都構想を解説

「大阪都」
1万7167票差で否決
データで見る
住民投票
OSAKA-METROPOLIS-PLAN

「大阪都」
1万7167票差で否決
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住民投票
OSAKA-METROPOLIS-PLAN

「大阪都構想」を巡る住民投票が11月1日に投開票され、反対多数で否決しました。有効投票136万票のうち反対票が69万2996票で、賛成票を1万7167票上回りました。2015年と比べると、若い世代の人口が多い北区や西区、中央区で賛成票が伸び悩み、港区や阿倍野区で反対票が増えました。住民投票の結果を分析します。

大阪都構想とは
1010年11月1日住民投票で可決されると4つの特別区に、否決されると大阪市が残る 1010年11月1日住民投票で可決されると4つの特別区に、否決されると大阪市が残る

大阪都構想は大阪市を廃止し、4つの特別区を作る構想でした。特別区は選挙で決めた区長と区議会を持ち、他の市町村と同じく税の徴収や条例の制定ができます。現在の24区は行政区で、行政事務の円滑な処理が目的です。

24区で解剖
大阪の民意

大阪世論は2回目の住民投票でも僅差で「反対」に傾きました。賛否を24区ごとに分析すると、大阪都構想と向き合う姿勢は2015年から微妙な変化が見て取れます。

反対多数
その差1.2ポイント

住民投票の得票率

2015

  • 賛成
  • 反対
賛成は49.6%、反対は50.4% 賛成は49.6%、反対は50.4%

2020

Coming soon Coming soon

2020年の住民投票は再び反対多数で決着しました。賛成票と反対票の差はわずか1万7167票、得票率は1.2ポイントの僅差でした。2015年は1万741票、0.8ポイント差での反対多数でした。投票終了後の開票速報では、賛成票と反対票が競り合いながら上積みされていく様子が中継されて注目を集めました。

住民投票の否決を受け、都構想を推進してきた大阪市の松井一郎市長は任期満了後の政界引退を表明。大阪府の吉村洋文知事は3度目の住民投票の可能性を否定しました。「Yes」か、それとも「No」か。二者択一で大阪の針路を決める住民投票は、地域の代表者を決めるいつもの選挙では忘れがちな「1票の重み」を有権者に実感させました。

一方、今回の住民投票は2015年に比べて有権者が約10万人増えましたが、反対票の69万2996票は、2015年の賛成票(69万4844票)を下回っています。

反対多数は14区
縮む賛成票

都構想の特別区で見る
投票結果
  • 賛成
  • 反対
淀川区。東淀川区は2015年・賛成51.2%:反対48.8%。淀川区は2015年・賛成55.5%:反対44.5%。西淀川区は2015年・賛成45.5%:反対54.5%。此花区は2015年・賛成48.3%:反対51.7%。港区は2015年・賛成47.8%:反対52.2%。 淀川区。東淀川区は2015年・賛成51.2%:反対48.8%。淀川区は2015年・賛成55.5%:反対44.5%。西淀川区は2015年・賛成45.5%:反対54.5%。此花区は2015年・賛成48.3%:反対51.7%。港区は2015年・賛成47.8%:反対52.2%。

2015年に続いて、西淀川区、此花区、港区が反対多数でした。港区の反対率は57.0%と、24区で最も高くなりました。

  • 賛成
  • 反対
北区。福島区は2015年・賛成55.6%:反対44.4%。北区は2015年・賛成59.0%:反対41.0%。都島区は2015年・賛成53.0%:反対47.0%。旭区は2015年・賛成45.2%:反対54.8%。城東区は2015年・賛成50.5%:反対49.5%。鶴見区は2015年・賛成50.1%:反対49.9%。東成区は2015年・賛成50.0%:反対50.0%。 北区。福島区は2015年・賛成55.6%:反対44.4%。北区は2015年・賛成59.0%:反対41.0%。都島区は2015年・賛成53.0%:反対47.0%。旭区は2015年・賛成45.2%:反対54.8%。城東区は2015年・賛成50.5%:反対49.5%。鶴見区は2015年・賛成50.1%:反対49.9%。東成区は2015年・賛成50.0%:反対50.0%。

賛成多数区が目立ちます。ただ、北区や都島区では2015年に比べて賛成率が低下。東成区は唯一、賛否の逆転現象が起きました。

  • 賛成
  • 反対
中央区。中央区は2015年・賛成54.1%:反対45.9%。西区は2015年・賛成57.7%:反対42.3%。浪速区は2015年・賛成52.7%:反対47.3%。大正区は2015年・賛成44.0%:反対56.0%。西成区は2015年・賛成46.8%:反対53.2%。住之江区は2015年・賛成47.4%:反対52.6%。住吉区は2015年・賛成45.7%:反対54.3%。 中央区。中央区は2015年・賛成54.1%:反対45.9%。西区は2015年・賛成57.7%:反対42.3%。浪速区は2015年・賛成52.7%:反対47.3%。大正区は2015年・賛成44.0%:反対56.0%。西成区は2015年・賛成46.8%:反対53.2%。住之江区は2015年・賛成47.4%:反対52.6%。住吉区は2015年・賛成45.7%:反対54.3%。

