バブルをつないだ中国株、大揺れの軌跡
AP
中国の株式市場が大きく揺れている。代表的な上海総合指数は6月中旬に7年ぶりの高値をつけた直後に失速し、7月8日には直近ピークから3割超も急落した。中国政府はなりふりかまわぬ株価維持対策を打ち出すが、過熱相場の崩壊を食い止めるのは容易ではない。大荒れの中国株の動きをまとめた。
1カ月で3割超の急落 → 一転、上昇も……
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「売却禁止」や「公安調査」も 株価維持に荒療治
6月中旬以降、それまでの「牛市(強気相場)」から一変した中国株。上海総合指数は前日比5%を超える大幅安が頻発した。中国の株式市場は外国人投資家の参加が制限され、売買の中心は国内の個人投資家。株価が一方向に振れやすく、個人のろうばい売りが膨らんだ。信用取引で損失を被った個人の投げ売りも広がった。
中国当局はあからさまに株式市場へ介入し、株価維持策(PKO)に躍起だ。証券会社や政府系ファンドなどによる買い支えにとどまらず、上場企業の大株主が株式を売却することを禁じ、公安当局が「悪意ある空売り」を調査する方針まで打ち出した。株価が下落する局面で株式を借りて売り、その後買い戻す「空売り」は違法な手段ではないが、株価の下落を加速させかねないと当局は問題視した模様だ。上海と深圳の株式市場では一時、上場銘柄の半数超の銘柄が売買を停止し、投資家は「売りたくても売れない」状況に陥った。
政府が力ずくで市場を抑え込んでも、市場のゆがみを先送りするだけに終わる可能性もある。7月中旬には上海総合指数は反発したものの、7月27日には約8年5カ月ぶりの下落率を記録するなど、中国株の先行きはなお不透明だ。大揺れする中国株の動向に世界から注目が集まったが、市場としての未熟さも明らかになった。
乱高下の10年、最高値は07年10月
不動産開発投資は前年同期比の増減率%、信託商品は残高の前年同期比の増減率%
不動産、理財商品、そして株へ… 過熱の構造
中国の株式市場は歴史的にジェットコースターのように乱高下を繰り返してきた。この10年を振り返るとマネーが向かう先々で投機熱が高まり、今回の中国株の大崩れはバブルをつないだ末の反動に映る。
上海総合指数は2007年10月に記録した6124がこれまでの最高値だ。このときも株価は1年間で約3倍に膨らむ急上昇を演じたが、当局がインフレ対策で進める金融引き締めや米国発の世界的な金融危機が重なり、08年10月には1909にまで急低下した。
金融危機後、中国政府は4兆元の巨額の経済対策で景気をテコ入れし、地方政府による住宅開発や公共投資を盛り上げた。これに乗じて個人マネーによるマンションなどの不動産投資が過熱したが、政府は10年以降、投機的な住宅投資を抑えるための規制を強め不動産市場の沈静化をはかった。
その後、マネーが流れたのが「理財商品」と呼ばれる高利回りの金融商品。政府の目が行き届きにくいシャドーバンキングを通じて地方政府や企業に資金が向かったが、中国経済の減速により投資先の経営が行き詰まるデフォルト騒動が発生した。政府も理財商品の規制強化を進め、理財商品の中核とされる信託商品の残高の伸びは急速に勢いを失った。
足元では行き場を失った個人マネーが再び株式市場になだれ込み、14年夏から今年6月までで上海総合指数は2.5倍に急上昇していた。
- 取材・制作
- 牛込俊介、森園泰寛、佐藤健
- データ出典
- 中国国家統計局、中国信託業協会