外国人依存度 データの現場③

石川県のカニ・エビ漁、インドネシア実習生が戦力

外国人観光客に人気のズワイガニやスルメイカ。こうした海産物の水揚げを支えつつあるのが、北陸で働く外国人だ。政府の統計によると、石川県では2015年に131人の外国人が漁業で働いており、18人に1人の割合に達している。産業全体でも62人に1人が外国人(18年)で、その割合は09年に比べ2.3倍に増えており、外国人が貴重な戦力になっている。

石川県の外国人依存度の伸び率

「困ったことがあってもみんながすぐ教えてくれるので働きやすい」

インドネシア出身の外国人実習生、インドラ・アブドゥル・ラーマンさん(29)は金沢港を拠点にする船主に師事。日本人漁師と共に船に乗り、沖合30~40キロメートルに出てカニやエビを底引き網で捕る仕事を2年以上続けている。

漁がある日は夜に港を出て翌日の同じ時間に帰ってくるハードな生活。休憩は船上でとる。重労働だが、「日本の進んだ漁法を学んで、国に戻って漁業に携わりたい」と目を輝かす。

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インドネシア出身のラーマンさんは「日本の進んだ漁法を学びたい」と話す(金沢市)

石川県漁業協同組合は事務所が入っていた建物を、外国人実習生が宿泊できる寮に改装した。現在はインドネシア人26人が暮らしている。台所や洗濯機、シャワー室のほか、インドネシアで信仰する人が多いイスラム教の礼拝室も備える。

漁師の高齢化が進み、担い手不足は深刻だ。金沢地区漁業研修生受入船主協議会の平野雅範会長は「日本人の若者は漁業体験には参加しても、仕事に就くまでには至らないケースが多い。真面目に働く外国人実習生は貴重な存在だ」と打ち明ける。

海がしけたり、市場が休みだったりする日は漁に出ない。月の半分は休みになることもあり、ラーマンさんは「繁華街のディスカウントストアなどで買い物するのが楽しみ」と日本での生活も楽しんでいる様子だ。

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金沢港にある寮にはインドネシア人26人が共同生活を送る(金沢市)

石川県の業種別外国人依存度ランキング

順位業種2015年総数上位3カ国
1 漁業 1/18 131 インドネシア: 130人,フィリピン: 1人
2 製造 1/45 2481 中国: 1218人,ベトナム: 463人,ブラジル: 337人
3 教育、学習支援 1/67 396 アメリカ: 101人,中国: 50人,イギリス: 33人
4 宿泊、飲食サービス 1/74 456 中国: 190人,韓国・朝鮮: 115人,フィリピン: 62人
5 鉱業、採石業、砂利採取 1/84 2 韓国・朝鮮: 1人,中国: 1人

製造業でも外国人の姿が目立ち始めた。石川県内で製造業で働く外国人は2481人(15年)で、45人に1人の割合だ。

バイク用チェーン製造の大同工業で働くベトナム人のグエン・ヴァン・ミンさん(25)は両親と兄弟2人を残し17年4月に来日。毎日工場に勤務して組み立てやプレス作業など日本人と同じ工程に携わる。今は家族の生活のためにお金を稼いでいるが、「いつかは身につけたスキルを生かして起業したい」と夢見ている。

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熱心に仕事に取り組むベトナム人実習生のミンさんに従業員からの信頼も厚い(石川県加賀市)

二輪事業部の裏谷昭一工場長は「細かなことにも気を配り、日本人と同様にきちんとこなしている」と評価する。ただ日本語はまだたどたどしい。ミンさんは「休憩時間に日本人の仲間と日本のマンガの話をして勉強している」とほほ笑む。

大同工業では17年春から実習生の受け入れを始め、現在ベトナム人約50人が働いている。日本人と生活習慣が異なるため、周辺への配慮も欠かせない。18年秋に完成した寮では、生活で出たゴミは自治体を通さず自前で処理しているという。

同社人事課の角谷直樹課長は「日本語講座など日本人とベトナム人が交流できる取り組みに自治体はもっと力を入れてほしい」と注文をつける。

石川以外でも北陸では外国人依存度は高まっている。産業全体で見ると、富山県が56人に1人(17年)、福井県が53人に1人(同)が外国人で、いずれも09年に比べて約2倍に達している。

取材・制作
鈴木洋介、久能弘嗣

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