2015年は最も賛成率が低かった大正区や西成区、住之江区で賛成率が上昇しました。一方、中央区は賛成率の低下が目立ちます。

  • 賛成
  • 反対
天王寺区。天王寺区は2015年・賛成46.8%:反対53.2%。生野区は2015年・賛成46.5%:反対53.5%。阿倍野区は2015年・賛成48.4%:反対51.6%。東住吉区は2015年・賛成47.7%:反対52.3%。平野区は2015年・賛成44.7%:反対55.3%。 天王寺区。天王寺区は2015年・賛成46.8%:反対53.2%。生野区は2015年・賛成46.5%:反対53.5%。阿倍野区は2015年・賛成48.4%:反対51.6%。東住吉区は2015年・賛成47.7%:反対52.3%。平野区は2015年・賛成44.7%:反対55.3%。

2015年に続いて5区すべてで反対多数でした。24区で人口最多の平野区、反対率が大きく上昇した阿倍野区があり、都構想の否決に影響しました。

今回の住民投票で最も反対率が高かったのは港区でした。反対率は57.0%と、2015年から4.8ポイント上昇しました。阿倍野区でも反対率が3ポイント余り上昇しています。人口の多い住吉区、平野区の反対率が高いのも、賛成派には痛手でした。

2015年と比べると、全24区のうち15区で賛成率が低下しました。今回の住民投票で賛成多数区は10区ありましたが、うち鶴見区を除く9区で2015年の賛成率を下回っています。また、2015年は賛成多数だった東成区では反対派が逆転しました。

一方、西成区、大正区、平野区など2015年に比べて賛成率が上昇したケースもあります。

投票率は低下
70%超は
阿倍野区のみ

24区別の投票率
  • 上位5位
  • 下位5位
  • 全体の平均

2015

投票率の上位5位は阿倍野、天王寺、城東、住之江、鶴見。投票率の下位5位は浪速、西成、東淀川、中央、淀川。 投票率の上位5位は阿倍野、天王寺、城東、住之江、鶴見。投票率の下位5位は浪速、西成、東淀川、中央、淀川。

2020

Coming Soon Coming Soon

住民投票の投票率は62.3%で、2015年を4.5ポイント下回りました。50%を下回る場合もある大阪市議会選挙などに比べれば高いものの、有権者の3分の1余りにあたる約83万人が投票を棄権しています。

24区別に見ると、70%超えは阿倍野区のみ。最低は2015年と同じく浪速区で、投票率は48.0%でした。下位5区のうち西成区を除く4区が賛成多数区になっています。2015年の住民投票では20代や30代の投票率は低く、若い世代が多い浪速区や中央区は投票率が低くなる傾向がありました。

若者票は
どこへ向かった?

今回の住民投票でも反対派が勝利しました。2015年の住民投票と比べると、大阪維新の会が強い北区や西区でも賛成票を固め切れなかった様子がうかがえます。

都構想の賛否
大阪を分断

東成区で
賛否逆転

2015

北側で賛成が多く、南側で反対が多い大阪地図。 北側で賛成が多く、南側で反対が多い大阪地図。

2020

Coming Soon Coming Soon

24区を賛成多数と反対多数とに色分けすると、ほぼ南北の2色に分かれます。ビジネス街や繁華街が広がる北側で賛成が多い情勢は、2015年の住民投票とほぼ重なりました。緑色と赤色が入れ替わったのは東成区だけでした。

賛否の傾向を生活水準の格差に求める「大阪南北問題」の見方もありますが、年間収入が1000万円を超える高収入世帯が比較的多い阿倍野区や天王寺区でも反対派が大勢を占めています。

賛成票
固めきれない
維新の会

人口構成と投票結果の
関連は薄まった

2015

20~39歳の比率と賛成率を表す表 20~39歳の比率と賛成率を表す表

2020

Coming Soon Coming Soon

2015年の住民投票では、投票権を持つ20歳以上の人口に占める20~39歳の割合が高い区ほど、賛成率は高くなりました。今回の住民投票でも18~39歳の若い世代の人口と賛成率には緩やかな相関が見られるものの、連動性は弱まっています。

若い世代が多い北区や西区は、2019年の大阪市長選や統一地方選でも松井一郎氏など大阪維新の会候補の得票率が高く、維新の会の支持基盤になっている地域です。今回の住民投票では、こうした区での2015年に比べた賛成率の低下傾向が見られました。投票後の出口調査でも10~20代で賛否が拮抗している様子が伝えられました。

2015年から5年。大阪府の完全失業率はほぼ一貫して低下し、生活保護人員も減少傾向にありました。若い世代に現状維持を求める層が増えていた可能性もあります。

取材・記事
新田 祐司、佐野 敦子
デザイン
渡辺 健太郎
マークアップ
森田 優里

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