年同期比の増減率%、信託商品は残高の前年同期比の増減率%

不動産、理財商品、そして株へ… 過熱の構造

 中国の株式市場は歴史的にジェットコースターのように乱高下を繰り返してきた。この10年を振り返るとマネーが向かう先々で投機熱が高まり、今回の中国株の大崩れはバブルをつないだ末の反動に映る。

 上海総合指数は2007年10月に記録した6124がこれまでの最高値だ。このときも株価は1年間で約3倍に膨らむ急上昇を演じたが、当局がインフレ対策で進める金融引き締めや米国発の世界的な金融危機が重なり、08年10月には1909にまで急低下した。

 金融危機後、中国政府は4兆元の巨額の経済対策で景気をテコ入れし、地方政府による住宅開発や公共投資を盛り上げた。これに乗じて個人マネーによるマンションなどの不動産投資が過熱したが、政府は10年以降、投機的な住宅投資を抑えるための規制を強め不動産市場の沈静化をはかった。

 その後、マネーが流れたのが「理財商品」と呼ばれる高利回りの金融商品。政府の目が行き届きにくいシャドーバンキングを通じて地方政府や企業に資金が向かったが、中国経済の減速により投資先の経営が行き詰まるデフォルト騒動が発生した。政府も理財商品の規制強化を進め、理財商品の中核とされる信託商品の残高の伸びは急速に勢いを失った。

 足元では行き場を失った個人マネーが再び株式市場になだれ込み、14年夏から今年6月までで上海総合指数は2.5倍に急上昇していた。

取材・制作
牛込俊介、森園泰寛、佐藤健
データ出典
中国国家統計局、中国信託業協会

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