プリウス4代目vsライバル車エコカー本命は

 トヨタ自動車は9日、ハイブリッド車(HV)「プリウス」の新型車を発売した。ガソリン1リットル当たりの燃費性能は40.8キロメートルと、現行車と比べて約2割高めた。世界初の量産型ハイブリッド車として初代モデルが1997年に投入され、今回が4代目になる。累計350万台超を販売したHVのトップランナー。全面改良を重ねるたびにモーター、電池などの技術を大きく向上させ、空気抵抗が少ないデザインに進化を遂げてきた。エコカー時代を切り開いた「プリウス」の4代目までの歩みをビジュアルデータで振り返る。電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などのライバル車との性能を比較して次のエコカーの本命候補の実力に迫る。

燃費・販売台数… 歴代プリウスの歩み

初代 2代目 3代目 4代目
燃費(km/l) 28.0 29.6 32.6 40.8
重量(kg) 1,240 1,250 1,310 1,360
全高(mm) 1,490 1,490 1,490 1,470
全幅(mm) 1,695 1,725 1,745 1,760
全長(mm) 4,275 4,445 4,460 4,540
ホイールベース(mm) 2,550 2,700 2,700 2,700
電池の種類 ニッケル水素 ニッケル水素 ニッケル水素 リチウムイオン
排気量(cc) 1,496 1,496 1,797 1,797
最安価格 215万円 215万円 205万円 242万9018円
最高価格 227万円 257万円 327万円 339万4145円
世界販売台数(台) 12.4万 119.1万 227.0万 -
特徴 世界初の量産型HV HVシステムを刷新、駐車支援など先進システム導入 ホンダ「インサイト」と競合。全販売店で扱い、普及に貢献 燃費が40km超に。設計改革「TNGA」導入第1弾、走りの性能高める
  • ※初代「プリウス」の燃費性能は10・15モード

「エコは当たり前」の時代に挑む4代目

 1997年に世界初の量産型HVとして登場したプリウスは改良のたびに燃費を高め、4代目となる新型車はガソリン1リットル当たり40キロメートル超の水準を実現した。HVでは独走状態に近いトヨタだが、エコカー競争は世界的に激化。ガソリン安の逆風も吹くなか、難路に踏み出す。

 エンジンとモーターを併用するHVのアイデアは100年以上前からあるとされるが、電池など主要部品の性能向上や、複雑なシステムを制御するソフトウエアの開発が実用化の妨げとなっていた。トヨタは1997年にHVを実用化したのに続き、2003年に発売した2代目は軽量化や、モーターを動かす電圧を高めることで燃費を向上させた。

 2009年に登場した3代目はエンジンの排気量をそれまでの1500㏄から1800㏄に引き上げ、高速走行時の燃費を改善。4代目はエンジンの性能を一段と高めるとともに、車体の空気抵抗を減らすなどの工夫を重ねることで40キロメートルの「大台超え」を実現した。トヨタはこの技術をほかのHVにも応用していく。

 初代プリウスの開発責任者を務めたトヨタの内山田竹志会長は「当初は省エネが顧客の心を捉えるか自信がなかった」と振り返る。だが、プリウスをはじめとするトヨタのHVの累計販売台数は今夏に800万台を超え、直近では国内販売台数の4割強がHVだ。トヨタは2020年までにHVの年間販売台数を2014年比2割増の150万台まで引き上げる目標を掲げる。

 エコカーを取り巻く環境が大きく変化しているのも事実だ。10月に開かれた東京モーターショーでは内外の競合メーカーが相次いで家庭用電源で充電できるプラグインハイブリッド車(PHV)などを出展。日産自動車などはEV、トヨタ自身もFCVの普及に力を入れ始めた。

 ガソリン安も逆風だ。現在、HVとガソリン車の価格差は30万~40万円程度。ガソリン価格が下がればそれだけ投資を〝回収〟するまでの時間がかかる。「燃費はもちろんだが、走行性能など車そのものの魅力を高めることに気を配った」と4代目プリウスの開発責任者を務めた豊島浩二氏。新型車は「エコが当たり前」の時代に挑む。

