外国人依存度 データの現場⑤

新潟で働く外国人、温泉街や除雪機製造の助っ人に

かつて小説「雪国」の舞台となった新潟県湯沢町。現在は東京から新幹線で1時間半の便利さから、訪日外国人客の人気が高まっている。人手不足もあいまって、地元の温泉旅館では外国人の活用が広がる。政府の統計によると、2015年に新潟県内の宿泊・飲食サービス業で働く外国人は803人で、76人に1人の割合だ。業種別では最も外国人依存度が高い。

新潟県の外国人依存度伸び率

今年2月、川端康成も滞在した老舗温泉旅館「高半」に中国人留学生のコウ・ムトウさん(23)が3カ月のインターンシップ(就業体験)に訪れた。宿泊客の朝食が終わると、手際よく食器を片付けて、洗い場で一つ一つ丁寧に洗っていた。

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調理場で食器を片付ける中国人留学生のコウ・ムトウさん(新潟県湯沢町)

インターンに参加したのは中国の教育系大学で専攻する日本語を「実際に試してみたかったから」(コウさん)。今年の湯沢町は暖冬による少雪だが、「(出身地の)中国南部と全然景色が違う。休みの日はスキーにチャレンジしたい」と笑顔で語る。

高半は12年ごろから、スキー客が訪れる繁忙期に限って中国や韓国からの留学生を受け入れ始めた。近年は雪遊びを体験しようと東南アジアや台湾からの旅行者が急増。宿泊客全体の半分を外国人が占める。

若女将の高橋麻里子さんは「日本人では料理の説明などで微妙なニュアンスが伝わらない。母国語を話せる従業員がいれば客も安心する」と話す。宿泊業は人手不足が特に深刻な業種の一つ。日本人の採用が難しくなっているだけに、外国人は貴重な戦力だ。

新潟県の業種別外国人依存度ランキング

順位業種2015年総数上位3カ国
1 宿泊、飲食サービス 1/76 803 中国: 235人,フィリピン: 235人,韓国・朝鮮: 196人
2 製造 1/87 2384 中国: 1194人,フィリピン: 598人,ベトナム: 175人
3 教育、学習支援 1/103 467 アメリカ: 147人,韓国・朝鮮: 50人,中国: 50人
4 農業、林業 1/155 414 中国: 190人,フィリピン: 127人,ベトナム: 57人
5 生活関連サービス、娯楽 1/205 206 韓国・朝鮮: 105人,フィリピン: 31人,中国: 29人

新潟県では製造業の人材確保も課題となっている。県内の製造業で働く外国人は2384人(15年)で、87人に1人の割合だ。

インド人のラジクマール・クムクチャムさん(27)は、17年に除雪機メーカーのフジイコーポレーション(燕市)に正社員として入社した。これまで製品の組み立てや塗装、メンテナンスといった複数の作業を経験。将来はこれまで培った商品知識と語学を生かして「海外向けの営業に携わりたい」という。

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除雪機の部品の欠損などを確かめるラジクマール・クムクチャムさん(新潟県燕市)

ラジクマールさんはインドや新潟県内の大学でIT(情報技術)や経済学を学び「技術・人文知識・国際業務」の査証(ビザ)を取得。毎月、給料の一部をインドの両親に送金しているという。人事担当の清水和夫さんは「日本語能力はまだまだだが、きっと営業や商品開発など日本人と同じぐらいの戦力になってくれる」と期待する。

同社は1月、シンガポールの就職関連イベントに初めて参加した。日本での採用活動では学生から応募の履歴書がなかなか集まらなかったが、今年は昨年の30倍以上も届いた。日本企業への人気は根強く、「海外に目を向けたら優秀な人材はたくさんいる」。清水さんは驚きを隠さない。

だが、外国人材の活用には課題も残る。新潟市内のトマト農家ではベトナム人の技能実習生が失踪し、後になって賃金が高い都内でアルバイトをしていたことが発覚した。実習生の東京志向が強まれば、外国人の人材確保も地方が不利になる恐れがある。

農家の男性は「待遇改善の努力も大事だが、自治体は新潟を選んでもらえるよう魅力を発信してほしい」と訴える。

取材・制作
井上航介、久能弘嗣

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