ROE左右する税負担
日本と世界の企業を比較

ロイター

 上場企業がこぞって自己資本利益率(ROE)の引き上げを経営目標に掲げるようになった。海外投資家も経営者も「ROE」を呪文のようにとなえるが、東証1部平均で8%強という水準は、欧米の主要企業と比べるとなお見劣りする。ROEは投資負担や金利、税金などを支払った後に残る純利益を自己資本で割って求めるが、意外と盲点になりやすいのが「税コスト」だ。日本企業と海外のライバル企業のROE、税負担率の状況を点検してみた。

日本の法人税支払額、トヨタが断トツ

 時価総額1000億円以上の上場企業を対象に2014年度の法人税等支払額(税効果適用後)を調べたところ、トヨタ自動車の金額が最も大きかった。トヨタは14年度の連結決算で純利益が初めて2兆円を突破。支払額は9000億円に迫り、2位のソフトバンクグループを約3800億円上回った。3位の国際石油開発帝石(4644億円)のほぼ倍、15位のセブン&アイ・ホールディングス(1276億円)のほぼ7倍の水準だ。

主な日本企業の法人税支払額

時価総額1000億円以上の上場企業。2014年度の有価証券報告書から税効果適用後で比較

税負担比率高い日本 食品など格差大きく

 日本企業は税引き前利益に占める税負担の割合が高い。自動車、電機、小売り、食品、ネット、製薬など主要8業種の代表企業を海外のライバル企業と比較すると、日本企業が全業種で上回る。

 税負担比率の差が最も開いたのは食品。キリンホールディングスが42.4%なのに対して、ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)は18.1%にとどまる。

海外のライバル企業の税負担率はなお低い

花王とキリンは12月期、セブン&アイは2月期、アップルは9月期、ウォルマートは1月期、P&Gは6月期、他の海外企業は12月期

税コスト抑制、海外勢着々 日本企業は

 高い税負担比率はROEにも影響する。ROEは税金などを払い最終的に残った純利益を自己資本で割って算出する。そのため、税負担比率が高いほどROEは低くなりやすい。

 主要8業種のうち海外のライバル企業のROEを上回ったのはトヨタとヤフーの2社のみ。税負担比率が40%を超えたセブン&アイ・ホールディングスとキリンのROEは同業の海外勢よりも10%近く低い。

セブン&アイ、キリン… ライバルにROE見劣り

花王とキリンは12月期、セブン&アイは2月期、アップルは9月期、ウォルマートは1月期、P&Gは6月期、他の海外企業は12月期

 世界を見渡すと、戦略的なタックスプランニングで利益の最大化を目指す企業は多い。米アップルは特許やブランドといった無形資産を高税率国の米国から海外の拠点に移転することで、本国での課税を最小化しているとの指摘がある。12年には米コーヒー店チェーン大手のスターバックスが税率の低いスイスやオランダに利益を移転する手法で、英国での税負担を軽減していると批判された。

 グローバル企業は税コストに敏感だ。例えば実効税率が低い国にグループの特許管理会社をつくり、そこに世界中で稼いだ特許使用料などの利益を移すといった手法を採る。ブランドなどの権利使用料も低税率国の子会社に集めれば税負担を抑えられる。国際税務に詳しい村田守弘税理士は「日本企業は納税意識が強いが、ルールを守った上で税金をコストとして考える視点も必要だ」と指摘する。

先進国で最低水準の英国、さらに法人税下げへ

 主要8カ国の法人税率を比べると、米国が40%台で最も高い。4番目の日本は法人税率を20%台まで引き下げる目標を掲げるが、主要先進国で最低水準にある英国は、20年に法人税を18%まで引き下げる方針を打ち出している。税率を一段と引き下げることで外国企業の投資を促そうとしている。

法人税率、日本は30%超→20%台めざすが…

(出所)財務省

海外で稼ぐ日本企業 納税額「国内超え」も

 国内よりも海外で稼ぐようになった日本企業の中には、自然体で海外での納税額が国内を超えているところもある。三菱商事は13年度までの7年間で1兆6000億円以上を全世界で納税した。そのうち60%を海外での納税が占める。年度ごとに見ても、株式売却益が多かった13年度以外は海外の納税額が国内を上回った。

三菱商事の納税額、7年間で海外6割

取材・制作
池田将 鎌田健一郎

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