軽からFCVまで 世界大手が競うエコカー

  • ※航続距離は、1回の満タン給油やフル充電、水素充填で最も長く走れる距離。最新モデルを対象。

次世代エコカー、本命争いの課題

 エコカーの主役は今、プリウスに代表されるHVだ。ガソリン車が全盛だった流れにくさびを打ち、誰もが購入できる普及車になった。

 そしてヒートアップするのが次世代のエコカーの本命の座をつかみとる争い。複数の候補がすでに名乗りを上げる。電気だけで走り排ガスをまったく出さないEV、そのEVとHVを組み合わせたPHVは量販車が投入されて、各社が強みを持つ技術をつぎ込み性能を高める。こうした分野には米テスラ・モーターズが参入したほか、米アップルなど新興勢力が登場するなど新しい動きがある。

 本格普及に向けては、それぞれの本命候補に課題がある。そのひとつが使い勝手の決め手になる航続距離。EVは現在、200キロメートル台にとどまるが、電池技術の改善などで300~400キロメートルが射程圏に入る。水素で走り「究極のエコカー」と呼ばれるFCVはさらにその先の600~700キロメートル。ただ、トヨタ、ホンダの量販車は700万円を超えてまだまだプレミアムカーに違いなく、水素ステーションはまだまだ限られる。EVにしても急速充電インフラの整備が欠かせない。

カローラからHVへ 売れ筋でみる時代背景

 新車販売ランキング(登録車、排気量660cc超)を振り返ると、売れ筋からその時代背景が見えてくる。セダンやミニバン、高級セダン、小型車、そしてHVへと人気モデルの「顔」が入れ替わってきた。クルマに求められる役割は変化し続けている。

    順位 車名・メーカー> 販売台数
    • プリウス
    • ハイブリッド設定車

     初代「プリウス」が誕生した1997年、ランキングのトップは約24万台近くを売り上げたトヨタの「カローラ」だ。1966年に初代モデルを発売したカローラは日本のモータリゼーションを支え、2001年まで33年連続で首位の座を守ってきた。

     一方、プリウスは1997年の世界販売がわずか323台、その後もしばらくは2万台に届かず苦戦した。当初はハリウッドスターが愛用するエコカーのアイコンとしても扱われ、高根の花の存在だった。

     2002年にカローラから1位を奪取したのが、ホンダの「フィット」(25万台)。1リットル当たりの燃費性能は当時23キロメートルで、ガソリン車としては世界最高の水準だった。最量販モデルが110万円台と割安感があり、爆発的なヒットとなった。クルマが「あこがれ」の耐久消費財ではなく、移動手段としての位置づけが強くなった。

     そして若者を中心とした「クルマ離れ」もあり、排気量660cc以下の軽自動車が支持されるようになる。税金などの維持費が安く、ガソリン高になると生活の足として選ばれた。2004年の登録車ランキングの首位はカローラ(約17万台)。スズキの「ワゴンR」が約21万台、ダイハツ工業の「ムーヴ」が約18万台を販売した。低燃費・低価格が売れ筋のキーワードとなり、「軽」優勢のトレンドになった。

     軽自動車の勢いに対抗したのがHVだ。2009年にようやくプリウスが初のトップに輝く。ホンダのHV「インサイト」も8位に入り、燃費性能を巡る競争が激しさを増していく。

     2014年は上位10車種のうち、ハイブリッド設定車が8車種にまで増えた。同年の国内全体のHVの販売台数は100万台を初めて突破し、登録車の約40%を占める比率となった。プリウスの登場から20年足らず。人気車の顔ぶれは様変わりした。環境性能だけでなく自動運転技術などクルマに対する常識が覆され、5〜10年後のランキングは劇的な変化が予想される。

    歴代責任者に聞く プリウス開発秘話

    制作森園泰寛、若杉朋子、大島有美子、奥平和行、河本浩

    データ出典日本自動車販売協会連合会、各自動車メーカーの資料

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