米利上げ、どう進む 過去の局面と比較
米連邦準備理事会(FRB)は12月16日、9年半ぶりとなる政策金利の引き上げを決めた。リーマン・ショック後の2008年12月に導入したゼロ金利政策を解除し、フェデラルファンド金利(FF金利)の誘導目標は0~0.25%から0.25〜0.50%へと〝離陸〟を果たした。3次にわたる量的金融緩和(QE1~3)にまで踏み込んだ危機対応の局面は終わり、金利正常化に向けた第一歩を踏み出した。金融市場の注目点は今後の利上げペースに移る。過去の利上げ局面を振り返りながら、今後の行方を探る。
FRBは金融政策を通じ「雇用の最大化」と「物価の安定」を実現するのが使命だ。FF金利とは、民間銀行が中央銀行であるFRBに預ける資金を確保するため、銀行間で短期の資金を貸し借りする際に適用される金利のこと。FRBがこの金利を上げ下げすることで、預金や住宅ローン、企業の借り入れなど様々な金利に影響を与える。
これまで7年間もゼロ金利状態だったのは、個人や企業の借入コストを抑え、金融危機後の経済を支えるためだ。失業率は危機後に一時10%にまで悪化したが、15年11月には5%と危機前の水準を回復。雇用面からはゼロ金利政策を解除する環境が整っていた。
過去の利上げと比べた経済回復度合いは
FRBが利上げに踏み出したのは、経済情勢が金融危機後の状況から回復したと判断したためだ。ただ過去の利上げ開始時点と指標を比較してみると、ダウ工業株30種平均や新車販売台数はいまの水準が高い半面、経済成長率や住宅着工件数は低く、経済の強さには課題も残る。
今回の利上げ、ペース・天井は抑えめ
利上げの第一歩を踏み出したFRBだが、市場の関心は今後の利上げの進め方にある。FOMCメンバーが示した中心予想によると2016年末には1.375%、17年末には2.375%、18年末には3.250%と想定されている。1回の利上げ幅が0.25%であれば、16 年の利上げ回数は4回となる。過去3回の利上げ局面と比較しても、最も緩やかなペースで進む見通しだ。
また過去3回は利上げ完了後のFF金利はいずれも5%超の水準に達したが、今回FOMCメンバーが示した長期予想は3.5%。米経済の潜在成長率が低下するなか、利上げの天井も低い。中国をはじめとする新興国経済の減速が深刻化し、米経済に波及すれば利上げペースが想定以上に遅れる可能性もある。
取材・制作牛込俊介、清水明
データ出典米商務省、米労働省