学校で教えて欲しかったお金の話

人生100年の計 費用編

いつの間にか世は「人生100年時代」。1世紀もの長い間には社会は大きく動き、不況や倒産といった事態にも備える必要があります。変わる潮流に合わせて自らの「稼ぐ力」を組み立てる必要があります。自分がいくつまでどんな形で働くかはもちろん、パートナーやさらには一緒に「働いてくれる」お金まで――。味方は多ければ多いほど道のりは楽になる、これが100年時代の鉄則です。

TOPIC 1

100歳まで生きるって
ホント?

世界有数の長寿国とはいえ日本人の平均寿命は男女とも80歳代。なぜプラス20年の「人生100年」に備えねばならないのでしょう。疑問を解くカギが「50%生存確率」「25%生存確率」の考え方です。同い年の「2人に1人」もしくは「4人に1人」が生きているのはかなりの高確率。そこまで長めに見積もる必要があるわけです。さてあなたはいくつまで生きそうでしょうか?

あなたは何歳まで生きる?
年生まれ

平均寿命
0

2人1人
0

4人1人
0

未来の「平均寿命」は今より長くなります。その年代の半数より多い約6割の人が到達します。半分、つまり2人に1人が生きているのが「50%生存確率」の年齢。「25%生存確率」で見た年齢には同い年の4人に1人が到達する計算です。

出所:長浜バイオ大学の永田宏教授が「令和2年簡易生命表」を基に作成(平均寿命の伸長が高いケースを採用)

どうでしたか?1995年生まれの女性なら同級生の4人に1人が112歳過ぎまで生きる――。そう考えると思ったより「長っ」と感じませんか。よく聞く日本人全体の平均寿命は死亡率が高い0歳児から含むデータのため、成人の「余命」よりも短くなります。医療や生活環境の進歩とともに前に進む長命化の「歩くエスカレーター」に乗って私たちは「思ったより長く生きてしまう」可能性があります。この認識を出発点に何歳までどんな形で働くか、どのように老後に備えるか、を考える必要があります。

TOPIC 2

どう稼ぐ?
変わる働き方

妻と子どもを養い1つの会社を勤め上げて定年を迎え、60歳代でリタイア生活に入る――。これまでの主流は人生100年に適したモデルとはいえません。会社自体、長期間存続するか不透明な時代。様々な働き方のピースを組み合わせる必要があります。働き方を巡る時代の潮流と現時点の姿を押さえておきましょう。

専業主婦世帯と共働き世帯の推移
※ 専業主婦世帯は男性の雇用者と無職の女性で構成する世帯
出所:内閣府

専業主婦と共働きの世帯数は1997年を境に完全に逆転。その差は現在では2倍以上に広がりました。若い女性の間で根強いとされる専業主婦願望ですが、一家に一本の「大黒柱」は時代の実情に合いません。特に将来の年金まで見渡すと生涯収入の差は広がる一方。出産・育児との兼ね合いはもちろんですが、男性も女性も100年の長さを見据えたキャリア形成を考えましょう。

正社員と非正社員の賃金格差
  • 正社員月額
  • 非正社員月額
出所:厚労省「平成30年賃金構造基本統計調査」

かつて1割台だった非正規で働く人の割合は足元4割程度まで上昇しています。パートやアルバイト、非正規の形で働くのは男性の4人に1人、女性の半分強です。4月から「同一労働同一賃金」のルール適用が始まり非正規の待遇改善を目指しますが、足元では年収でざっくり約300万円、生涯賃金では1億円近い収入格差があるのが現状です。

TOPIC 3

時間は味方
「72の法則」が意味するもの

自分の働き方同様、人生100年時代に欠かせないのが「お金に働いてもらう」発想です。まずは「余ったらためる」から意識を転換。時間を味方に付けて、ゼロ金利の預貯金だけでなく投資も組み合わせて「複利」の力を活用しましょう。

政策金利はバブル崩壊後の1990年代に急落した
出所:日本銀行、1998年までは基準割引率(公定歩合)、1999年以降は無担保コール翌日物金利

資産運用で得た収益を元本に上乗せし、新たな元本として運用すれば、より大きな収益を見込みやすくなります。こうして運用を続けていく仕組みこそ、収益が収益を生む「複利」です。アインシュタインは複利を「人類最大の発明」と称賛しました。複利パワーがよく分かるのが「72の法則」です。「72」という数字を金利(収益率)で割った値が、資産が2倍になるおよその期間のメドになります。

72の法則で算出
資産が2倍になるのは何年後?
72の法則で計算した資産が2倍になる期間
(注)日銀の政策金利を「72の法則」に当てはめて算出した資産倍増年数の大まかなメド

超低金利が長期化した日本。今の都市銀行の定期預金金利、年0.01%を72の法則に当てはめると資産が2倍になるのにかかる年数はおよそ7200年……。計算するだけむなしいですが、昔は違いました。今の20代の親世代、祖父母世代には金利が高く預貯金だけで資産形成できる時代がありました。3つの期間で見てみましょう。

1
狂乱物価~バブル景気。貯蓄は10年未満で倍増も
(1970~1989年)
狂乱物価~バブル景気。貯蓄は10年未満で倍増も(1970~1989年)
(注)日銀の政策金利を「72の法則」に当てはめて算出した資産倍増年数の大まかなメド

列島改造ブームが招いた狂乱物価の時代。「元祖」トイレットペーパー買い占めが起きた1973年の政策金利は9%。単純に法則を当てはめれば、預貯金だけで8年で資産が倍増する数字です。でもモノの値段も倍なら意味がありません。資産形成には実質価値の観点が欠かせません。80年代後半は個人の間でも株や土地への「投機」が広がり、日銀は金利引き締めにカジを切りました。

2
バブル崩壊。預貯金だけの資産形成は困難に
(1990~1998年)
バブル崩壊。預貯金だけの資産形成は困難に(1990~1998年)
(注)日銀の政策金利を「72の法則」に当てはめて算出した資産倍増年数の大まかなメド

平成に入った日本がまず経験したのは「失われた20年」でした。株価は3分の1近くに沈み、98年には大手銀行が破綻する金融危機を迎えます。もはや一生貯金しても元手は倍増しないのはもちろん、元本の安全神話も揺らいだ時代でした。

3
超低金利時代。預貯金の資産倍増は7000年先
(1999~2020年)
超低金利時代。預貯金の資産倍増は7000年先(1999~2020年)
(注)日銀の政策金利を「72の法則」に当てはめて算出した資産倍増年数の大まかなメド

99年には日銀がゼロ金利政策を導入し、以後今に至るまで20年以上日本では「金利のない世界」が続いています。00年ごろのITバブルやリーマン・ショック前の06~07年ごろにいったん金利が動いた時期がありましたが、資産倍増期間は1000年単位が100年単位になった程度。むなしいことに変わりはありません。

毎月1万円の積み立て投資を続けると・・・
  • 収益
  • 元本

0万円

0万円

0万円

40年後の積立額

0万円

収益率
%

今や72の法則は預貯金の金利ではなく、投資のリターンを当てはめて考える時代です。運用開始が早ければ早いほど、複利効果の恩恵は大きくなります。資産分散型の長期投資は市場変動の影響を緩和でき、積み立て投資を組み合わせれば安全度は高まります。日経平均株価はバブル時の1989年からみて一時はおよそ8割安まで下落しましたが、毎年末に定額の積み立て投資をしていたと仮定すると、30年後に株価水準自体は半分程度でも含み益を持つ結果になりました。もちろん、預貯金と違い損失発生の可能性がある点は注意が必要です。